関東大震災から100年ということで、今月の読書会の課題本となった
江馬修『羊の怒る時 関東大震災の三日間』(ちくま文庫)
を読みました。読書会のことはまた別途書きますがどんな本かと私の簡単な感想を。
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1923年9月1日に発生した関東大震災の直後から起こった朝鮮人虐殺を軸に描く。「小説」と著者は言っているけれども、東京近郊に住んでいた作家の目を通した体験ルポのような書き方で、紛れもないノンフィクションであると思う。
震災という恐慌状態で人はどれほど流言に惑わされやすく、いかに暴力的に、残酷になってしまうかという集団心理がつぶさに描写されており恐ろしい。直接的な虐殺の場面はほとんど無いが、人間の愚かさ醜さをあぶり出すようなエピソードの積み上げに胸をえぐられる。
一方で、私は100年前はもっと昔のような気がしていたけれど、意外と近代化されており、鉄筋コンクリートのデパートや学校があり、電車や車、子供のおやつにキャラメルなんかもあることを知って軽く驚いた。そこに住んでいた人がその時代を詳らかにするからこその、その時代の風物がわかるのが興味深い本でもあった。
また朝鮮人の学生たちが建物の下敷きになった赤ん坊を助け出す美しい場面もあり、その後の流れを考えると不穏さが増した気がする。