27年ぶりの来日公演のチケットを2年前に購入した。けれどもコロナ禍で2度の延期を経てようやく今週、公演2日目に観ることができた。
初日の新宿文化センターの公演はロシア国営放送やNHKの取材も入り、なかなかに賑やかだったようである。2日目の目黒パーシモンホールの受付やロビーの様子は人数こそ多いけれど予想していたDVDの販売や各種グッズ販売などはなくてかなり当てが外れた。パンフレットも「もう少しページが多くてもいいよね。」と思うほど。花や差し入れは受付で預ける仕組みになっているがそれ専用のスタッフがいるのでもなく、観客がそのままテーブルの上に置いておくだけだった。
思うに27年ぶり、日本での知名度はそれほどでもない中で、もともとアットホームな感じでの公演スタイルだったのがウクライナとの戦争で公演が妙に緊張感漂うものになってしまったのかもしれない。とはいえ、観客はとても嬉しそうにしていた。ロシア人と思しき人たちも4割くらい(?)いて会場はほぼ満席に近い。そこへアナウンスが流れ「1メートルほどの間隔を空けて下さるように…」とお願いをしている。どう考えても実現不可能なお願いでアナウンスに意味があるのか疑問なほど客席は埋まっていた。
公演内容はかなり控えめにいっても「素晴らしい」の一言だ。洗練された動き、確かな技術、華やかさ、美しさ。モイセーエフバレエ団は正しくはバレエではなく、NHKニュース風に表現すると「『民俗舞踊団』、古典バレエと民俗舞踊を融合させた」舞踊でクラシックバレエのキャラクターダンスに近い。今回もロシアに限らずメキシコやギリシア、スペインなど世界各国の民俗舞踊を披露してくれた。
私が心から楽しみにしていたのはブログで何度か紹介した「カルムイク・ダンス」(Kalmyk Dance(前編)(後編))である。残念ながら素晴らしい踊り手だったラミール・メクディエフ(Ramil Mekhdiev)は同バレエ団を一昨年退団してしまい、今はソロで活動している。(ロシア国営放送の「大小」にレギュラー出演中。)今回の踊り手もまた素晴らしかった。メイクの関係もあるのだろうが「鷲メイク」(以前「ハヤブサ」と訳したが今回公演のプログラムで『鷲』と訳されていたので今後はそれに倣う。)でツンとした表情を作っていたので一瞬ラミール・メクディエフにも見える。(ファンとしては幸せなことに。)それはともかく新しい踊り手も素晴らしかった。
凛とした鷲の佇まい、素早い身のこなし、鷲が獲物を急襲し突く様子など十分に表現していた。同じメロディーの繰り返しの中で繰り広げられる美しいターンの数々、魅惑的なステップ。そしてそこから浮かび上がるカルムイクの大地。きっとこれからも成長し悠久の時を刻み続けていくだろう。
私自身とても驚いたことにあんなにも待ち焦がれていたカルムイク・ダンスなのに、コラムを書いたほどなのに、帰宅時の心の中でこのダンスが占める割合がそれほど多くないことに気づいた。なぜなら他の演目も素晴らしかったから。
(モイセーエフバレエ団来日公演2へ続く)