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月姫リメイク(5)マーリオゥ/ラウレンティス同一人物問題・逆行運河したいロア
筆者-Townmemory 初稿-2023年6月24日
最初にロアのパンティオンについて語り、次にマーリオゥ/ラウレンティスの話になり、もっかいロアの話に戻ってきます。
総耶でロアは何をしたいのか、というのを、ラウレンティス問題を材料に詰めていきます。フランス事変の別案も提案する予定です。
順番にお読みいただくことを推奨します。
月姫リメイク(1)原理血戒と大規定・上
月姫リメイク(2)原理血戒と大規定・下
月姫リメイク(3)ロアの転生回数とヴローヴに与えた術式
月姫リメイク(4)ロアのイデア論・イデアブラッドって何よ
クリックすると筆者が喜びます
●やらかしちゃったロアさんの自白
『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』の青子ルートのラスボスはロアです。
このルートのロアはなかなか愉快な人で、聞かれもしないのに自分の計画についてべらべらしゃべり、「あれ、ひょっとして自分、やらかした?」と自己批判を始めます。すき。
私の解釈コミで意訳してみると、以下のような感じです。
・これは世界を滅ぼすたくらみなので、正義の味方蒼崎青子が来そうだと思ってた。
・ひょっとして蒼崎青子は未来から来たのか?
・だとしたら、これからやろうとする悪だくみは、未来において成功してるってことだ。
もっと縮めていうと、
「蒼崎青子が未来から来たのなら、この悪だくみは成功だ」
だったら、「蒼崎青子が未来から来たのなら成功となる悪だくみとは何か」と考えていけば、ロアの狙いがわかる可能性がある。
で、私は考えたのですが。
そんなに意外な方向性ではないのですが「この宇宙の(地球のかな?)時間を巻き戻して宇宙誕生の瞬間を見に行く」かなと思いました。
ロアのパンティオンが起動したら、宇宙の時間が巻き戻りはじめる。
時間が未来から過去へと流れるようになるので、未来の人間が過去に現れるようになる。
時間が巻き戻りはじめ、「これは一大事だ」と思った蒼崎青子が、パンティオンを襲撃しにくる。
その場合、いまここに現れた蒼崎青子は、「時間を巻き戻す悪だくみが成功した未来から来た」ことになる。
なるほど私の計画は成功したのか!
ところが蒼崎青子さんは謎の司祭「???」さんに雇われたただの壊し屋で、ロアをやっつけて工房を占拠するのが目的で、当然、現代の人なのです。未来からは来てません(少なくとも今回は)。
自分の悪だくみを自分の口で全部ばらしちゃったロアは、青子から「ああこれ、終末案件ね」と認知され(たぶん)、やっつけられちゃう。
そこまではOKとして、なんでまたロアは時間を巻き戻したいのか。
それを考えるまえに、ちょっとした必要があってマーリオゥとラウレンティスについて取り上げておきます。
●マーリオゥ/ラウレンティス同一人物なのか問題
マーリオゥはラウレンティスの実子なのか?
それともマーリオゥはラウレンティス本人なのか?
という問題があります。
ようするにマーリオゥとラウレンティスは同一人物なのかそうでないのか。
(というかなぜ同一人物説が出てきているのか)
前提となる情報を手早くまとめておきます。
・まずマーリオゥは外見12歳のわりに権力が強すぎる。
・ラウレンティス枢機卿は大勢の養子をとっている(作中では20人くらいとされる)。
・対外的にはマーリオゥはラウレンティスの養子の子、つまり孫だとされる。
・ラウレンティスの養子たちは、実は実子ではないかと噂される。
・マーリオゥ本人は、「自分はジジイの実子だ」とぶっちゃけている。
ここまではいいですね。
次に、シエルがらみの情報。
・マーリオゥの兄とシエルが、以前、仕事で一緒になったことがあった。
・シエルはマーリオゥの兄に尊敬の念を抱いた。
・マーリオゥいわく「ラウレンティスの一族はシエルに恩がある」。
・志貴は「マーリオゥとマーリオゥの兄は同一人物ではないか」と推測し、マーリオゥはこれを否定しなかった。
最後にロアがらみで。
・マーリオゥはラウレンティスのために、ロアから「不老不死の秘術」を入手しようとしている。
・ロアは不老不死の研究をしたことがあるが「失敗だった、これではまるきり退化だ」といって研究を捨ててしまった。
以上が条件でした。
ここから先が巷間よくいわれる(ネット上でよく語られている)推測。
「マーリオゥとその兄が同一人物」なら、マーリオゥは昔より若返っていることになる。
マーリオゥの年齢が見た目通りではなく、たくさんの経験や実績を持っているのなら、歳のわりに権力や能力が強すぎることが疑問ではなくなる。
ここで、「若返り」というキーワードが発生しました。
・ラウレンティスの一族は「若返り」に関する秘密をかかえていそうだ(推測)。
・ラウレンティスは不老不死の秘術を求めている(事実)。
このふたつを足し合わせたとき、
「ラウレンティスは何らかの事情で、ロアの不老不死の秘術を受けた」
「その結果、年老いるかわりにどんどん若返ってしまうようになった」
というアイデア(推測)が広まることになりました。
じゃあ、ラウレンティス本人だけでなく、養子もしくは実子であるマーリオゥまで若返っているのはどういうことかという話になる。
そこで、
「マーリオゥは実子でも養子でもなくラウレンティス本人である」
偽名を使って外部で活動しているのである……というアイデアが生じたのですね。
その一方で、まだ同一人物と断定するには早いよねという慎重な意見もあります。私も慎重な立場です。
直感的には「その中間あたりにちょうどいい落としどころがありそうかな」と思っているので、これからそれを書きますが、そのまえにひとつ。
●ラウレンティスは本当に死にたくないのか?
