26年3月27日の産経新聞の正論で木村汎氏が「『異質のロシア』研究を再興せよ」と論じていた。ソ連崩壊後のロシアは、民主主義と市場経済を目指し、われわれと変わらぬ普通の国になるから、もはや真剣にロシアを研究する必要はないと言う世界的な風潮が続いた。しかしクリミア併合にみられるようにこの見解は間違っていたことが証明された、というのだ。
そもそも、民主主義と市場経済を目指し、われわれと変わらぬ普通の国、という概念が世界に共通してある、といのが幻想である。小生は、同じ民族がある国家の主力をなしている場合には、外見上別な政治経済体制をとろうと、民族が入れ替わらない限り国家に本質に急激な変化はないと考えている。
ましてクリミア併合ごときで、やはりロシアの本質は変わっていない、と驚く必要はない。戦前は世界中でそんなことは当たり前に行われていたのであるし、戦後もその残滓は大いにある。例えばハワイはアメリカ人を多数送り込まれ、独立宣言して女王を退位させたうえで、米国に「併合を求めた」ことになっている。民主主義と市場経済がある普通の国であるはずの米国が明治維新後に行ったことである。その後の米国の政治的変化といえば、黒人に公民権が与えられたことくらいで何も変わっていないのである。
ソ連に至っては、バルト三国に「お願いされて」の併合や、フィンランド領の強奪など枚挙にいとまがない。中共は戦後チベットやウイグルなどを侵略したが、改革開放で市場経済となったが対外侵略性に何の変わりもない。中共が市場経済を取り入れ、外国資本を入れれば徐々に民主化して侵略性も薄れると楽観したが何の変わりもないではないか。