こういう時は躊躇なく自転車を引っ張り出して自然の風に当たってくる。
普段は海沿いのコースばかりなので今回は内陸の田園地帯にコースを取ってみることにした。
自動車に煩わされないで走るには川の堤防の上とか田園地帯の農道を行くのが自然に浸る手っ取り早く、確実な方法である。
まず一定程度のところまで川の堤の上を遡るのだが、それが可能な川は境川、引地川、相模川、金目川、酒匂川の5本。
このうちわが家から数えて2本目の引地川を今回は遡ることにする。
この川の行き着く先は都市化した大和市付近なので途中で西に折れて茅ケ崎や藤沢市北部の田園地帯を目指す。
藤沢市というところは面白いところで、東海道線より海側の地域は高級住宅地を含めたいわゆる湘南の海沿いの瀟洒な住宅地だが、市域の3分の2を占める線路の北側の台地には内陸工業団地が形作られ、一方で台地を下った低い所には水田が広がり、台地と水田の間の斜面の部分には牛や豚、鶏を飼育している酪農家が点在するという具合に実に変化に富んでいて走って飽きない。
少なくともボクの場合には。
明確な目的地を設定せずに漕いでいき、良さそうな道を見つけるとそこを進むという具合だから、頼りはお日様で、自分の影がどちら側にあるかで東西南北のどちらに進んでいるか知る程度なので、意外なところに出てびっくりしたり、ずいぶん遠くまで来たと思ったら同じ地域をジグザグしていただけだったんてこともあり、それもそれで楽しいのだ。
人生において目標を掲げてそこに向かって突っ走るというような時期はもはや過去のものなのである。
そういうステージにボクはいるのだ。
水のにおいに満ちた空気の中を自転車を漕いで進むと、早苗をそよがせて届く柔らかな風が何とも懐かしく感じられ、出来ることならこのままどこまでも走り続けたいと思う
目を落とせば畔に優しい色使いでカタバミが咲き
突如、色彩豊かな花畑が現れ
真夏の象徴のヒマワリが咲き誇って
…と、こちらでは高座ブランドのブタがお腹を満たして夢を見ている
こちらでも真夏にふさわしい真っ赤なカンナが咲いているなぁと思いつつ通り過ぎようとすると
目が合ってしまった
一番てっぺんまで届くと梅雨が明けると言われるタチアオイがてっぺんに花を咲かせるのももう直のことのようだし、そんなことより秋のコスモスが何でこんなにも早く咲くんですかいと聞くが返事はない
用水路脇に整然と植えられたアジサイの青さにびっくりして注意深く見ると、ひと株一株の色合いが違い、それぞれに名札が立ててあって地元の人たちが自慢の一株を持ち寄っていることが分かる。なるほどオヤッと目を魅かれるわけだ
台地と水田地帯を結ぶ傾斜のある場所ではダリアとエキナセアとマリーゴールドに似た白い花が競演し
引地川の親水公園を行くと魅力的な形の木が目に止まる
近づいてみるとネムノキで、もう終わりかけの花が背後の青いアジサイと対を成していて、やっぱり梅雨時なのを認識するのだ
なかなか形の良い竹藪のある風景だなと思って止まると
上体部分が欠けてしまった寄り添う仏? を彫りこんだ石像が大事そうに置かれたままになっている。それにしても上半分はどこに行ったのだろう…
すぐ近くに曹洞宗の宝泉寺があり、多分ここで懇ろに供養されたのだろうと思いを巡らせる
欠けた石像の脇のカキ畑ではもうはっきりと実が主張し始めてきた
田園地帯にはコンビニひとつないのだ。ゆるい曲がりくねった坂を足に力を入れて漕ぎながら腹が減ったなぁと思った視線の先に古びた看板が
贅沢は言っていられない、まさに背に腹は代えられぬ
古い農家を利用して食堂で50隻くらいはある広々とした空間である。驚いたことに女性客を中心に午後も1時半に近いというのにテーブルはあらかた埋まっている
どうやら野菜をはじめ地元で取れたものを使って供することを主眼に置いた店らしく、ほうとうもおすすめと言うので高座ブタが入った肉ほうとうを注文した。
出てくるまでにずいぶん時間がかかったが、薄味というか、優しい味付けでとてもおいしかったのにまたびっくり
店の奥にこんな大きな張り紙があり、今月末で閉店だという。1年前からの予告閉店で80歳近いと思われる店主夫婦は「今後趣味である書道、俳句、カラオケ、紙芝居等を極めるとともに、新しいことにも挑戦していきたいとワクワクしているところです」という惜別の辞を各テーブルに置いていた。
ふむ、これぞ一期一会か
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heihoroku
高麗の犬
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