毎日のできごとの反省

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書評・米軍が記録したガダルカナルの戦い

2013-08-10 15:39:54 | 大東亜戦争

平塚柾緒編著・草思社 

 主として米軍が撮影したガダルカナル島攻防戦の写真を中心に、戦闘経過や日本軍兵士の回想記で構成したものである。あとがきで述べられているように、日本軍の情報軽視、戦力の逐次投入や戦術の拙劣さが失敗の原因である、というのは事実であろう。

 しかし根本的な作戦の欠陥にはほとんど触れられていない。それは補給の問題である。米軍は何の障害もなく、兵員や多量の物資や武器弾薬を運んでいるのに、日本軍はわずかな物資や武器弾薬を運ぶのに駆逐艦や潜水艦と言った効率の悪い物で運ばざるを得なかった。この差の原因のほとんどは日本海軍の作戦の拙劣さにある。

 日本海軍は劣勢であったのではない。この時期に生起した海戦ではほとんどが日本海軍の方が艦隊は優勢であったのである。皮肉な事に、珍しく劣勢であったルンガ沖夜戦とコロンガンバラ島沖夜戦と言う小規模な艦隊の衝突では日本海軍が圧倒的に勝っている。日本海軍は優勢な勢力を有しながら、輸送船団の保護もできなかったのである。

 補給路が日本の方に不利だった訳でもない。米軍の補給はほとんどがハワイからである。日本側より近い訳ではない。例えば原爆を運んで撃沈された重巡インディアナポリスは、サンフランシスコから真珠湾に行き、そこからテニアン島に直行している。日本海軍の駆逐艦は機銃以外に対空能力はないから、航空攻撃に対して輸送船を護る能力はない。潜水艦に返り討ちにされる位だから、対潜能力もお寒い限りである。海軍は第一次大戦に参戦し、船団護衛が主任務であった。にもかかわらず、船団護衛という考え方は皆無に等しかった。

 駆逐艦を輸送任務に使ったのは、速力と運動性能が輸送船よりはるかに高かったからである。船団護衛はできなかったが、自ら荷物を積んで逃げ回ることはできないことはなかったのである。疑問なのは補給阻止に潜水艦を使った形跡がないことである。防空能力に隔絶した差があったから、米軍の輸送を航空攻撃で阻止できなかったにしても、潜水艦ならまだそれほどの差がなかったから不可能ではなかったのである。結局日本海軍には補給、という考え方がなかったのである。

 最終的に日本軍は三万の兵士を送り込んでいる。それで勝てなかったのは、兵力の逐次投入と言う拙劣さ以上に、補給が皆無に等しかったと言うことにあると考えざるを得ない。米軍とて、ガダルカナル攻防戦での戦死は6,842人であった。日本陸軍の戦没者は21,138人であった。日本軍の多くが餓死病死だったのだから、この最悪の条件下で日本軍は戦闘で圧倒的に負けていたのではない。もし米軍の補給を全力で阻止し、応分の補給ありせば、と考えるゆえんである。

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