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平方録

カネくれるならオレにくれよ

「つぎの駅で後から来る特別快速に道を譲ります」

先日、急に思いついて熱海まで乗った電車内でこういうアナウンスを聞いて「へぇ~っ !? 」と思った。
同じシチュエーションで聞くアナウンスは大概「後から来る特別快速を先に通します」とか「特急列車の通過を待合せます」だろう。
良いとか悪いとか間違っているとか正しいとかではなくて、「道を譲ります」という言い回しがJRの列車内で初めて聞くものだったので、へぇ~ !? と感じたのだ。

「先に通します」や「通過を待ち合わせをします」はいかにもその通りで味もそっけもなくて事務的な表現なのに対し、「道を譲ります」という表現は何となく柔らかくて文学的な響きがあると言っていい。
別に車内アナウンスに文学的表現を求めるつもりはないが、この表現を2度も繰り返す車掌って、どういうヒトだろうと思ったのだ。
ボクとしてはこのアナウンスに好感を持った。

ただ、2度重ねる必要はない。
「道を譲ります」と言った後の念押しの場合は「通過待ちのための停車時間は〇〇分で、発車は〇〇分です」とした方がスマートなうえに完璧だったろう。
情報提供としてもその方が親切である。

ジジイという人種、いやボクだけかもしれないが、一旦持ち上げておいて直ぐにアラを探してけなすって、ホント嫌みはヤツ。意地悪ジジイだ。

もう一つ感じた「へぇ~っ ?! 」がある。
名物・熱海餃子の店内でのこと。
ボクが座ったテーブルの隣の30代と思しき男女2人連れ。ボクが席に着いた時にはほぼ食べ終わっていた。
すると奥からようやくヨチヨチ歩きができるようになった女の子が出てきた。続いて3歳くらいのお姉ちゃんと父親。
さらにもうひとり5歳くらいのお姉ちゃんとその母親。どうやら3姉妹と両親で食事をしていたらしい。

驚いたのは男がそのヨチヨチ歩きの女の子に折りたたんだ千円札3枚を渡そうとしたことだ。
ヨチヨチ歩きの子はきょとんとして受け取らなかった。当たり前だ!
すると2番目の子に「あげるよ」と差し出すと、少し知恵がついているのだろう、直ぐに受け取った。
よほど厳しくしつけられた子でなければ「あげるよ」と言われたものに手を出すのは自然で仕方ないこと。
すると父親は事態を理解しているのかどうか「どうもスイマセン」と言い、母親は一瞬ためらったようだったが、やはり「ありがとうございます」と言ったのだ。
そして長女が握っていた飴玉を一つ「これお返し」といって男性に渡すと、男性はちょっと苦笑いしながら「ありがとう」と言って受け取る。

ボクは何が何だか分からなかった。
最初は知り合いかと思ったのだ。でもそうだはなかった。見ず知らず 同士 !
ちょっと訝った母親に男性は「可愛かったから」と言った。
可愛かったらむき出しのカネを差し出すのか?
日本人って、そんな人種だったの?
まさか温泉地特有の風習で、この町ではこうやって札びらが行きかうの? まさか。
つぎは「可愛かったから勝手に連れて行った」ってことになるんじゃないか。大丈夫か。
そこまでしない? 分かるもんか。

父親はともかく、ためらった母親にすれば到底受け取れる筋合いのものでないことは直感したんだと思う。
だが、その場で突っ返すことを躊躇したことに現代の世相がにじみ出ているような気がしてならない。
角が立つことはしたくないのだ。
筋は通らないが、その場を収めるためにはやむを得ない。なるべく波風を起こさないようにしたい。それも出来るだけ簡単な方法で…ということなんだろう。
触らぬ神に祟りなし、ってところだろうか。

相手を傷つけないように断るのが面倒だってのは分かる。
でも、断ってほしかった。
乞食じゃないんだ、失礼な。見ず知らずの人にむき出しの金なんか渡すな !
嫌なものを見せられちまったぜ。

この先雨が続きそうだというので、太陽光線を身体の奥まで充填しに湘南海岸を自転車で走って来た
パラグライダーの練習をしているお兄ちゃんがいた。おっかなびっくり、ちょっと地面から足を離してすぐ着地の繰り返し。そう、千里の道も1歩から

つかの間の晴れ間。突き出した堤防の上で固まって昼ご飯 ?

海辺に咲く花。何の花?
見出し写真は今朝04:07の東の空。なんか怪しげ
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