マーリオゥが不老不死の秘術を求めているので、マーリオゥ及びラウレンティスは「自分を死なさないことを目標にしている」というのが、物語のすなおな受け取り方だと思います。が。
私はひねくれているので、その逆のほうがドラマチックかなっていう印象も持っています。
「ラウレンティスは、不老不死の法を受けてしまったので、絶対に死ねない」
そこで、なんとかして死にたいので、ロアの知識がほしい。
そんなことありうるのって感じもするかと思いますが、なぜ死にたいのか。死なないということは、神のみもとに永久に行けないということを意味するからだ……といった方向の話です。
聖堂教会のモデルであると強く推定されるキリスト教カトリックでは、人は死んだら神のもとに迎えられて永遠の存在になるんだったはずです(たぶん)。
この世で善行をつんで、生をまっとうして、その後おむかえがきて神のもとに行くのが望みなのに、絶対にそこには行けないということになる。
(これはシエルにもいえる)
自殺すればいいんじゃないのということなら、キリスト教は自殺を禁じている。自殺者は天国には行けないそうなので神のみもとには行けません。
こういう(死にたいのに死ねない)想定の場合、
「マーリオゥ兄とシエルが以前、互いに話をして、互いに敬意を持った」
というのは、
「絶対に死ねないという境遇にあるわれわれふたりは、いったいこの世において、どう生き、なにをなすべきか」
というテーマについて意見を交換しあい、互いに感ずるところがあった……。
なんていうストーリーとして読めるようになります。
アルクェイドルートで、シエルが体に仕込んだマイクごしに、マーリオゥ(らしき人物)とロアが会話するシーンがあります。
※傍点は原文ママ
この場合、ロアが傍点つきで「死ぬまで苦しめ」というのは、「まぁ、死ぬことができるならの話だが」という皮肉として読むわけです。
ようは、「この物語は死ねない人たちの話だ」というアングルの一部に、マーリオゥとラウレンティスを組み込めるんじゃないかというアイデアだと思って下さい。
このお話には、死のうにも死ねない人物がたくさんいる。
ロア、シエル、アルクェイド。ここにマーリオゥとラウレンティス。
かれらがいかにして死という結末を「獲得」するのか。もしくは、「死ねないが、もういい」という悟りに到達するのか。
このお話は、「絶対死ねないピープル」たちが集まってごちゃごちゃごちゃごちゃやっているところに、「何でも絶対殺すマン」が飛び込んできて、一同ザワッとする物語だ……という見方は可能そうだ。
私はそういうお話が魅力的だと思うけれど、ごく素直に受け取って、「ラウレンティスは死にたくない」でももちろんいい。
この場合は、
「ラウレンティスは、何らかの事情で、いま死ぬわけにはいかない」
という条件を置けばいい。
たとえば、あくまで一例だけど、
「ラウレンティスは原理血戒を自分の体の中に封印している。彼が死んだら封印が解けて、原理血戒がどっかに飛んでいってしまうので、絶対に死んではいけない」
というようなことでもいい。
●ラウレンティスと時間の呪い
これからマーリオゥとラウレンティスの話を書いていきますが、私の思考手順をそのまま書いていきます。
考えていって、つごうの悪いところが出たら戻って修正するという作業をしますので、書かれていることがそのまま結論ではないかもしれません。そんな感じで受け取っていただけると助かります。
まず最初に、
「ラウレンティス枢機卿は際限なく若返ってしまう」
という前提条件を仮置きします。
この条件は仮置きなので、考えが破綻したら動かす。
ロアの不老不死の秘術は、「肉体年齢を一定にできない」という欠陥を抱えていた、ラウレンティス枢機卿はそれを知らずに秘術を受けてしまった、ということになりますね。
で。
もしラウレンティスが際限なく若返ってしまうなら、若返りすぎたらどうなるのだろう? これはもっともな疑問でしょう。
私は『火の鳥 宇宙編』を読んだことがあり、その読書体験から絶対に自由になれないので、
「ラウレンティスはゼロまで若返ったら、こんどは歳を取り始める」
のではないかというアイデアが出てきました。
極限まで若返ったラウレンティスはそこから歳を取り始め、老衰までいくと再び若返りはじめる。
その繰り返しで、絶対に死ねない。
そんな秘術は可能なのか? どういう理屈で成り立っているのか。
たとえば、その若返りないし老衰が、「時間の逆行」で成り立っているのだとしたらどうでしょう。
ラウレンティスの肉体が際限なく若返ってしまうのは、かれの肉体時間が逆向きに流れているから。時間が逆戻りしているからだ。
仮にそう考えることにする。
じゃあラウレンティスが老衰していくときは? そっちのターンだけ、不老不死の法は無効になっているのか?
それはどうもうまくないと感じるので、老衰時にも呪いっぽい効果が欲しい。
こういうのはどうでしょう。
ラウレンティスの肉体時間が逆向きに流れていたとき、世界の時間は正しく流れていたのです。
じゃあ、ラウレンティスが老衰していくときは? つまりかれの肉体時間が正しく流れていくときは?
そのとき世界の時間は逆行するのである。
●世界への影響を減らすには
この想定の場合、世界中がラウレンティスを中心として、時間順行と逆行をくりかえし、折り返し運転でループしているということになる。
これはこれでおもしろいので、これでもかまわない。
ただ、ちょっとギミックとしての規模が大きくなりすぎるので、ちょっとコンパクトにしたくなりました。
たとえば、時間の逆行はラウレンティスの周囲に限られるとかね。本来の世界からの修正力が働く、くらいの想定でいい。
ラウレンティスの近くにいる人は時間が戻って若返っちゃうなどです。
これでもラウレンティスおよび周囲の人にとっては大ごとだ。ラウレンティスは周りの人々の時間を吸って長生きしているようなもの。
もし仮に、ラウレンティスがこういう境遇に置かれたのだとしたら、かれは周囲への影響を最小限にしたい、その方法はないものかと考えるはずだ。
例えば、周囲にまき散らしてしまう時間逆行エフェクトを、誰か一人の人間の中に閉じ込められないか、とか……。
●固有結界の理論
月姫リメイクには出てきてないけど、TYPE-MOON世界には「固有結界」という魔術があるでしょう。
固有結界というのは、自分の中の心象風景を外の世界に表出する技術。一定範囲、一定時間、その心象風景は外部の世界から干渉を受けずに存在することができる。
ふつうは干渉を受けちゃって存在できない。
どうも人間の心象風景は、自分の中かぎりのものであって、自分の外側には存在させられないという決まりがあるらしい。
ということは逆にいえば、人間の体の中にあるものは、外部世界からの修正を受けない。
なんで修正を受けないかといえば、たぶんそれは、人間というのはそれ自体がひとつの世界であるからだ。世界は自分の世界を自分のルールで修正することはできるが、ヨソの世界を自分のルールで修正することはできない。
(余談だけどそれを可能にしそうなのが原理血戒)
人間はそれ自体がひとつの世界である。
なのでラウレンティスは、周囲の世界の時間を逆行させてしまうというエフェクトを、一人の別人という「ひとつの世界」の中に「閉じ込める」。
人体という「別のひとつの世界」の中に時間逆行を閉じ込めたので、ラウレンティスの周囲は時間逆行しなくなる。
それはいいとして、時間逆行エフェクトを体の中につっこまれた別人さんはどうなるのか。
ひとつの世界であるその人物は、「時間逆行するラウレンティスの周囲の世界」とイコールになるので、肉体が時間逆行する……ようするに無制限に若返っていくのじゃないか。
ラウレンティスが年老いていく(時間順行)あいだ、
相方は若返っていく(時間逆行)。
ラウレンティスが若返っていく(時間逆行)あいだ、
相方は年老いていく(時間順行)。
ひとことでいうと呪いを半分ひきうけてるってことなんだけど、その「半分引き受ける」のメカニズムは上記のようなことではないか。
ここまでをOKとするなら、「相方」はもちろんマーリオゥだ。
この想定の場合、いま外部で(総耶で)活動しているのがラウレンティス本人なのか、マーリオゥなのかは「わからない」。
どっちか片方が交代で活動するようになっていそうだ。
ラウレンティスがよぼよぼすぎて外部での活動に耐えられないときは、若いマーリオゥが活動する。マーリオゥがじいさんすぎるときはラウレンティスが外に出る。
上記はマーリオゥが実子であった場合の想定だけど、バリエーションとして、こうでもいい。
マーリオゥは時間逆行の呪いを引き受けるためだけに製造されたクローン人間かホムンクルスである。ラウレンティスが遠くから操り糸で(生霊的な憑依でもいい)遠隔操作している。この場合は同一人物説に近くなる。
