徒然RO人記

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つんでれーな

2007年09月11日 18時57分43秒 | ショートストーリー
「はい、お弁当」
 ぶっきらぼうに言い放ち、明日香はガチャンと乱暴にテーブルに置いた。
「おう、サンキュー」
 明日香の方を振り返りもせず、テレビを見続けながら真一は答える。
「か、勘違いしないでよね! おばさんに頼まれたから仕方なく作ってやったんだから!」
 努めて冷静に明日香は言う。
「そんなの分かってるよ。何で今更、わざわざ言うんだ?」
 ここで初めて、真一は振り替えった。
 腕組みして仁王立ちしてる明日香を、座敷に座ってる真一が見上げる形となる。
「な、何でって……」
 思わず口ごもる明日香。我知らず、顔がカーッと熱くなる。
「お前、顔赤いぞ? 熱でもあるんじゃないのか?」
 不意の優しい言葉に明日香の頭は混乱する。同時に怒りがこみ上げてきた。
「……かん……」
「え? 何だって?」
「この、鈍感男って言ったのよ!」
 言葉と同時に足が出た。しかし、真一を狙ったキックは見事に空を切り……。
 ドスン。
 勢い余ってバランスを崩し、見事に尻餅をつく。スカートがめくれ……。
「ごくり」
 真一が唾を飲み込む音がやけに生々しく響いた。
「ば、ばか! どこ見てんのよ!」
 自分の状態に気付き、慌てて明日香はスカートを元に戻す。
「ゴ、ゴメン。それより、結構デカイ音したけど大丈夫か?」
「大丈……痛っ!」
 起き上がろうとする明日香は苦痛に顔をゆがめる。
「無理するなよ。俺が連れてってやるから」
 言って真一は、軽々と明日香を抱え上げる。
「あ、ありがとう」
 明日香は声はボソボソと小さい声で言って、ぎゅっと真一にしがみついた。