初版発行:2022年2月(ハーパーコリンズ・ジャパン)
最初はあまりにもよくある設定で心配になったけど、いつしか引き込まれて後半は一気読みしてしまった。
ヴァージニア州で自動車修理工場を営むボーレガード(黒人)は経営が傾き倒産寸前。しかも息子の眼鏡や歯科矯正、娘の学費、母親の施設費用の支払いがまったなし。次から次へと追い込まれていく様は、責任ある年代の大人として身につまされた。
結局再び犯罪に手を染めていくのだが、仲間はチンピラばかりで上手く行く気がせずハラハラし通し。案の定、想定外の事態に追い込まれ一層の地獄を見ることになるのだが、ここからがまさにアクセルべた踏みで目が離せない展開になっていた。
主人公は犯罪集団の走り屋(ドライバー)だった父親から大きな影響を受けていて、犯罪を犯さなくても何とかなることや諦めるべきところを、自分の力技でなんとかしようとしてしまう。結局それを“やりたいから”やるんだろう。もちろん、黒人ゆえの“生まれたときから負けが決まってる”という諦念も、選択肢のなさの背景になっていて切ない。
見どころは車オタク的なカーアクションで、ボーレガードが父親譲りの走り屋魂で逃走中が一番自分が活き活きすると自覚してしまうところが皮肉であり魅力的な描写でもあった。
ちなみに車の名前だけでは全然映像が浮かばないのでいちいちネット検索して読んだら面白かった。ドラッグや工具(これで殴ったんか!という驚きがある)の名前、車の細かい部位も調べたらわかった便利な時代〜。
文章でのカーチェイス描写って分かりづらいときもあったけど映像だとたぶん気付かない凄いテクニックとか走っているときの心理状態が分かったのが小説の醍醐味だなと。
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