入れ替わりについては前案と同じ。
同一人物説の是非に関していえば、「実子に呪いを肩代わりさせ、ついでに呪いを解く方法を探させている」と想定する場合は「同一人物ではない」。
マーリオゥを遠くから操っていて、言動はほぼラウレンティスのもの、と想定する場合は、同一人物説に近い。
マーリオゥは、マーリオゥ本人として活動している瞬間もあるし、ラウレンティスに操られている瞬間もある、というような想定にする場合はその中間になる。
私はこの中間説がいいのかなと思っています。
●呪い・下僕・吸血鬼
と、ここまで考えて、暫定採用しているのですが、似たようなことをもうちょっとシンプルなギミックで実現できそうな気もします。
一番シンプルに言おうとするなら、
「ラウレンティスは際限なく老衰していくが、絶対に死ねない。ふつうなら絶対に死ぬほどの老衰なのに生きているのは、マーリオゥから生の時間を吸い取っているから。そのためマーリオゥは決して歳を取れず若返ってしまう」
こんな感じでもいい。
前段で、「マーリオゥは極限まで若返ったら歳を取り始めるのか?」ということを検討したんだけども、
物語を虚心に読んでいくと、マーリオゥはわりと「死にたくない」という感情をダイレクトに出してきているので、「マーリオゥは極限まで若返ったら消滅する」とするほうが、物語との整合感は高いです。
その場合、「マーリオゥが消滅したら、誰か別の実子に呪いが移り、その人物が若返り始める」などの想定でいい。「ラウレンティスが実子を大量に作ってる」という現象に説明がつくようになる。
ともあれ、どの想定を取っても動かないのは、
「マーリオゥはラウレンティスによって呪われている」
という点です。
マーリオゥはラウレンティスと運命の紐づけがされていて、自分からは切り離せない。ラウレンティスが救われるとき自分も救われ、ラウレンティスが破滅するとき自分も破滅する。だからラウレンティスのために活動せざるを得ない。
ひょっとしたらときどき体の主導権を奪われてることだってありそうな感じだ。
だとすると、こういえる。
これはほとんど吸血鬼と下僕の関係だ。
彼らのストーリーにおいて、彼らは、吸血鬼を絶対に滅ぼすという行為をしていながら、「自分たちと吸血鬼は、いったい何が違うのか」という致命的な疑念を抱えていることになる。
この話、「ラウレンティスは死なない」という仮定を導入するならますます吸血鬼じみてくる。
マーリオゥは作中で「死徒は例外なく殺す」という明確な殺意を述べるのですが、「その前にロアから必要なものを拾う」といっている。ロアから何かを受け取るほうが優先なんですね。
死徒は「不死の人間なんてものは存在しないのだ」という主の大規定に反する存在だ。だから教会は「死徒をブッ殺す」。不死なので真祖も討伐対象だ。
だが、「ラウレンティスはロアの秘法を受け直さないかぎり死なない」と仮定するとしたら。ラウレンティスこそが教えに反する不死の存在だ。
仮に教会が、すべての死徒と真祖を抹殺できたとしても、ラウレンティスがずうっと生き続けるのだったら意味をなさない。深刻な矛盾を発生させてしまう。
だから、死徒ロアを殺すより前に、ラウレンティスが死ぬ方法を確保しないといけない……。
こういう皮肉めいたアングルが私は大好物ですし、たぶん奈須きのこさんもこういうの好きそうだ。なので、こういう方向性がおもしろいんじゃないかなって思っています。
●ロアとマーリオゥは何を取引するのか
ともあれここに、
「みんなの時間は順行しているなか、オレの時間だけ戻る」
という強烈きわまる境遇に置かれているマーリオゥという人がいます。
(いることにします)
これが人格に影響しないとか、魂に焼き付かないとか、嘘だろう。
なので、現状のマーリオゥには、こういう偏った世界観(=原理)が刻まれていると考えることにしましょう。
「時間は戻るもの」
さて。
そんな希少な原理を持ってる奴がもしいるなら、ぜひともほしいものだと思いそうな人物が、この物語にはあらかじめ配置されている。
ロアさんです。
前述のとおり、ロアは「時間を巻き戻す儀式」を実施しようとしている推定だ。
マーリオゥに「時間は戻るもの」という独特きわまる原理が刻み込まれているのなら、その原理はロアの儀式のパーツとしてもってこいです。
つまりマーリオゥとロアの間には、何らかの取引が成立する余地がある。
『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』において、ゼルレッチは青子に対して、
「マーリオゥとロアを絶対に取引させるな」
という緊急指令を出しています。
(略)
(マーリオゥ)
実際の話、ロアと取引をしていたら、
オレはこの街を差し出していただろうしな。『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』 マーリオゥルート
マーリオゥがロアから手に入れたいのは自分にかけられた「呪い」の解除。
ロアがマーリオゥから手に入れたいのは「時間は戻るもの」という原理。
こいつをとりかえっこしようじゃあないか。
ロアは、自分で言っている通り、ラウレンティスの「呪い」を解除する秘法は持っていない。
(注:ロアはアルクルートで、ラウレンティスにかかっているのは「呪い」だと自分で言っている)
しかし、そのかわり、他人の原理やそれに由来する能力を奪いとる能力は持っている。不老不死研究に失敗して、「次は死徒から異能を奪い取る研究をしよう」と思い立った、あれです。
ロアは二十七祖から異能を奪うという能力を「あらゆる呪いの継承」と表現する。だったら、ラウレンティスおよびマーリオゥにかけられた「呪い」の譲渡を受けることもできる推定だ。
つまり「時間は戻るもの」という原理あるいは呪いを奪って自分のものにすることができる。
「私がその呪いを譲り受ければ、おまえは呪いから自由になれるだろう」
たぶんその譲渡の結果、マーリオゥは死んでしまうのだけど、ロアはもちろんそのことは黙っている。
なので、今後こういうストーリーが想定される。
マーリオゥはロアに対して「おい、オレたちにかかった呪いをなんとかしろ」と要求する。
ロアは「じゃあ取引をしよう。私がその呪いを引き受けてやる。そのかわり総耶市から一切手を引け。たとえこの街が全滅するとしても目をつぶれ」
マーリオゥはこの取引に応じる。
ロアは彼の「時間は戻るもの」という原理と、「若返る能力」を奪い取る。
マーリオゥは、この呪いから自由になる。
ただしロアの「能力を奪う能力」は、相手の死亡を条件とするので、彼は死ぬ。
ロアは、こうして奪い取った「時間は戻るもの」という原理を儀式のコアにして、世界中の時間を地球誕生かそれ以前のところまで巻き戻す。
この原理は、なくても儀式は可能だが、あれば成功率が格段にあがる。
というか、「あれば成功してしまう」のだと思う。
※傍点は原文ママ
この「あと一手」が、「マーリオゥの原理の入手」なのではないか。
だからゼルレッチは、「この取引が成立したらやばいので絶対に阻止してくれ」と青子に依頼する。
●ビッグバン
ロアの話に戻ります。
かれはどうやら、総耶で時間を逆行させるたくらみをしているようだ。
(おそらく月の裏側=月姫リメイク続編で「逆行運河・なんとかかんとか」という儀式名が明かされそうな気がする)
なぜ時間を逆行させたいのか。たぶんですけど宇宙創生の瞬間を見たいのでしょう。以下のところに、それっぽいことが書いてある。
「彼の、私の」というのは、普通に考えれば「ネロ・カオスとロア」かなあと思います。
この二人は、彷徨海の工房で会合を持ったとき、互いが持ってるアイデアを出し合い、「これらを実践するときには互いに協力しよう」という同盟を結んだくらいの考え方ができる。
たとえばフランス事変は、ロアが元から持っていた計画。アルクェイドを拘束する術が必要だったので、ネロはロアに創世の土を貸与した。
それが失敗したので、「今度は私のアイデアを実践してくれ」とネロ・カオス。総耶ではネロとロアが共同で開発した儀式が行われようとしている。
ただ、ネロはどうやらアルクェイドによってすでに滅ぼされてしまったようなので、ロアは弔い合戦のような気持ちで計画を進めている……。
さて、引用部に「天体の卵! 開闢の原子配列!」と書いてあります。開闢の原子配列はビッグバンの直前ないし直後をイメージさせますし、「天体の卵」は月姫作中に何度か出てくる言葉だ。
※■は原文でも伏字
引用部、私の解釈コミで要約すると、
「天体の卵と、惑星の記憶と、そして今見えているこの景色は、ミハイルやロアが見たがっていたもの、そのものだ」
そして、その景色とは、「全天が真っ赤に燃えている」。
