今年のバレンタインチョコ。
ここ数年は夫の強い希望で、LOTTEの「バッカス」&「ラミー」に固定していたのだが、今年はちょっと趣向を変えてみようと考えた。
隣町にある、老舗のお菓子屋さん。
ずっとずっと前に、ここの手作りチェリーチョコを食べてその美味しさにびっくりしたことを思い出したのだ。
バレンタインデーの数日前に立ち寄ってみた。
以前の記憶から、私より少し年上の女将さんの立ち姿を想像しながら店内に入ったら、出迎えてくださったのはシャキッと背筋の伸びた小柄なご高齢の女性だった。
女将さんというよりは、可憐な看板娘という感じ。失礼ながら私はひそかに心の中で「看板娘さん」と呼ぶことにした。
「なにをお探しかしら?」
看板娘さんは、まっすぐに私を見つめて、上品に仰った。
チェリーチョコを買いに来た旨をお伝えすると、陳列ケースに並ぶそれを指さしながら「これ本当に美味しいのよねー私も大好きっ」と満面の笑みでうなずいた。
そして、
「あのね、口に入れてすぐ噛んじゃ駄目よ。すぐ終わっちゃってもったいないから。一度に口に入れて、そのままゆーっくり溶かすの。そうするとね、だんだんチョコレートとお酒に漬けたチェリーが混ざってね…すっごいおいしくなるのよぉ」
今本当に食べているかのようなうっとりとした表情と素晴らしい表現力で、ベストな食べ方を教えてくれた。
最後に、茶目っ気たっぷりに看板娘さんは言った。
「手作りだからね、一粒ずつ大きさが違うの。よーく見て、大きいの選んでね」
バレンタインデー当日。
夫と一緒に、チェリーチョコを食べた。大きめのものを選んで買ってきたためか、一口で食べるのはちょっと大変だったが、もちろん看板娘さんおすすめの食べ方で
美味しいひとときを満喫した後の夫の言葉。
「本当に美味しいね!来年のバレンタインもこのチェリーチョコがいいな」
看板娘さん、来年もよろしくお願いします