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平方録

"花"の正体

初音を求めて近所の尾根道や藪のある木立の中を歩いていると、裸木の中に妙に艶っぽく見える木があるのに気付く。

枝一杯に付いた葉芽を膨らませていて、その芽がオレンジ色というか、明るい茶色というか、とにかく青い空に映えて明るく輝いているのが"艶っぽく"感じられた理由だと思う。

葉芽そのものの形もまたシャープで、それだけでも軽やかに見えて近づく春に心躍らせているようにさえ感じられる。

他の木々だって春を待ちかねているのだろうが、ここまで軽やかな雰囲気を漂わせて準備を整えているものはないんじゃないか。
 
この木は秋の紅葉もまた一目置く存在で、葉がきれいなオレンジ色に染まるなど、周囲のケヤキやコナラなどの黄葉と比べてとても華やかである。
何の木だろうと思って過ごしてきた。
 
愛いやつ♪ と思いながら近づいてみると、春を待つ葉芽の間に"妙なもの"があちこちについているのに気付く。
最初は地味ながら花かもしれないと思った。
例えば、わが家にあるカツラの木の花は赤くて細い糸くずをぶら下げたような、如何にもみすぼらしく憐れで、とても花には見えないシロモノが花だという。
このように、大自然は時として意表をついてくるものなのだ。
目の前にあるのはカツラの花より見た目はもっとみすぼらしく、埃や糸くずなどを丸めたような、見た目もさえない灰色をしたもやもや状の塊である。
ネットを使って調べてみると、何とこれは花に非ず、虫こぶなのだという。
樹種は「アカシデ」というらしい。
花に見えたのは「フシダニ」というダニがアカシデの葉芽に取りついて作る「アカシデメムレマツカサフシ」という虫こぶなんだそうである。
このダニに取りつかれると枝は短縮し、多くの芽が集まってマツカサ状になるそうで、一芽の中には50匹程度のフシダニがいるそうだ。
もちろんこのダニに取りつかれた芽が開くことは無いそうだ。
人の世で美人に悪いムシがついたら一大事だが、大自然にあって見目麗しいアカシデにムシがついてしまったというわけか。
いやはやなんとも…な世界がここにもあった。
 
虫こぶで思い出したが、数年前、庭のバラの葉っぱの上に金平糖が乗っていて、揺すっても落ちないので「あれっ?」と思ったことがある。
近づいてみると薄茶色をした丸い物体で、短い突起状のものがたくさんついているので、どう見ても金平糖なのだった。
「バラハタマバチ」という小さなハチの幼虫が中にいる「バラハタマフシ」という虫こぶだった。
この金平糖の中に幼虫が一匹だけ入っていて、周囲の金平糖を内側からかじりながら成長し、食べるところが無くなるとポトリと地上に落下し、成虫へと脱皮していくらしい。
バラにも人にも害にならないそうで、人畜無害じゃなくて人植無害なので放っておけばいいのだが、あれ以来一度も見ていないということは、バラハタマバチとやらが絶滅したか激減したか、いずれにしても環境の変化にさらされているのかもしれないと思うと、いささか心配である
 
 
最高気温が2日続けて19℃前後にまで達し、昨日は「春一番」が吹いて一気に春めいてきたが、初音はまだ届かない。
 
 

軽やかなリズムを感じさせる「アカシデ」の葉芽

魚の鱗のような芽鱗(がりん)にがっちり守られてはいるのだが、ダニには弱いらしい
 

これ、何に見える?
ボクは最初、花に見えたのだが…
 

梢のあちこちに「アカシデメムレマツカサフシ」という虫こぶの"花"が咲いている


 
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