結婚は認めません
知らずに
愛を
下を目指せ
深愛
汚れちまえよ
知らねえと
底を
洗えば良
赤い縄
イケルは横浜は磯子へ来ていた
「結婚はできないってどういうことですか。アキカさん」
「ただ既婚者はハミルENの人間になることができないってことだけだよ」
「どうしてですか」
「家族を築くからだ。婚姻による家族を築いた人間はそちらに集中した方がいいし。血をとるか金をとるか」
「血か金?」
「どちらの紙をとるかの方がいいかな。婚姻届や離婚届と対峙するのか、札の紙を家族の
絆とするのか」
「さっき言ってましたけど、お金の共有化で家縁とするってことですよね」
アキカは少し右上を見上げて右手で襟足に触れた
「ねえ、イケルちゃん。どっちの紙が強いと思う」
「えっ?強い」
「うーん、ちょっと想像してみて。イケルちゃんが結婚していたとして、旦那とは一緒に暮らしてる。けど財布は全く別でお互いの経済状況は何も分からない。相手は知らないところで多額の借金をこさえてたりするかもしれない。
一方、
婚姻や血縁は全くないんだけど、財布は一緒なの。例えば3人だとして。知らない男女がいるとしてね、その2人と稼ぎを合わせて3人同額を配分する。だからイケルちゃんの方が稼ぎが少なかったら、得だし。でもイケルちゃんがいつか大きな額を稼ぐようになればその2人は喜ぶし」
「言ってる意味は分かりますけど、可能なんですか」
「どっちの方が絆が強いと思うかってとこだね。結婚してるけど本当のところはよくわからないみたいな。あるいは財布、つまり経済状況だけは確実に把握している関係か」
「お金のことが把握できてれば安心だとは思いますけど」
「それが資本主義で、財布軸が一番理に適ってる、はずなんだ」
漫画みたいにキョトンとするイケル
「だから僕らの本拠地は愛知の名古屋だけど横浜の俺も家族。財布が一緒だから」
「へ、へえ」
「財布を理解していれば、困った時はみんなで必死になるし、豊かな時はみんなで裕福になる。分かる?財布の理解」
「さ、財布の理解。それが家族ですか」
「そう、家族の定義なんていくらでも破っていい」
「そ、そうなんですか」
「例えば、想像してみて」
「ま、またですか。は、はい」
「イケルちゃんの現在の一般的な家族ね。お父さんとかお母さん。病気になったとかお金がとか」
「はい」
「助けるよね」
「まあ、できるだけ」
「なんで?」
「家族ですから」
「うん、今の"家族ですから"覚えておいて」
「えっ、は、はい」
アキカが顎を摩って生花瑠の目ん玉を直視する
「イケルちゃんの家の隣人がお金貸してくださいって、助ける?」
「えっ、いやそれは難しいです」
「うん、隣のお家の人が介護が必要で面倒看れる?」
「ええ、いやあ、長期的には難しいと思います」
「さっきなんて言った」
「えっ、家族ですから?」
「つまりね、家族だから助けるっていうのは、"家族しか助けません"っていうのと同義な訳なんです」
「家族しか助けない」
「うん、じゃあ家族の定義をどうすればいいですか」
イケルは黙った
大きく大きくするんですよ
生花瑠は湿って
秋火は棒起した
なあ、愛知
だから、つまり
家族を広げるんだ
協力しあう範囲を
且つ
バラバラだ
仲良くなくていい
深く関わらなくていい
一点のみ
金で繋ぐ
最大物質を薄める
そして向かってく
広愛主義
「ねえ、ユーメ」
「うん、イケル」
「汚して」
「なに?」
「初めの一歩」
「けがれ」
汚れを
知らずに
愛を
詠えるか
下を目指せ
深愛
汚れちまえよ
上じゃねえ
深さを
知らねえと
底を
知らねえと
浅愛
けがれりゃ
洗えば良
沈めよ
「ユーメ、おしっこ、かけて」
一番深で広ってこい
赤い縄