梅雨の真っただ中で雨雲が低く垂れこめるからというのが最大の理由なんだろうが、加えて学校に通ったり現役時代のように仕事に没頭しているような時に「おっ、今日は夏至か」と思うようなことはあっても、一年の内で最も長い昼間を楽しみ味わうなんてことはついぞなかったのだ。
それが古希を迎えようとしているこの年恰好になると天体の運行にかかわる大自然のリズムに身をゆだねようという気になり、太陽が一番高く上がった時の角度が78.1度なのだと知れば「ふむ、脳天の辺りから太陽が光を送ってくるのだな」などと思いを巡らし、広いところに出てそれを実感しようと思うのである。
しかし、昨日も日が昇る前から雨が降り続いていた。
昼近くになってようやく雨脚は止まったが、太陽が沈み残光が差し込むころにようやく青空が戻ったものの、ずぅ~っと曇り空だったのだ。
妻も出かけてしまった。ボクに予定は入っていない。しゃぁない、海を眺めながら温泉にでも浸って来るか…
尾根道をたどって歩けば4、50分で着くのだが、何せ雨模様である。車を10分少々転がし稲村ケ崎の付け根にある「黄金の湯」に行く。
ボクが入るのと入れ替わりに2人ばかり上がっていったので、湯に浸かっているのはボクと先客の青年一人だけになった。
海は穏やかに凪いで見えたのだが、岸辺近くでは相模湾では珍しいくらい波が盛り上がって浜辺に打ち付けていて、国道134号線はしぶきで霞んで見えるほど。
何ともちぐはぐな感じなのがいかにも梅雨時の空気感を現しているようで、これはこれで悪くはない光景である。
雲が高くて風景全体が明るく感じられるところがイイのだ。
2階にある浴室の窓はすべて開け放たれて露天風呂のような趣なので、すぐ脇を通る国道の車の音も聞こえるが、浜に寄せる波音も又耳に届く。
こうした音を聞きながら湯に浸っていても俗事の取るに足らないことは次々と浮かぶがが、努めて頭の中を空っぽにしようともがくのだ。
なぁ~んにも考えないでいる状態に持っていきたい、自分の呼吸だけに集中する……
なんてことを思い始めると、これはもう坐禅の世界の話になってしまうのだが、誠に邪道な話で恥ずかしい。
だがしかし、湯にじっと浸っている間というのは、考えてみれば沈思黙考の時間でもあるのだ。
もっとも何かにひらめいたとしても、結局はふやけたものになるのが関の山だろうけどね。
夏至の日に温泉に浸るのは初めてのことだろうと思う。
俵万智風に表現すれば「一年で一番日が長い日に温泉に浸かりに行ったから6月21日は『夏至の湯記念日』」。
稲村ケ崎から眺めた江ノ島
夏至の海雲高くして波白し
夏至翌日の夜明け。起き抜けに撮ったのでカメラのレンズはボクの目を忠実に反映してくれた=04:05
日の出は04:29のはず=04:36
太陽ってこんなに小っちゃかったっけ=05:03
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