大きな森の奥深く、ひっそりと数本のキリの大木があって、そろそろだろうと3、4日前に花を見に行ったのだが、まだ少し早すぎた。
その森の奥から出て平らなところまで来てみると、道に沿って薄紫と水色のまじりあった見た目も涼やかな花がたくさん咲いている。
これまでにも見たことのある花だが、名前は知らなかった。
グーグルレンズを使って調べてみると「セリバヒエンソウ」と表示された。
名前は聞いたことがあった。
「ヒエン」って聞くと、昔の戦闘機につけられた「飛燕」を思い浮かべる。
流線形のスマートな体を持ち、「ツバメ返し」で知られる高速ターンの達人であるツバメの事だ。
どんな花だろうと思っていた。
そもそもこの花を見るのは初めての事ではない。
以前から名前は知らないけれど、咲いているのは知っていた。
…それが、初めて存在と名前が一致したってわけである。
「そうか、キミがヒエンだったのか♪ 」
良い名前だと思った。
名前を知ってその姿がますます気に入った。
名前の通りじゃないの♪
ツバメの飛ぶ如く
颯爽とした姿…
「セリバ」は葉がセリの葉に似ているから
軽やかで涼やか…まさに初夏の装い
♬ 卯の花の にほふ垣根に 時鳥 早も来鳴きて 忍音もらす 夏は来ぬ
小学唱歌「夏は来ぬ」には本歌があって鎌倉末期の女流歌人・永福門院による「ほととぎす 空に声して卯の花の 垣根も白く月ぞ出でぬる」がそれ
「夏は来ぬ」の作詞者佐々木信綱はこの永福門院の歌に着想を得て歌詩を書いた
やぁ♪
この花が咲き出すと夏がやって来てホトトギスのけたたましい鳴き声が昼と言わす夜中と言わず天空にこだまする
その初音をボクは今や遅しと待ち構えているところ
国語辞書に寄れば「初音」と書いてその鳥を指すのはウグイスとホトトギスのみで、その鳴き声は日本人にとって懐かしくも待ちわびる存在なのである
「目には青葉山時鳥初鰹」の前書きには「鎌倉にて」と書かれている
ホトトギスも初ガツオもまだである
ニセアカシヤの白い花も高いこずえの先で咲き出した
近所にこの木が街路樹のように連なっているところがあって、満開になるとその下を通るたびにむせ返るような甘い香に包まれ「あぁ、夏が来たな♪」と思う
ニセアカシヤの花の下で少年が父親にバッティングの特訓を受けている
鯉のぼりを泳がせる柱の先で回っている矢車と同じ名前の花が咲き、空には薫風を受けて凧が揚がっている
端午の節句に欠かせないのはショウブだけれど、代わりに兄弟分のアヤメをどうぞ