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失敗しない仮想化導入予算の策定方法

2010年07月10日 | 日記
 もはや仮想化からは誰も逃れられなくなった。データセンターの構成要素は、ほぼすべてが仮想化できる。

 わたしはウェストミンスター大学で仮想化を導入するプロジェクトを率いた経験を通じて、この技術から最大の投資効果を得るためには、ハードウェアとソフトウェアの要件を含め、仮想化パズルの各ピースを戦略的に組み合わせる必要があることを学んだ。

 各コンポーネントの要件を検討すれば、最初の段階で仮想化プロジェクトの予算を正確に策定し、後から費用の掛かる修正を避けられる。わたしがサーバ仮想化戦略を個別要素に分解し、各要素の予算を決定した方法を以下に紹介する。

●サーバ

 仮想化を導入したからといって、データセンターでサーバを使用する必要がなくなるわけではないが、ITインフラの運用に必要なハードウェアの量を削減するのに、仮想化技術は大きな効果をもたらす。一方で、サーバ仮想化プロジェクトが、導入済みのサーバ構成に影響を及ぼすことは確かだ。

 「VMware ESX」や「Hyper-V」などのハイパーバイザーは、標準的なx86サーバで単一のワークロードを実行するのではなく、複数のワークロードを同時に実行する。このため、仮想化で使うサーバは、従来のサーバよりもはるかに巨大な規模となる。VMware ESXを動かすマシンがデュアルコアあるいはクアッドコアプロセッサの強力な処理能力に加え、128Gバイトのメモリを搭載するという構成は珍しいことではないのだ。

 仮想化戦略の一環で、わたしの会社では従来型のサーバから米Dellのブレードサーバ環境に移行した。各仮想ホストには、2個のクアッドコアXeonで動作し、ミラードブートディスクと32Gバイトのメモリを搭載したサーバを使用した。もしプロジェクトを一からやり直すとすれば、各仮想ホストに最低でも48Gバイトあるいは64Gバイトのメモリを搭載したサーバ構成で予算を組むだろう。

 一般に仮想ホストのストレージは高いスペックを要求されない。主要なストレージはSAN(Storage Area Network)に置かれる。2台のHDDを用いたシンプルなRAID 1(ミラーリング)構成で、ローカルディスクにはシステムを起動するのに必要な容量しかないというのも極めて一般的だ。仮想ホストがストレージを一切備えず、システムはSANから起動するというケースもある。

結論

 仮想ホストではメモリが制約要因になることが多いため、メモリをけちってはならない。サーバを購入する時点で、できるだけ多くのメモリを追加することが大切だ。

●ストレージ

 サーバ仮想化が登場する前は、アプリケーションごとにストレージ容量とパフォーマンス(IOPS:I/O per Secondなど)に対する要件が存在していた。しかし仮想化では、アプリケーションを収容するサーバが仮想化層を通じてハードウェアから抽象化される。このため、一見分かりにくい追加的なIOPSニーズが存在する。

 例えば、「Exchange 2010 Mailbox Server Role Requirements Calculator」を利用して、2000 IOPSのストレージパフォーマンスが必要と判明したとする。Exchange Serverを仮想化する場合にも、この2000 IOPSは必要となるが、それだけでなく、OSそのものからどういったIOPSオーバーヘッドが生じるかを判断するためにベースラインテストをする必要がある。

 わたしの会社の小規模なIT環境では、12台のSATAディスクと12台のSASディスクで構成されるEMC AX4 iSCSI SANを採用した。その後、ディスクアレイを拡張し、12台のSASディスク(15,000rpm)を追加した。ディスク容量が足りなくなったからではなく、ディスクパフォーマンスが不十分だったからだ。ディスクパフォーマンスが自社の環境で最大の課題であることが判明したため、必要に応じてこの問題に対処できる予算を維持している。

