タイトルは深川萬年橋。絵の中心に描かれたのは紐で吊された亀。遠景には富士山が見える。川を帆掛け船が通り、近くには竿を持つ船頭が見える。江戸文化を何も知らずに見たときこの絵は謎だらけである。思いつくのは萬年橋と亀。「鶴は千年、亀は万年」という言葉だろうか。紀元前120年ごろ書かれた中国の書物「淮南子(えなんじ)」が出典の中国の古い言い伝えだ。しかし、この絵のキーワードは「放生会」である。放生会は、「不殺生」を守り、功徳を積むという仏教の儀式。神仏習合の時代には全国の八幡宮で行われていた。深川の富岡八幡宮では、旧暦8月15日(中秋)に盛大に開催され、毎年多くの人が集まったといわれる。放生会では捕らえられた魚や鳥獣を自然に放つので、夏になると「放生」のために、わざわざ動物を捕まえて売る露店が現れたのである。亀は夏の放生会を示していたのである。萬年橋では亀を売っていた。そこは「亀は万年」という粋なのだろう。
30秒の心象風景17960・052深川萬年橋~名所江戸百景~
https://youtu.be/aLnMSb8n-TE
30秒の心象風景17960・052深川萬年橋~名所江戸百景~
https://youtu.be/aLnMSb8n-TE