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ミッドウェー海戦に対する現在までの評論には、考えてみれば妙なものがある。南雲艦隊は、空母発艦のヘルダイバー艦爆の攻撃の何時間も前に、B-26爆撃機の他に、陸上から発進したTBF艦上雷撃機の攻撃を受けている。情報がないなら、これは空母からの攻撃の可能性が大であると解すべきである。いくらミッドウェー島付近には空母はいないと寝ぼけていた南雲艦隊も慌てなければ変である。この時点で、空母索敵に力を入れもせず、艦船攻撃兵装に切り替えていないのだから、空母に備えよと言う連合艦隊の命令などあったのだろうかと疑われる。
ミッドウェーの敗因は、兵装転換によるものではないと明瞭に立証した、左近允氏でさえ、艦上機の半数は連合艦隊司令部の指示に違反していた(ミッドウェー海戦P146)と指摘しているが本当だろうか。氏は兵装転換自体を命令違反とするのだが、元々半数を空母に備えよ、という命令があったのなら、各空母の艦上機の半数を艦船攻撃兵装にしておくということは後述のようにあり得ず、常に半数の空母を艦船攻撃の兵装にしておく、ということでしかありえないからである。
つまり南雲艦隊は、出撃時点から全空母の艦上機を陸上攻撃の兵装にしてあり、空母出現の際に全空母に艦船攻撃の兵装転換を命令したのである。もし連合艦隊司令部が、常に半数の艦上機を空母出撃に備えよと命令したのであれば、出撃前にその編成の確認をしていないと言うことは考えられないのである。確認していなければ、無能か作戦をなめきっていた、ということで軍事的には信じられない行為である。
具体的にはこうである。一隻の空母の半数の戦闘機、爆撃機、攻撃機の半数を艦船攻撃兵装で待機させたとする。戦闘機は艦船攻撃でも陸上攻撃でも同じであるが、残りはそうではない。だから半数の艦船攻撃部隊を、飛行甲板におき陸上攻撃部隊を格納庫に置けば、陸上攻撃はできない。逆にすれば、艦船攻撃はできない。後者の場合は、艦船攻撃に邪魔になる陸上攻撃部隊を発艦させてしまって、格納庫から艦船攻撃隊を上げていて発艦させていたら、五分や十分では攻撃態勢はできない。どう考えても、各空母毎に、半数を艦船攻撃兵装で待機させたら、即座に艦船攻撃に切り換える、ということは不可能である。