「もし、まだ宇宙の広がりがわずかなら、こういう真っ赤な宇宙が見られるだろう」
この「赤く見える」というのはいわゆる赤方偏移ですよね。
あまり専門的なことは知りませんが、遠ざかる物体から発せられる光はドップラー効果によって赤く見えるそうです。
地球から観測できるすべての別銀河の光が赤色をしているので、すべての銀河は地球から遠ざかっていることになる。このことから、宇宙はたえず膨張(インフレーション)していることがわかる。
この発見が、のちに「ビッグバン理論」につながっていった。
これも専門的なことはお手上げですがビッグバンとは宇宙開闢のときに起きたイベント。もともと宇宙は点のような高密度に圧縮されたもので、それが大爆発を起こして一点から急膨張をおこし、四方八方に広がっていって、いまの宇宙になった。そして宇宙は今でも膨張しつづけている。
さて、
「もし、まだ宇宙の広がりがわずかなら、こういう真っ赤な宇宙が見られるだろう」
もしも、今がビッグバンの直後であり、ここがビッグバンの中心であるのなら、すべての原子、粒子、いずれ星になるすべての質量が、自分を中心として球状に広がり遠ざかっていくさまが見られるだろう。
そのすべての質量が、光を放っているのなら、離れていくそれらから放たれる光は赤方偏移によって真っ赤に見えるだろう。
シエルエクストラルートの光体アルクェイドの中では、そういう「ビッグバンの再演」が行われていて、ロアは「まさにこれを見たがっていた」ということになる。
ビッグバンを見たい……。
なら、時間をビッグバンの瞬間まで巻き戻すことができればいい。時間が戻るとき、宇宙に散らばっていた全粒子が一点に向かって集まり、収縮するさまが見られるので、青方偏移して視界は青に染まるだろう。
●ビッグバンに何があるのか
なぜロアがビッグバンを見たいのかについては、考えられることがいくつかあります。今回はそのひとつについて語ります(それ以外は次回以降に)。
たとえば、宇宙が膨張しつづけ、エントロピーが増大しつづけているなら、「宇宙は壊れ続けてる」という言い方が可能かもしれない。
だったら、ビッグバンの瞬間は、エントロピーが極小の状態、いってみれば、「宇宙がいちばん整っていた状態」といえるかもしれない。
これをもっと恣意的に言い変えると、ビッグバンの瞬間というのは、まだ壊れていない理想の宇宙。「宇宙のまことの姿」「宇宙というもののイデアの姿」なのかもしれない。
ロアみたいなインテリは、そういうことを考えてもおかしくない。
ビッグバンは現行の物理法則を決めた瞬間だし(注:現実では)(注:たぶん)、宇宙におけるすべての粒子が「いま、こうある」のもビッグバンのときに決まったことになるでしょう。
ならば、ビッグバンの瞬間に何が起こっていたのかを知ることができれば、それは、宇宙の秘密をすべて知ったに等しい。人間が知りたいことの全てがそこにある。いってみれば、現行の宇宙における永遠の真実だ。
さらにつっこめば「物理法則がそこで決まった」「宇宙の形を決めてる」「すべてのもののイデアがある」といえば、これはもう根源だ。ロアはおそらく、ビッグバンの瞬間に行くことができればそこには根源があるはずだと考えていると思う。
もういっかい引用しますが、
時間の運河を逆行させて、宇宙開闢の場所にいけば、そこには「 」(根源)があるはずだ。
だけどロアはたぶん魔法を獲得するために根源に行きたいわけじゃない。彼が知りたいのは、「世界は、宇宙は、人間は、なぜこのようなものとしてあるのか」「それらは最終的にどうなっていくのか」。
ビッグバン/根源にたどりつけば、それがわかるはず、それをわかりたい。
●地球のビッグバン
ちょっと余計なとこに筆をのばしますが、地球と直接アクセスしている光体アルクェイドのコアに向けて志貴が落ちていくと、ビッグバン近似の現象が見られたわけですね。
宇宙のコアに向かっていくとビッグバンが見られるというのはわかるんですが、地球のコアに向かっていくとビッグバンが見られるというのは、うまく理解できなかった。
理解できなかったんだけど、むりやり理屈をつけてみると、宇宙を誕生させたビッグバンがあるように、「地球を誕生させた小ビッグバン」がある、というような設定があってもおかしくないんじゃないか。
「宇宙がひとつの宇宙であるように、地球もまた、ひとつの宇宙である」
というふうに考える。
地球もまたひとつの宇宙であるのなら、地球というひとつの宇宙を誕生させた「地球ビッグバン」というものもある。
志貴が光体アルクの中で見たのは地球のビッグバンである。
そしてロアが(ひとまず)到達しようとしているのは地球のビッグバンである……くらいに考えると、作中のさまざまな要素と接続しやすくなる。
で、固有結界のところで先述したように、「人間というのはそれ自体がひとつの世界である」。
この「世界」を「宇宙」と言い換えることがもし可能なら。
「人間もひとつの宇宙なので、その人間ひとりひとりを誕生させた極小ビッグバンがある」
そのくらいの想定があってもいいのではないだろうか。
この想定を仮にOKとするならば、
アルクェイドにも当然、アルクェイドを発生させた極小ビッグバンがある。
アルクェイドの核の部分に遡行していくと、アルクェイドビッグバンにアクセスできる。
光体アルクェイドは地球と直結しているので、光体アルクのビッグバンに降りていくと、地球のビッグバンに到達できる。
フランス事変でロアが目指したものって、これであってもいいなあ……という発想が浮かんだので、皆様におすそ分けしておきます。
アルクェイドを創世の土で捕縛して、彼女の殻をぶっこわして光体状態にする。エレイシアの魔力を使って光体を揮発させ、コアに向かって飛び込んでいくと、地球のビッグバンの瞬間に立ち会える。
だけども、そもそもアルクェイドの捕縛に失敗したから計画も失敗。これはたぶんだめねということになって、総耶ではネロ・カオス教授の理論に基づく別の計画にトライする……なんていう感じで。
それはさておき……。
人間と地球と宇宙は、マトリョーシカみたいな包含関係になってて、それぞれのコアにビッグバンがある。
人間と地球と宇宙は、存在としての規模が違うだけで本質的にはおなじものだ……。
なんていう考えは、わりと私好みです。
人間と地球が本質的に同じものなら、人間に原理があるように、地球にもその原理があってもいいですね。地球に原理があるのなら、ロアはそれを知りたいと思うでしょう。なんていう方向性も面白い。
続きます。
次回は「ロアがビッグバンに向かう目的」の別案。再びマーリオゥ/ラウレンティス問題。
それと、「本稿で存在を推定した地球ビッグバンの正体は“天体の卵”なんじゃないかというお話。
続き。
月姫リメイク(6)天体の卵の正体・古い宇宙・続マリ/ラウ問題
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月姫リメイク(5)マーリオゥ/ラウレンティス同一人物問題・逆行運河したいロア
筆者-Townmemory 初稿-2023年6月24日
最初にロアのパンティオンについて語り、次にマーリオゥ/ラウレンティスの話になり、もっかいロアの話に戻ってきます。
総耶でロアは何をしたいのか、というのを、ラウレンティス問題を材料に詰めていきます。フランス事変の別案も提案する予定です。
順番にお読みいただくことを推奨します。
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月姫リメイク(2)原理血戒と大規定・下
月姫リメイク(3)ロアの転生回数とヴローヴに与えた術式
月姫リメイク(4)ロアのイデア論・イデアブラッドって何よ
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●やらかしちゃったロアさんの自白
『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』の青子ルートのラスボスはロアです。
このルートのロアはなかなか愉快な人で、聞かれもしないのに自分の計画についてべらべらしゃべり、「あれ、ひょっとして自分、やらかした?」と自己批判を始めます。すき。
(ロア)『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』 蒼崎青子ルート
これはこれは。
まさか最新の魔法使いの登場とは。
いずれやって来るとは確信はしていたが、
この段階でやって来るのは予想外だ。
まだパンティオンは起動していない。
もしや未来からの客人かな? となると―――
は―――はハ、ハハハハハハハハ!
やはり彼の、私の理論は正しかった!
