相模湾沿いにわが家から車を走らせれば1時間ほどで着くのだが、電車で行くとなると2時間近くかかってしまうのも二の足を踏ませた理由の一つでもある。
それが今回突如思い立ったのは、何より前の晩に宿泊したところから車で5分ほどの至近距離であるという僥倖があったからで、駅前に車を置いてバスでにじり寄れば簡単である。
しかも妻の方から「行ってみようよ」というものだから話はなおのこと早いのだ。
「小網代の森」
バス会社が出している三浦半島観光マップには「源流から干潟までの連続した流域が丸ごと残る関東唯一の森」であり「森に雨が降り川となって湿地、干潟、海へと姿を変えて流れる『流域』のランドスケープをわずか1.2キロのなかで一挙に見ることのできる70ヘクタールの貴重な森。この〝完結した自然状態の流域生態系〟には森に住むアカテガニに象徴される約2000種の多様な生物が息づく」と表現している。
ボクがこの森の存在を初めて知ったのは1972年に社会人となった直後である。
この森にゴルフ場計画が持ち上がったのがそのころで、当時それがニュースになったりしたのが知りうるきっかけである。
その後紆余曲折をたどり、ゴルフ場開発計画が消えかかると今度は電鉄会社が油壷までの路線延伸を計画し、この森を突っ切ろうと目論んだりもした。
当時の長洲一二県政は一貫して煮え切らない態度をとっていたのだが、この間ずーっと続いていたこの森の大切さを理解していた人々による熱心な保全運動によって計画は遅々として進まず、結局1995年になってようやく県が保全の方針を示し、その2年後辺りから「かながわトラストみどり基金」による土地の買い取りが始まったのだった。
そうして一般に開放されることになったのはわずか4年前の2014年なのである。
かくして残された森に初めて足を踏み入れたのだ。
引橋入り口から森に入っていく
歩きやすい階段が用意されていた
グネグネとどんどん下りていく
まるで原生林
しばらく進んでいくと足元にシダ類が目立つようになる
水の流れがしっかりしてきた
足元のシダ類が消え、より明るいところに出る。倒木から幾本も若木がすっくと伸びている
こっちにも。湿地に目立つジャヤナギで、生命力が強いんだそうである。夏の太陽に若葉が輝いている姿が印象的だった
木の間越しに小高い丘が見えた。あの丘の向こう側に海が広がっているはずだ
丘の足元には広々としたヨシの原が広がる
前方の木立には軽やかなリズム感が
さらにヨシ原を行く
オオシオカラトンボ
おっ、潮の香りが
干潟が見えた! 小網代湾の干潟だ
道端の目立つところにヤマユリ
干潟に近づく
小さなカニが出てカニダンスの真っ最中。潮が引いて干潟が現れるとオスがダンスを始める。求愛と縄張り主張の2つの意味があるとされているがまだ解明されていない動きもあるとか。干潟で一斉にこれが始まるとなかなか愉快ではある
この森には森に住むアカテガニが有名だが、見かけなかった。木を見て森を見ずと言うが、木と森に気を奪われて小さな生き物になかなか目が行き届かなかったということだろう。次の機会だ
たどってきた森を振り返り
干潟に別れを告げる
白髭神社を経てシーボニア入り口バス停からバスに乗った
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heihoroku
高麗の犬
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