「あれっ、熊さん、新聞読みながら何をそんなに怒ってるんですか」
「おう、八じゃねぇか。どしたい」
「やだなぁ、聞いてるのはこっちですよ。頭から湯気立てちゃって、何が気に食わないんですか」
「気にくわないもなにもやり方がでたらめなんだよ。正気か駄キシは」
「駄キシって何の事です?」
「鈍いな、おめぇ、首相のキシダのことだよ」
「駄キシっていうんですか。初めて聞いた」
「とことん駄目な岸田って意味だよ」
「なるほどねぇ。そいつはイイや。でも何が気に入らないんです」
「あのな、防衛力を整備するんだってよ。それもこれまでGDP比1%だった予算を倍の2%にしちまうんだってよ」
「ウクライナのこともあるし、ある程度守りを固めるのは当然でしょ。北朝鮮も中国も軍備拡張路線を突っ走っているんだし…」
「おう、八もちっとは世界情勢に目を向けてるようじゃねぇ~か」
「茶化さないでください」
「しかしな、だからってどこにそんな金があるんだ。日本は既に1000兆円を超える借金を抱える世界でもまれな最悪の借金大国なんだぜ。その上さらに防衛力増強を借金でやればいずれ破綻しちまうぜ」
「なるほど…」
「いいか八、駄キシは増税も口にしてんだよ。でな、耳の穴かっぽじってよく聞きな。自民党の役員会で説明する際『国民は自らの責任として対応すべきだ』と言い放ったんだよ。いったい何様のつもりだ。そもそもオレはそんなこと頼んだ覚えはないし、頼むつもりも金輪際ない」
「えっ、そんなこと言ったんですか。オレだって何も頼んじゃいませんけどね」
「おうよ八、よく言った。その通りだ。オレたちゃ『テキキチコウゲキノウリョク』なんて整備してほしいなんて一言も言ってないし、敵が1発も撃っても来ない前から相手の基地を攻撃するっていうんだから開いた口が塞がらないってのはこのことだ」
「エッ、そうなの。日本はセンシュボウエイでしょ」
「おう八、良く知ってんじゃねぇか。その通り。日本は専守防衛が国是だし、憲法9条があるんだから相手国を先に攻撃するなんてことが出来るわけがない。それをやっちまおうってんだから乱暴な話だ」
「熊さん、こういうこと国会で議論になったっけ?」
「そこだよ八、『GDP比の1%以内』という防衛費の枠組みがあったんだが、それを何の議論も無く取り払って一気に倍に増やしますってことも、専守防衛の枠からはみ出して敵の基地を攻撃するってことも、なぁ~んにも国会での議論は無し!」
「どうして、そんな重要なことが勝手に決めらえるの?」
「だろっ。議論も何もしないでいきなり方針を決めて、それに合わせて予算を確保して…。まったくおかしなことだぜ。防衛費の倍増も敵基地攻撃能力の保持も衆院選の争点として国民の審判を仰がなくちゃいけないテーマだぜ」
「しかも、増税分については『国民自らの責任として対応しろ』って上から目線で偉そうに言われる筋合いは無いよね、熊さん」
「あたぼうよ、今だってたっぷり税金取られてるんだ。さらに出せって…いうんだから開いた口が塞がらない。これじゃまるで日本が専制主義国家になっちまったのとどこも変らないぜ。プーチンやキムジョンウンと駄キシがどう違うってんだ」
「熊さん、最近、原発を巡る動きもおかしいよね。新増設は認めちゃうは、老朽化しているはずの原発の運転年数は大幅に延長するは、あの大震災を機に原発に頼ることを見直したはずなのに、こっちも国会での議論も無く勝手に決まってしまった」
「国民の大多数は依然として原発反対のはずだぜ。ちゃんと民主的な手続きを踏んで、十分議論したうえで結論を出してもらいたいもんだ。そうしなくちゃいけない重たいテーマばかりなのに…」
「だよね、熊さん」
「駄キシのヤロー、何か考え違いしてんじゃないのか。ソーリダイジンは専制君主と一緒で絶対的な権力を握ってるんだ…とか。こんなヤツ、辞めてもらうしかないぜ!」
「同感だよ。でも、3人の欠陥大臣を止めさせるのにも右往左往してなかなか決断を下せなかった男だ。ましてや自分の事となると何も決められないんじゃない?」
「いやぁ、国民の声や怒りを無視できるわけがない。自分で決断できなければ野垂れ死ぬだけさ」