ソラを暴くロアの企みは、
いちおうの成功を見たというコトか!
私の解釈コミで意訳してみると、以下のような感じです。
・これは世界を滅ぼすたくらみなので、正義の味方蒼崎青子が来そうだと思ってた。
・ひょっとして蒼崎青子は未来から来たのか?
・だとしたら、これからやろうとする悪だくみは、未来において成功してるってことだ。
もっと縮めていうと、
「蒼崎青子が未来から来たのなら、この悪だくみは成功だ」
だったら、「蒼崎青子が未来から来たのなら成功となる悪だくみとは何か」と考えていけば、ロアの狙いがわかる可能性がある。
で、私は考えたのですが。
そんなに意外な方向性ではないのですが「この宇宙の(地球のかな?)時間を巻き戻して宇宙誕生の瞬間を見に行く」かなと思いました。
ロアのパンティオンが起動したら、宇宙の時間が巻き戻りはじめる。
時間が未来から過去へと流れるようになるので、未来の人間が過去に現れるようになる。
時間が巻き戻りはじめ、「これは一大事だ」と思った蒼崎青子が、パンティオンを襲撃しにくる。
その場合、いまここに現れた蒼崎青子は、「時間を巻き戻す悪だくみが成功した未来から来た」ことになる。
なるほど私の計画は成功したのか!
ところが蒼崎青子さんは謎の司祭「???」さんに雇われたただの壊し屋で、ロアをやっつけて工房を占拠するのが目的で、当然、現代の人なのです。未来からは来てません(少なくとも今回は)。
自分の悪だくみを自分の口で全部ばらしちゃったロアは、青子から「ああこれ、終末案件ね」と認知され(たぶん)、やっつけられちゃう。
そこまではOKとして、なんでまたロアは時間を巻き戻したいのか。
それを考えるまえに、ちょっとした必要があってマーリオゥとラウレンティスについて取り上げておきます。
●マーリオゥ/ラウレンティス同一人物なのか問題
マーリオゥはラウレンティスの実子なのか?
それともマーリオゥはラウレンティス本人なのか?
という問題があります。
ようするにマーリオゥとラウレンティスは同一人物なのかそうでないのか。
(というかなぜ同一人物説が出てきているのか)
前提となる情報を手早くまとめておきます。
・まずマーリオゥは外見12歳のわりに権力が強すぎる。
・ラウレンティス枢機卿は大勢の養子をとっている(作中では20人くらいとされる)。
・対外的にはマーリオゥはラウレンティスの養子の子、つまり孫だとされる。
・ラウレンティスの養子たちは、実は実子ではないかと噂される。
・マーリオゥ本人は、「自分はジジイの実子だ」とぶっちゃけている。
ここまではいいですね。
次に、シエルがらみの情報。
・マーリオゥの兄とシエルが、以前、仕事で一緒になったことがあった。
・シエルはマーリオゥの兄に尊敬の念を抱いた。
・マーリオゥいわく「ラウレンティスの一族はシエルに恩がある」。
・志貴は「マーリオゥとマーリオゥの兄は同一人物ではないか」と推測し、マーリオゥはこれを否定しなかった。
最後にロアがらみで。
・マーリオゥはラウレンティスのために、ロアから「不老不死の秘術」を入手しようとしている。
・ロアは不老不死の研究をしたことがあるが「失敗だった、これではまるきり退化だ」といって研究を捨ててしまった。
以上が条件でした。
ここから先が巷間よくいわれる(ネット上でよく語られている)推測。
「マーリオゥとその兄が同一人物」なら、マーリオゥは昔より若返っていることになる。
マーリオゥの年齢が見た目通りではなく、たくさんの経験や実績を持っているのなら、歳のわりに権力や能力が強すぎることが疑問ではなくなる。
ここで、「若返り」というキーワードが発生しました。
・ラウレンティスの一族は「若返り」に関する秘密をかかえていそうだ(推測)。
・ラウレンティスは不老不死の秘術を求めている(事実)。
このふたつを足し合わせたとき、
「ラウレンティスは何らかの事情で、ロアの不老不死の秘術を受けた」
「その結果、年老いるかわりにどんどん若返ってしまうようになった」
というアイデア(推測)が広まることになりました。
じゃあ、ラウレンティス本人だけでなく、養子もしくは実子であるマーリオゥまで若返っているのはどういうことかという話になる。
そこで、
「マーリオゥは実子でも養子でもなくラウレンティス本人である」
偽名を使って外部で活動しているのである……というアイデアが生じたのですね。
その一方で、まだ同一人物と断定するには早いよねという慎重な意見もあります。私も慎重な立場です。
直感的には「その中間あたりにちょうどいい落としどころがありそうかな」と思っているので、これからそれを書きますが、そのまえにひとつ。
●ラウレンティスは本当に死にたくないのか?
マーリオゥが不老不死の秘術を求めているので、マーリオゥ及びラウレンティスは「自分を死なさないことを目標にしている」というのが、物語のすなおな受け取り方だと思います。が。
私はひねくれているので、その逆のほうがドラマチックかなっていう印象も持っています。
「ラウレンティスは、不老不死の法を受けてしまったので、絶対に死ねない」
そこで、なんとかして死にたいので、ロアの知識がほしい。
そんなことありうるのって感じもするかと思いますが、なぜ死にたいのか。死なないということは、神のみもとに永久に行けないということを意味するからだ……といった方向の話です。
聖堂教会のモデルであると強く推定されるキリスト教カトリックでは、人は死んだら神のもとに迎えられて永遠の存在になるんだったはずです(たぶん)。
この世で善行をつんで、生をまっとうして、その後おむかえがきて神のもとに行くのが望みなのに、絶対にそこには行けないということになる。
(これはシエルにもいえる)
自殺すればいいんじゃないのということなら、キリスト教は自殺を禁じている。自殺者は天国には行けないそうなので神のみもとには行けません。
こういう(死にたいのに死ねない)想定の場合、
「マーリオゥ兄とシエルが以前、互いに話をして、互いに敬意を持った」
というのは、
「絶対に死ねないという境遇にあるわれわれふたりは、いったいこの世において、どう生き、なにをなすべきか」
というテーマについて意見を交換しあい、互いに感ずるところがあった……。
なんていうストーリーとして読めるようになります。
アルクェイドルートで、シエルが体に仕込んだマイクごしに、マーリオゥ(らしき人物)とロアが会話するシーンがあります。
「徒労だったな。不老の解決法はない。せいぜい健やかに、『月姫 -A piece of blue glass moon-』 12/凶つ夜 Note.もうひとりの、死ぬまで苦しめ 」
※傍点は原文ママ
この場合、ロアが傍点つきで「死ぬまで苦しめ」というのは、「まぁ、死ぬことができるならの話だが」という皮肉として読むわけです。
ようは、「この物語は死ねない人たちの話だ」というアングルの一部に、マーリオゥとラウレンティスを組み込めるんじゃないかというアイデアだと思って下さい。
このお話には、死のうにも死ねない人物がたくさんいる。
ロア、シエル、アルクェイド。ここにマーリオゥとラウレンティス。
かれらがいかにして死という結末を「獲得」するのか。もしくは、「死ねないが、もういい」という悟りに到達するのか。
このお話は、「絶対死ねないピープル」たちが集まってごちゃごちゃごちゃごちゃやっているところに、「何でも絶対殺すマン」が飛び込んできて、一同ザワッとする物語だ……という見方は可能そうだ。
私はそういうお話が魅力的だと思うけれど、ごく素直に受け取って、「ラウレンティスは死にたくない」でももちろんいい。
この場合は、
「ラウレンティスは、何らかの事情で、いま死ぬわけにはいかない」
という条件を置けばいい。
たとえば、あくまで一例だけど、
「ラウレンティスは原理血戒を自分の体の中に封印している。彼が死んだら封印が解けて、原理血戒がどっかに飛んでいってしまうので、絶対に死んではいけない」
というようなことでもいい。
●ラウレンティスと時間の呪い
これからマーリオゥとラウレンティスの話を書いていきますが、私の思考手順をそのまま書いていきます。
考えていって、つごうの悪いところが出たら戻って修正するという作業をしますので、書かれていることがそのまま結論ではないかもしれません。そんな感じで受け取っていただけると助かります。
まず最初に、
「ラウレンティス枢機卿は際限なく若返ってしまう」
という前提条件を仮置きします。
この条件は仮置きなので、考えが破綻したら動かす。
ロアの不老不死の秘術は、「肉体年齢を一定にできない」という欠陥を抱えていた、ラウレンティス枢機卿はそれを知らずに秘術を受けてしまった、ということになりますね。
で。
もしラウレンティスが際限なく若返ってしまうなら、若返りすぎたらどうなるのだろう? これはもっともな疑問でしょう。
私は『火の鳥 宇宙編』を読んだことがあり、その読書体験から絶対に自由になれないので、
「ラウレンティスはゼロまで若返ったら、こんどは歳を取り始める」
のではないかというアイデアが出てきました。
極限まで若返ったラウレンティスはそこから歳を取り始め、老衰までいくと再び若返りはじめる。
その繰り返しで、絶対に死ねない。
そんな秘術は可能なのか? どういう理屈で成り立っているのか。
たとえば、その若返りないし老衰が、「時間の逆行」で成り立っているのだとしたらどうでしょう。
ラウレンティスの肉体が際限なく若返ってしまうのは、かれの肉体時間が逆向きに流れているから。時間が逆戻りしているからだ。
仮にそう考えることにする。
じゃあラウレンティスが老衰していくときは? そっちのターンだけ、不老不死の法は無効になっているのか?
