先日、「日本の社会保障は申請主義」との話を聞いて色々なことを思い出しました。
申請主義の最大の問題は「知らないサービスには申請することができない」点です。
かつて父の介護のためケアマネージャーをお願いしていましたが不正を働かれていたため本来受けることのできたサービスを受けることができずにいたのです。それも10年間。不正発覚後、市役所で初めて知ったサービスがありショックでした。市役所の窓口で「ケアマネージャーが本来する仕事なんですけど」といわれてきたことには家族が調べたり、行ってきたものもありました(時には仕事を休んで)。
またこうしたこともあります。東大の博士課程で学ぶ外国人留学生が「不動産管理会社が敷金を返してくれない。どうすればいいのか。」と相談してきたので法テラスや自治体の無料法律相談を紹介したところ、その女性は「こうした無料相談が区役所であるんですね」と感想を述べていました。日本に住み日本語で学術論文を書くような人がこうしたサービスを知らないのです。私がこうした法律相談を知っていたのは電車内の広告であったり、自治体の広報で見てたまたま知っていたからですが、十分に知られているとはいえません。どんなに日本語ができても情報をはじめとする様々な「ネットワーク外」から来た外国人なら「情報のありか」を知らなくても不思議はないのかもしれません。
広報を読まない人も多いですし、(紙の)新聞を取らない人も最近では多い。そもそも電車内ではスマートフォンを見ていて広告を見る人も今では多くないでしょう。残念ながら公的機関の広報はこうした時代の流れに沿っているものではありません。
そこには広報や「サービスを提供する側」としての意識の欠如がどうしてもあると思います。悪気なく、受け身なのです。
作家の城山三郎がかつて本の中で次のような話を紹介しています。ロサンゼルス市警の警官が万引きをした少年を捕まえる、普通ならそこでおしまい。けれどもその警官は少年に「学校へ行っているのか」「家族はいるのか」とか色々尋ねる。そして家に連れて帰った後も近所の人に「あの子のうちはどうなっている」などやはり尋ねてまわる。そうしたことをしていったその警官の名はトム・ブラッドレー。ロサンゼルス市で初の黒人市長となった人物です。
トム・ブラッドレーは市長就任後も週に1回「オープン・デー」として誰でも来て話ができるように市長室を開放していたそうです。読んだ皆さんはきっと「良い話だ」と思うでしょう。でもこれを単なる美談として捉えるべきではないと思います。そこまでしないと人は救えないということでもあるのです。
困っている人は崩れ落ちそうになる気持ちを抱えて混乱しているものです。人は健康な時には病気になった時のことなど考えません。幸せな時にトラブルが起きることなど考えないものです。突然降って湧いたトラブルに混乱している時どうして冷静で緻密な情報検索ができるのでしょう。
公的機関が「待ち」の姿勢でいる限り、どんなに立派な制度があっても、それは「存在しない制度」です。
一方、暗い顔をしている人をターゲットとする人達は大変積極的です。村木厚子さん(元厚生労働省事務次官)が新聞のインタビューでこのようなことを話しています。「家出をして暗い顔をして歩いている女の子に『今日寝るところはあるの』と悪い人が道で声をかける。公的なサービスが間に合わない。」
インドネシア人の知人もこう言います。「一人で公園のベンチに座っていたら寂しそうに見えたのか新興宗教の勧誘が来たので片言の日本語を話して(本当は流暢に話す)逃げようとしたら即座に勧誘パンフレットのインドネシア語のページを開けてきた。」
…………新規勧誘というものはどこでも大変熱心なもののようです。
公的サービスの情報は、人の目に触れるものであって欲しい。そうでなければならない類のものです。「見えないものは存在しない」「知らないものを探すことはできない」のですから。駅のデジタルサイネージでも、IT空間でもいい、時代に合わせて人の目に耳に触れるものであらなければならない。外国人が増えれば外国語でも、やさしい日本語表記でも。それこそが「サービスへのアクセス保障」です。
前述のトム・ブラッドレーはロサンゼルス市長を5期務め(1973年~1993年)、ロサンゼルス五輪も同氏の市長時代だそうです。現在ロサンゼルス空港の国際線ターミナルは「トム・ブラッドレー国際線ターミナル(TBIT)」と氏の名前を冠しています。
-建国記念の日に-
PexelsのTiger Lilyによる写真
お返事遅くなり失礼しました!コメントありがとうございます。
今は自治体の人も親切なので遠慮せず、「まったくわからないので教えてください。今はこういう状況で何をすればいいのかわからないです。」とストレートにいうのがいいかもしれません。(^^)
むしろその方が早いですよ。
お返事遅くなり失礼しました!コメントありがとうございます。
今は自治体の人も親切なので遠慮せず、「まったくわからないので教えてください。今はこういう状況で何をすればいいのかわからないです。」とストレートにいうのがいいかもしれません。(^^)
むしろその方が早いですよ
コメントありがとうございます。
見えないものは心の目など総動員して見る努力をしないといけないですね。