今年の夏の特徴なのだろうか、例年に比べるとセミの鳴き声が大人しいような気がする。
特にミンミンゼミとアブラゼミ。
ミンミンゼミの少し鼻にかかったような、しつこいとも形容できる長い鳴き声は聞くだけで汗が噴き出るし、油照りの日盛りに耳鳴りのようにジィージィーと押し寄せるアブラゼミの鳴き声もまた、暑さを実際の温度以上に倍加させるに十分である。
印象的なのは終戦記念日で、正午の黙とう時間に世間で聞こえる雑音がすべて止むようなときでさえ、"我関せず"に鳴き続ける両者の鳴き声は鎮魂の場を厳粛にする効果音として、これ以上のものはないかもしれない。
そのミンミンゼミもアブラゼミもセミ時雨はおろか、使い古された形容詞のような「降るように」は鳴かず、鳴いてもたった1~2匹が細々と鳴く程度だから、暑さを演出するどころか、「おぉ、珍しや」と思うくらいで、誠に寂しい限りだ。
朝夕に海辺に寄せる波のように高くなったり低くなったりを繰り返しながら聞こえる「カナカナカナ」という、ヒグラシの時には物悲しくさえ聞こえる澄み切った鳴き声は健在だが、それでも今年は心なしか弱いような気もする。
こうした傾向が普遍的なものかどうか、ニュースとして見聞きした覚えがないので、ひょっとすると我が家周辺だけの局地的なものか、はたまたボクの耳の調子でも悪いのかもしれないが、真相を知りたいところだ。
一方、この暑さのせいかどうか知らないが、美声は美声なのだが、「どうよ、あたしのこの美声」とばかりに、甲高い鳴き声でのべつ幕なしに大音量で鳴き続ける迷惑な鳥の鳴き声が、8月の声を聴いた途端…と言っていいくらいの時間軸でぴたりと聞こえなくなった。
それまでの7月までは、パソコンを置いてある部屋のすぐ目の前のカツラの木にとまって、ブログを書くボクの邪魔をしにやってきた。
鳴きだすと同時にベランダに出ると、すぐ逃げていくほどの臆病者だが、いたちごっこが続いていたのだった。
それが、7月の半ば過ぎからはさすがに学習したらしく、「カツラに近寄るのは危険だ」と理解したようで近づかなくなったが、周辺の電線や近所の家の木にとまって、懲りずに大声を張り上げていたものだった。
犯人は「ガビチョウ」。漢字で「画眉鳥」と書く。
目の上に白い線があり、眼鏡をかけたようにも見えるヒヨドリくらいの大きさの茶色の鳥で、お世辞にも美的とは言えない。
お隣の大陸で鳴き声を愛でるための鳥として人気があり、それが輸入さたものがカゴから逃げだし、南関東を中心に生息域を広げつつあるようである。
特定外来生物に指定され、侵略的外来種ワースト100定種にもなっているから、駆逐すべき侵略者なのである。
そのガビチョウが、どういう理由か、このところ鳴りを潜めている。
いい塩梅なのだが、理由を知りたいと思う。
ミンミンゼミもアブラゼミも、そしてガビチョウも、この夏のモーレツな暑さにひれ伏してしまっているのかしらん。
4:43の東の空 今日も暑くなりそうだ
ガビチョウ(ネットから写真を拝借)