それはどうもうまくないと感じるので、老衰時にも呪いっぽい効果が欲しい。
こういうのはどうでしょう。
ラウレンティスの肉体時間が逆向きに流れていたとき、世界の時間は正しく流れていたのです。
じゃあ、ラウレンティスが老衰していくときは? つまりかれの肉体時間が正しく流れていくときは?
そのとき世界の時間は逆行するのである。
●世界への影響を減らすには
この想定の場合、世界中がラウレンティスを中心として、時間順行と逆行をくりかえし、折り返し運転でループしているということになる。
これはこれでおもしろいので、これでもかまわない。
ただ、ちょっとギミックとしての規模が大きくなりすぎるので、ちょっとコンパクトにしたくなりました。
たとえば、時間の逆行はラウレンティスの周囲に限られるとかね。本来の世界からの修正力が働く、くらいの想定でいい。
ラウレンティスの近くにいる人は時間が戻って若返っちゃうなどです。
これでもラウレンティスおよび周囲の人にとっては大ごとだ。ラウレンティスは周りの人々の時間を吸って長生きしているようなもの。
もし仮に、ラウレンティスがこういう境遇に置かれたのだとしたら、かれは周囲への影響を最小限にしたい、その方法はないものかと考えるはずだ。
例えば、周囲にまき散らしてしまう時間逆行エフェクトを、誰か一人の人間の中に閉じ込められないか、とか……。
●固有結界の理論
月姫リメイクには出てきてないけど、TYPE-MOON世界には「固有結界」という魔術があるでしょう。
固有結界というのは、自分の中の心象風景を外の世界に表出する技術。一定範囲、一定時間、その心象風景は外部の世界から干渉を受けずに存在することができる。
ふつうは干渉を受けちゃって存在できない。
どうも人間の心象風景は、自分の中かぎりのものであって、自分の外側には存在させられないという決まりがあるらしい。
ということは逆にいえば、人間の体の中にあるものは、外部世界からの修正を受けない。
なんで修正を受けないかといえば、たぶんそれは、人間というのはそれ自体がひとつの世界であるからだ。世界は自分の世界を自分のルールで修正することはできるが、ヨソの世界を自分のルールで修正することはできない。
(余談だけどそれを可能にしそうなのが原理血戒)
人間はそれ自体がひとつの世界である。
なのでラウレンティスは、周囲の世界の時間を逆行させてしまうというエフェクトを、一人の別人という「ひとつの世界」の中に「閉じ込める」。
人体という「別のひとつの世界」の中に時間逆行を閉じ込めたので、ラウレンティスの周囲は時間逆行しなくなる。
それはいいとして、時間逆行エフェクトを体の中につっこまれた別人さんはどうなるのか。
ひとつの世界であるその人物は、「時間逆行するラウレンティスの周囲の世界」とイコールになるので、肉体が時間逆行する……ようするに無制限に若返っていくのじゃないか。
ラウレンティスが年老いていく(時間順行)あいだ、
相方は若返っていく(時間逆行)。
ラウレンティスが若返っていく(時間逆行)あいだ、
相方は年老いていく(時間順行)。
ひとことでいうと呪いを半分ひきうけてるってことなんだけど、その「半分引き受ける」のメカニズムは上記のようなことではないか。
ここまでをOKとするなら、「相方」はもちろんマーリオゥだ。
この想定の場合、いま外部で(総耶で)活動しているのがラウレンティス本人なのか、マーリオゥなのかは「わからない」。
どっちか片方が交代で活動するようになっていそうだ。
ラウレンティスがよぼよぼすぎて外部での活動に耐えられないときは、若いマーリオゥが活動する。マーリオゥがじいさんすぎるときはラウレンティスが外に出る。
上記はマーリオゥが実子であった場合の想定だけど、バリエーションとして、こうでもいい。
マーリオゥは時間逆行の呪いを引き受けるためだけに製造されたクローン人間かホムンクルスである。ラウレンティスが遠くから操り糸で(生霊的な憑依でもいい)遠隔操作している。この場合は同一人物説に近くなる。
入れ替わりについては前案と同じ。
同一人物説の是非に関していえば、「実子に呪いを肩代わりさせ、ついでに呪いを解く方法を探させている」と想定する場合は「同一人物ではない」。
マーリオゥを遠くから操っていて、言動はほぼラウレンティスのもの、と想定する場合は、同一人物説に近い。
マーリオゥは、マーリオゥ本人として活動している瞬間もあるし、ラウレンティスに操られている瞬間もある、というような想定にする場合はその中間になる。
私はこの中間説がいいのかなと思っています。
●呪い・下僕・吸血鬼
と、ここまで考えて、暫定採用しているのですが、似たようなことをもうちょっとシンプルなギミックで実現できそうな気もします。
一番シンプルに言おうとするなら、
「ラウレンティスは際限なく老衰していくが、絶対に死ねない。ふつうなら絶対に死ぬほどの老衰なのに生きているのは、マーリオゥから生の時間を吸い取っているから。そのためマーリオゥは決して歳を取れず若返ってしまう」
こんな感じでもいい。
前段で、「マーリオゥは極限まで若返ったら歳を取り始めるのか?」ということを検討したんだけども、
物語を虚心に読んでいくと、マーリオゥはわりと「死にたくない」という感情をダイレクトに出してきているので、「マーリオゥは極限まで若返ったら消滅する」とするほうが、物語との整合感は高いです。
その場合、「マーリオゥが消滅したら、誰か別の実子に呪いが移り、その人物が若返り始める」などの想定でいい。「ラウレンティスが実子を大量に作ってる」という現象に説明がつくようになる。
ともあれ、どの想定を取っても動かないのは、
「マーリオゥはラウレンティスによって呪われている」
という点です。
マーリオゥはラウレンティスと運命の紐づけがされていて、自分からは切り離せない。ラウレンティスが救われるとき自分も救われ、ラウレンティスが破滅するとき自分も破滅する。だからラウレンティスのために活動せざるを得ない。
ひょっとしたらときどき体の主導権を奪われてることだってありそうな感じだ。
だとすると、こういえる。
これはほとんど吸血鬼と下僕の関係だ。
彼らのストーリーにおいて、彼らは、吸血鬼を絶対に滅ぼすという行為をしていながら、「自分たちと吸血鬼は、いったい何が違うのか」という致命的な疑念を抱えていることになる。
この話、「ラウレンティスは死なない」という仮定を導入するならますます吸血鬼じみてくる。
