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平方録

どこにも物好きはいるものなのだ

多分そんなもんだろうなと思っていたが案の定だった。

台風一過後の円覚寺日曜説教坐禅会。
午前9時開始だから比較的遅めの設定なのは、遠方からの人を含めて電車バスを乗り継いでやって来る善男善女に配慮してのことだろうとは思っていた。
しかし、実際に門前に停車する横須賀線の電車が止まったままの昨日は、会場の大方丈に集まれたのは普段のたった2割くらいに過ぎなかったのだ。

特に第2日曜日の昨日は横田南嶺管長の法話が聞ける日で、坐禅はしたくないが法話だけ聞きたいという人が大挙して押し寄せる日である。
だから毎回500人を超す善男善女が大方丈とそれに続く書院を埋め尽くしてじっと耳を傾ける。
説教の開始時刻に遅れでもすれば、話をする管長の姿が見えないようなところに座って声だけ聴いて帰る、というようなことにもなりかねない。

それが昨日は100人くらいはいただろうか、いやもう少し少なかったのではないか、と感じるくらいの寂しさだった。
横田管長も法話の枕に「私が如何にJRの売り上げに貢献していたか、改めて自覚させられましたナ」と言って笑わせるほど。
法話終了後の坐禅会に至っては32人しかいなかった !
普段は大方丈の広い畳の上だけでは収まらず、方丈を囲む廊下や隣の控えの間にまで坐禅する人であふれるのが嘘のようである。
境内に観光客の姿はなく、従って坐禅する様子を物珍しそうにのぞき込むような人影も皆無で、実に静かな環境の下で坐れたのは思いもよらないことではあった。

幸いなことに境内の諸堂に被害はなく、三方を屏風のように取り囲んだ山々のごく一部の大木が風になぎ倒された程度だそうで、その後始末をするチェーンソーの音が数か所から聞こえて来ていた。
吹き飛ばされたり、ちぎれ飛んできて境内を汚していた樹木片などは、早朝から修行中の雲水や寺男たちが清掃に励んだため、普段と変わりない清潔な境内が出現していたことも、何事も修行という禅寺ならではの気持ち良さと言っていいかもしれない。

法話の中身は毎回、その日中にネットの「円覚寺居士林だより」にアップされるから、諸般の事情で聴きにこられなかった人でも視聴できるようになっている。
教義を広めるのも管長の大事な役目なのだ。
かくして、物好きが集まる説教坐禅会参加という、限りなく珍しい体験をさせてもらったのだった。
ちなみに、土曜坐禅会や昨日早朝の仰天坐禅会は中止になったが、管長が登場する法話の場はどんなことがあっても中止されることはないそうだ。
例え聴衆が1人もいなくても説法・法話は中止にしないのだという。
そう言う話を管長の口から以前に聞いたことがある。
禅寺の管長の法話というのはそういうものであるらしい。


法話開始30分前の大方丈は人の姿もポツリポツリ…
見出し写真は坐禅終了後の11時過ぎに境内雲頂庵付近から見た富士山

普段は観光客でにぎわう円覚寺境内はガランとしていた

総門下の白鷺池のほとりにあったスギが風でなぎ倒されていた


土曜日から電車の運行が止まったままの線路には赤さびが浮いている
画面奥が北鎌倉駅

国道134号線は車の通行止めが続いていたお陰で道路の真ん中を突っ走らせてもらった
鎌倉市内に入り込む車の数も少なく、円覚寺から稲村ケ崎まで、自転車で15分程度で到着してしまった ♪


8月13日の高波で足元の砂がえぐられ、国道134号の歩道が通行止めになっていたが、今回の台風の波浪によってさらに事態が進み、遠目からでもかなり沈下してしまっているのが分かる


応急工事で何とか小康を保っていたが、さらなる応急工事が行われていた

その歩道沈下場所から西に100mほど寄ったところでも歩道のフェンスが波でえぐられ崩落してしまっていた
この七里ヶ浜の浜辺はボクの若い頃には写真に見えている倍はあったのだが、この40年の間に侵食されてやせ細り、波が届くようになってしまったのも崩落の理由である
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