市川町の岩戸神社には、寛政八年の造立とわかる石像の狛犬があります。また、同じ市川町の小室八幡神社には、それよりもやや古い安永四年の狛犬があります。これらの狛犬には、明治時代以降のものとは異なり、それぞれ明確な個性が見られます。神社に置かれる石造狛犬も明治時代になると同じ工房で大量生産されたと思われる似た造形の狛犬が増えてくるのです。それに比べるとこれらの江戸時代の狛犬には、それぞれ異なる石工の個性が出ているのでしょう。小室八幡神社の狛犬も岩戸神社の狛犬も、どちらも抱えて運べそうなほどの大きさで、背の高い基壇に置かれたものでもありません。極めて身近に接することが可能な場所に奉られているのです。しかし、その造形は丁寧で、バランスがとれたものです。小室八幡神社の狛犬には、台座に半次郎という石工の名前と花押のような紋様が刻まれています。名の通った石工なのかもしれません。岩戸神社の狛犬では、台座にそのようなものが見当たらないですが、優れた技を持つ石工の手になるのは間違いないでしょう。
30秒の心象風景29920・本殿脇の狛犬~岩戸神社~
https://youtu.be/g4NlGQSAw1A