マーリオゥは作中で「死徒は例外なく殺す」という明確な殺意を述べるのですが、「その前にロアから必要なものを拾う」といっている。ロアから何かを受け取るほうが優先なんですね。
つーか安心しろ、死徒は例外なくブッ殺す。その前に拾っておかなきゃならねぇお宝があってな。ジジイの密命と言えばお利口なテメェも納得だろ?”『月姫 -A piece of blue glass moon-』 12/凶つ夜 Note.もうひとりの、
死徒は「不死の人間なんてものは存在しないのだ」という主の大規定に反する存在だ。だから教会は「死徒をブッ殺す」。不死なので真祖も討伐対象だ。
だが、「ラウレンティスはロアの秘法を受け直さないかぎり死なない」と仮定するとしたら。ラウレンティスこそが教えに反する不死の存在だ。
仮に教会が、すべての死徒と真祖を抹殺できたとしても、ラウレンティスがずうっと生き続けるのだったら意味をなさない。深刻な矛盾を発生させてしまう。
だから、死徒ロアを殺すより前に、ラウレンティスが死ぬ方法を確保しないといけない……。
こういう皮肉めいたアングルが私は大好物ですし、たぶん奈須きのこさんもこういうの好きそうだ。なので、こういう方向性がおもしろいんじゃないかなって思っています。
●ロアとマーリオゥは何を取引するのか
ともあれここに、
「みんなの時間は順行しているなか、オレの時間だけ戻る」
という強烈きわまる境遇に置かれているマーリオゥという人がいます。
(いることにします)
これが人格に影響しないとか、魂に焼き付かないとか、嘘だろう。
なので、現状のマーリオゥには、こういう偏った世界観(=原理)が刻まれていると考えることにしましょう。
「時間は戻るもの」
さて。
そんな希少な原理を持ってる奴がもしいるなら、ぜひともほしいものだと思いそうな人物が、この物語にはあらかじめ配置されている。
ロアさんです。
前述のとおり、ロアは「時間を巻き戻す儀式」を実施しようとしている推定だ。
マーリオゥに「時間は戻るもの」という独特きわまる原理が刻み込まれているのなら、その原理はロアの儀式のパーツとしてもってこいです。
つまりマーリオゥとロアの間には、何らかの取引が成立する余地がある。
『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』において、ゼルレッチは青子に対して、
「マーリオゥとロアを絶対に取引させるな」
という緊急指令を出しています。
(蒼崎青子)
でも、ちょっとだけ虫の知らせはあったかな。
ゼルレッチの爺さんから電話があってさー。
なんでも、このまま貴方がロアと取引すると、
何もかも悪い方に転がっていくんだとか。
でも“何”が“悪い”のかは
教えてくれなかったから、ほら、
(略)
(マーリオゥ)
実際の話、ロアと取引をしていたら、
オレはこの街を差し出していただろうしな。『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』 マーリオゥルート
マーリオゥがロアから手に入れたいのは自分にかけられた「呪い」の解除。
ロアがマーリオゥから手に入れたいのは「時間は戻るもの」という原理。
こいつをとりかえっこしようじゃあないか。
ロアは、自分で言っている通り、ラウレンティスの「呪い」を解除する秘法は持っていない。
(注:ロアはアルクルートで、ラウレンティスにかかっているのは「呪い」だと自分で言っている)
しかし、そのかわり、他人の原理やそれに由来する能力を奪いとる能力は持っている。不老不死研究に失敗して、「次は死徒から異能を奪い取る研究をしよう」と思い立った、あれです。
『XV あらゆる呪い、負債の継承と、その利用』『月姫 -A piece of blue glass moon-』 6/朱い残滓I Note.不死の証明
『あるいは。自らの異能、運命力の強制的な譲渡』
ロアは二十七祖から異能を奪うという能力を「あらゆる呪いの継承」と表現する。だったら、ラウレンティスおよびマーリオゥにかけられた「呪い」の譲渡を受けることもできる推定だ。
つまり「時間は戻るもの」という原理あるいは呪いを奪って自分のものにすることができる。
「私がその呪いを譲り受ければ、おまえは呪いから自由になれるだろう」
たぶんその譲渡の結果、マーリオゥは死んでしまうのだけど、ロアはもちろんそのことは黙っている。
なので、今後こういうストーリーが想定される。
マーリオゥはロアに対して「おい、オレたちにかかった呪いをなんとかしろ」と要求する。
ロアは「じゃあ取引をしよう。私がその呪いを引き受けてやる。そのかわり総耶市から一切手を引け。たとえこの街が全滅するとしても目をつぶれ」
マーリオゥはこの取引に応じる。
ロアは彼の「時間は戻るもの」という原理と、「若返る能力」を奪い取る。
マーリオゥは、この呪いから自由になる。
ただしロアの「能力を奪う能力」は、相手の死亡を条件とするので、彼は死ぬ。
ロアは、こうして奪い取った「時間は戻るもの」という原理を儀式のコアにして、世界中の時間を地球誕生かそれ以前のところまで巻き戻す。
この原理は、なくても儀式は可能だが、あれば成功率が格段にあがる。
というか、「あれば成功してしまう」のだと思う。
(ロア)『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』 巌窟王ルート
今回はなかなかの手応えだ。
あと一手が上手くいけば 、残り百手は必ず成立する 。
うまい話すぎてそそられるだろ?
※傍点は原文ママ
この「あと一手」が、「マーリオゥの原理の入手」なのではないか。
だからゼルレッチは、「この取引が成立したらやばいので絶対に阻止してくれ」と青子に依頼する。
●ビッグバン
ロアの話に戻ります。
かれはどうやら、総耶で時間を逆行させるたくらみをしているようだ。
(おそらく月の裏側=月姫リメイク続編で「逆行運河・なんとかかんとか」という儀式名が明かされそうな気がする)
なぜ時間を逆行させたいのか。たぶんですけど宇宙創生の瞬間を見たいのでしょう。以下のところに、それっぽいことが書いてある。
(ロア)『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』 蒼崎青子ルート
やはり彼の、私の理論は正しかった!
ソラを暴くロアの企みは、
いちおうの成功を見たというコトか!
天体の卵! 開闢の原子配列!
運河は収束し天堂に「 」(から)は鎮座する!
