八っあん「おや、ご隠居さん、あごをさすりながら何をそんなしきりに頷いてるんですかい ? それもたった1人で」
ご隠居さん「おや、八っあん、おぉ熊さんも。いや何ね、ラジオのニュースを聞いていたんだよ」
熊さん「なんかありましたかニュースが ?」
ご隠居「まだ知らないのかい。あのな、アメリカ大統領の45代がな、さんざバカにした挙句、国民の728万人に感染させ、20万人もの命を奪ったコロナにな、自分が感染しちまったんだよ」
八「ひぇ~、たまげたね。じゃ何ですかい、隔離されて誰にも会えなくなっちまったんですかい大統領が。そりゃ一大事だ。でぇ~ち大統領選挙の投票日は来月初めでしょうに。2、3日前ぇ~に討論会とやらで2人で罵り合ってるのをテレビのニュースで見ましたぜ」
ご隠居「うん、確かにな。討論会はあと2回行われる予定だが、今のところメドは立っておらんようじゃ。ただ45代の主治医は一緒に感染が判明した夫人ともども症状は軽いからホワイトハウスで過ごすと言っておるな」
熊「ご隠居、大統領の主治医の話なんか真に受けていいんですかい ? 」
八「そうそう、でぇ~ちアメリカの大統領は世界最強軍隊の最高司令官でしょ。核のボタンも支配している最高司令官が息も絶え絶えになっちまうコロナに感染したとなれば、敵対国はここぞと攻撃してきやせんか ? それを予防して煙幕を張ってるだけじゃねぇ~んですかい ? 怪しいもんだ」
ご隠居「驚いたね。八っあんも熊さんのオトナになったねぇ。そういう分析ができますか。まぁ当たらずとも遠からずかもしれませんな」
熊「でしょう。でもご隠居、俺らに感心しているより、ご隠居が顎をさすりながらしきりに頷いていたのはどうしてですかい ? おいらたちにも教えてくださいよ」
ご隠居「そのことか。いいだろう。あのな、お前たちも知っているように今度の大統領選挙で45代は民主党の候補にリードを許していて劣勢なんじゃよ。それで巻き返しを狙って討論会に臨んだんだが、相手の発言中に自分が話し始めるは、相手を中傷するはでシッチャカメッチャカになっちまったじゃろ。挽回どころか、野球で言えば失策に凡打の山じゃ勝てんわな。挙句に司会者から郵便投票の結果を尊重するか聞かれて、うんとは答えなかったじゃろ」
八「確かに、今度の選挙はコロナ禍で行われるから投票所に出向くのを嫌がる有権者が多く、郵便投票が増えそうだってんでしょ」
熊「加えて相手陣営の民主党支持者に郵便投票を選択する人が多いから相手が有利になるのが嫌で、あんなのは不正の温床だってんで45代は駄々こねてるそうじゃねぇ~ですかい」
ご隠居「2人ともよく知っておるな、感心感心。その通りじゃ。このままいくと相手候補が当選しちまう勢いだが、45代が負けを認めなければ結果は宙ぶらりんになっちまうのがアメリカの選挙の仕組みだそうじゃよ。だから、当選者がすぐには決まらないという危惧が今から出ているんじゃな」
熊「何ですかい、世界で最も民主的な国だと思ってましたが、そんなレベルなんですかいアメリカって? 郵便投票が信じられないって…自分たちで決めた制度でしょうに、呆れたね。発展途上国並みじゃないですかい」
ご隠居「それでだ、わしが頷いていたのはな、そんな状態になったらそれこそ世界中の笑いものじゃ。同盟国だってガッカリじゃよ。それよりなにより敵対国がどんな行動に出るか分かったものじゃない。隙を見せたらイカンのじゃ。その辺のことは側近連中が良く分かっていて、すごく心配しているとワシはにらんだな」
八、熊「ふんふん、それで ? 」
ご隠居「側近たちは万が一の権力の空白を恐れているんじゃよ。45代が負けを認めないで駄々をこねていたら国防のみならず経済的にも国際信用の面からもアメリカの国益を損なうのは明らかじゃ。だから敗北の理由を用意し始めたということじゃよ」
八「ははぁ~、じゃなんですかい、側近たちは45代が負けたのは相手候補にじゃなくて、選挙活動の重要局面でコロナが45代を妨害した。それが最大の敗因でコロナのせいで負けたのだからしょうがないと納得させようってことですかい。45代もそれならしぶしぶ認めるだろうと…」
熊「ふぅ~ん、そんなもんですかねぇ、何とも世話の焼けることですねぇご隠居」
八「じゃ、45代が感染したのは側近がわざと…」
ご隠居「シッ ! むやみなことをいうもんじゃない。証拠は無かろう ?」
八「ヘィ、どうもすいやせん」
ご隠居「しかし何じゃな、感染経路がどうだろうと、世界最大の強国といわれる国の大統領が大事な大事な選挙選終盤に、事もあろうにコロナに感染して選挙運動が出来なくなるというのはお粗末極まりないな。その程度の危機管理能力と危機管理意識しか持っていないということであれば、そもそも大統領の資格はゼロということじゃよ。アメリカ国民はこれ以上選挙運動を見なくても大統領に相応しくないのがどちらか、一目瞭然のはずじゃ」
八、熊「ご隠居の言うとおり !」