結論

 ストレージ容量のニーズに加え、パフォーマンス(IOPS)要求も考慮に入れること。どちらも仮想化プロジェクトの成否を左右する重要な要件だ。

●ハイパーバイザー

 VMware ESX、Hyper-V、米Parallelsの「Virtuozzo」、米Citrix Systemsの「XenServer」など、ハイパーバイザーには多くの選択肢が存在する。どの製品を選ぶにせよ、ベースとなる製品のライセンス方式およびフル機能セットに含まれるものを把握する必要がある。

 例えば、米VMwareの「VMware vSphere」は、プロセッサソケット単位でライセンスされる。この製品の基本エディションのソケットライセンスには、1ソケット当たり最大6コアのサポートが含まれる。これに対し、「Enterprise Plus」エディションでは、1ソケット当たり最大12個のコアまで認められている。同様に、各社の製品セットのローエンド版では、重要な新機能が一部省略されている。ハイパーバイザーソフトウェアの予算を確定する前に、各エディションに含まれる機能と含まれない機能を正確に把握しておくことが大切だ。

 また、仮想化プロジェクトに必要なソフトウェアサポート契約を結ぶことをお勧めする。仮想化はまさに大規模な統合であり、“すべての卵を1つのバスケットに入れる”方式のインフラに近づくことになるため、基盤となるソフトウェアの最新動向を常に把握しておくことが重要だ。

結論

 ソケット単位のライセンス方式が一般的になりつつあるが、コアのカウント方法はベンダーによって異なり、同じベンダーでも製品によって異なる場合がある。最終的に決定する前に、コアのカウント方法と製品の機能セットを十分に理解しておくことだ。また、継続中のソフトウェア保守契約を予算に含めることも検討すべきだ。これは長期的に経費の節減につながる可能性がある。

●OSライセンス

 どのハイパーバイザーソリューションを選ぶにせよ、基盤となる各仮想マシン(VM)インスタンスは、スタンドアロンサーバと同様にライセンス契約をする必要がある。言い換えれば、サーバライセンス、クライアントアクセスライセンス、そして(場合によっては)ソフトウェアアシュアランスが必要になるということだ。

 しかし米マイクロソフトでは、「Windows Server Datacenter」(以下、Datacenter)エディションで寛大なライセンスを提供することにより、企業が大規模な仮想化プロジェクトに取り組むハードルを低くしている。ハイパーバイザーの種類にかかわらず、Datacenterライセンスを購入すれば、Datacenterの主ライセンスが設定されたホスト上にStandard、EnterpriseあるいはDatacenterベースのVMを幾つでもインストールできる。Datacenterソフトウェアを実際に使用する必要はなく、そのライセンスを仮想ホストに対して使用した記録を残しておくだけでよい。予算という視点で見れば、特にVMの密度を高める場合、このライセンス方式は仮想化戦略に大きなプラスとなる可能性がある。

結論

 無制限の仮想化を認めたDatacenterのようにライセンスを大幅に簡素化する製品を探せば、プロジェクトが予算オーバーになるのを防げる。

●ハイパーバイザーモニタリングソフトウェア

 仮想ホストの最適化は、仮想化投資から最大の効果を引き出すための素晴らしい手段だ。つまり、各VMに正確な量のコンピューティングリソースを割り当てることによって、IOPSを最大限に活用し、メモリを無駄なく利用できる。

 この取り組みに役立つ製品を提供している企業も何社か存在する。こういったソフトウェアを最初に購入しておけば、追加コストの発生を避けられる。

結論

 モニタリングソフトウェアを省略してはならない。当初の予算は増えるが、プロジェクトライフサイクル全体で見れば、このわずかな追加コストには十分な価値がある。

 仮想化戦略のプランニングの時点で、予算を必要以上に切り詰めないことが大切だ。最初の段階で予算節約のために多数の機能を省略すると、プロジェクト全体を通じて、不足を補うためにさらに多くの投資(時間、資金、リソース)が必要になる恐れがある。

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