「彼の、私の」というのは、普通に考えれば「ネロ・カオスとロア」かなあと思います。
この二人は、彷徨海の工房で会合を持ったとき、互いが持ってるアイデアを出し合い、「これらを実践するときには互いに協力しよう」という同盟を結んだくらいの考え方ができる。
たとえばフランス事変は、ロアが元から持っていた計画。アルクェイドを拘束する術が必要だったので、ネロはロアに創世の土を貸与した。
それが失敗したので、「今度は私のアイデアを実践してくれ」とネロ・カオス。総耶ではネロとロアが共同で開発した儀式が行われようとしている。
ただ、ネロはどうやらアルクェイドによってすでに滅ぼされてしまったようなので、ロアは弔い合戦のような気持ちで計画を進めている……。
さて、引用部に「天体の卵! 開闢の原子配列!」と書いてあります。開闢の原子配列はビッグバンの直前ないし直後をイメージさせますし、「天体の卵」は月姫作中に何度か出てくる言葉だ。
天体の卵。『月姫 -A piece of blue glass moon-』 14/果てずの石 Note.逆行運河/天体受胎
惑星の記憶。
全てを知ろうとした少年(ミハイル)。
神の愛を、永遠を定義しようとした男(ロア)。
機会は既に失われたが、その望みの一端が、いま、この地表に表れる。
空間が上書きされる。
全天が燃えている。目映い光を放っている。
それはあり得ない。
この惑星から見上げる景色ではありえない。
(略)
だが―――もし、まだ宇宙の広がりが僅かであると仮定したら。
■■■■■■というものがあるとすれば。
何よりも未(あたら)しい、何よりも移(とお)ざかる、
深紅の宙(ソラ)が放出される。
※■は原文でも伏字
引用部、私の解釈コミで要約すると、
「天体の卵と、惑星の記憶と、そして今見えているこの景色は、ミハイルやロアが見たがっていたもの、そのものだ」
そして、その景色とは、「全天が真っ赤に燃えている」。
「もし、まだ宇宙の広がりがわずかなら、こういう真っ赤な宇宙が見られるだろう」
この「赤く見える」というのはいわゆる赤方偏移ですよね。
あまり専門的なことは知りませんが、遠ざかる物体から発せられる光はドップラー効果によって赤く見えるそうです。
地球から観測できるすべての別銀河の光が赤色をしているので、すべての銀河は地球から遠ざかっていることになる。このことから、宇宙はたえず膨張(インフレーション)していることがわかる。
この発見が、のちに「ビッグバン理論」につながっていった。
これも専門的なことはお手上げですがビッグバンとは宇宙開闢のときに起きたイベント。もともと宇宙は点のような高密度に圧縮されたもので、それが大爆発を起こして一点から急膨張をおこし、四方八方に広がっていって、いまの宇宙になった。そして宇宙は今でも膨張しつづけている。
さて、
「もし、まだ宇宙の広がりがわずかなら、こういう真っ赤な宇宙が見られるだろう」
もしも、今がビッグバンの直後であり、ここがビッグバンの中心であるのなら、すべての原子、粒子、いずれ星になるすべての質量が、自分を中心として球状に広がり遠ざかっていくさまが見られるだろう。
そのすべての質量が、光を放っているのなら、離れていくそれらから放たれる光は赤方偏移によって真っ赤に見えるだろう。
シエルエクストラルートの光体アルクェイドの中では、そういう「ビッグバンの再演」が行われていて、ロアは「まさにこれを見たがっていた」ということになる。
ビッグバンを見たい……。
なら、時間をビッグバンの瞬間まで巻き戻すことができればいい。時間が戻るとき、宇宙に散らばっていた全粒子が一点に向かって集まり、収縮するさまが見られるので、青方偏移して視界は青に染まるだろう。
●ビッグバンに何があるのか
なぜロアがビッグバンを見たいのかについては、考えられることがいくつかあります。今回はそのひとつについて語ります(それ以外は次回以降に)。
たとえば、宇宙が膨張しつづけ、エントロピーが増大しつづけているなら、「宇宙は壊れ続けてる」という言い方が可能かもしれない。
だったら、ビッグバンの瞬間は、エントロピーが極小の状態、いってみれば、「宇宙がいちばん整っていた状態」といえるかもしれない。
これをもっと恣意的に言い変えると、ビッグバンの瞬間というのは、まだ壊れていない理想の宇宙。「宇宙のまことの姿」「宇宙というもののイデアの姿」なのかもしれない。
ロアみたいなインテリは、そういうことを考えてもおかしくない。
ビッグバンは現行の物理法則を決めた瞬間だし(注:現実では)(注:たぶん)、宇宙におけるすべての粒子が「いま、こうある」のもビッグバンのときに決まったことになるでしょう。
ならば、ビッグバンの瞬間に何が起こっていたのかを知ることができれば、それは、宇宙の秘密をすべて知ったに等しい。人間が知りたいことの全てがそこにある。いってみれば、現行の宇宙における永遠の真実だ。
さらにつっこめば「物理法則がそこで決まった」「宇宙の形を決めてる」「すべてのもののイデアがある」といえば、これはもう根源だ。ロアはおそらく、ビッグバンの瞬間に行くことができればそこには根源があるはずだと考えていると思う。
もういっかい引用しますが、
(ロア)『MELTY BLOOD:TYPE LUMINA』 蒼崎青子ルート
天体の卵! 開闢の原子配列!
運河は収束し天堂に「 」(から)は鎮座する!
時間の運河を逆行させて、宇宙開闢の場所にいけば、そこには「 」(根源)があるはずだ。
だけどロアはたぶん魔法を獲得するために根源に行きたいわけじゃない。彼が知りたいのは、「世界は、宇宙は、人間は、なぜこのようなものとしてあるのか」「それらは最終的にどうなっていくのか」。
ビッグバン/根源にたどりつけば、それがわかるはず、それをわかりたい。
●地球のビッグバン
ちょっと余計なとこに筆をのばしますが、地球と直接アクセスしている光体アルクェイドのコアに向けて志貴が落ちていくと、ビッグバン近似の現象が見られたわけですね。
宇宙のコアに向かっていくとビッグバンが見られるというのはわかるんですが、地球のコアに向かっていくとビッグバンが見られるというのは、うまく理解できなかった。
理解できなかったんだけど、むりやり理屈をつけてみると、宇宙を誕生させたビッグバンがあるように、「地球を誕生させた小ビッグバン」がある、というような設定があってもおかしくないんじゃないか。
「宇宙がひとつの宇宙であるように、地球もまた、ひとつの宇宙である」
というふうに考える。
地球もまたひとつの宇宙であるのなら、地球というひとつの宇宙を誕生させた「地球ビッグバン」というものもある。
志貴が光体アルクの中で見たのは地球のビッグバンである。
そしてロアが(ひとまず)到達しようとしているのは地球のビッグバンである……くらいに考えると、作中のさまざまな要素と接続しやすくなる。
で、固有結界のところで先述したように、「人間というのはそれ自体がひとつの世界である」。
この「世界」を「宇宙」と言い換えることがもし可能なら。
「人間もひとつの宇宙なので、その人間ひとりひとりを誕生させた極小ビッグバンがある」
そのくらいの想定があってもいいのではないだろうか。
この想定を仮にOKとするならば、
アルクェイドにも当然、アルクェイドを発生させた極小ビッグバンがある。
アルクェイドの核の部分に遡行していくと、アルクェイドビッグバンにアクセスできる。
光体アルクェイドは地球と直結しているので、光体アルクのビッグバンに降りていくと、地球のビッグバンに到達できる。
フランス事変でロアが目指したものって、これであってもいいなあ……という発想が浮かんだので、皆様におすそ分けしておきます。
アルクェイドを創世の土で捕縛して、彼女の殻をぶっこわして光体状態にする。エレイシアの魔力を使って光体を揮発させ、コアに向かって飛び込んでいくと、地球のビッグバンの瞬間に立ち会える。
だけども、そもそもアルクェイドの捕縛に失敗したから計画も失敗。これはたぶんだめねということになって、総耶ではネロ・カオス教授の理論に基づく別の計画にトライする……なんていう感じで。
それはさておき……。
人間と地球と宇宙は、マトリョーシカみたいな包含関係になってて、それぞれのコアにビッグバンがある。
人間と地球と宇宙は、存在としての規模が違うだけで本質的にはおなじものだ……。
なんていう考えは、わりと私好みです。
人間と地球が本質的に同じものなら、人間に原理があるように、地球にもその原理があってもいいですね。地球に原理があるのなら、ロアはそれを知りたいと思うでしょう。なんていう方向性も面白い。
続きます。
次回は「ロアがビッグバンに向かう目的」の別案。再びマーリオゥ/ラウレンティス問題。
それと、「本稿で存在を推定した地球ビッグバンの正体は“天体の卵”なんじゃないかというお話。
続き。
月姫リメイク(6)天体の卵の正体・古い宇宙・続マリ/ラウ問題
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