わが家の庭に山の神から正式に居場所を与えられた八重のドクダミが今年も咲き始めた。
山の神が認めるだけあって、なるほど、その咲き姿はなかなかのもので、美しさを兼ね備えた個性派女優の如く存在感を発揮していて、一見に値する。
十字の形をした一重のドクダミを家臣団に例えるなら、この八重はさしずめ、家臣団を率いて合戦の先頭に立つ主君の若き日の姿のようにりりしくもある。
この花が咲き始めると、バラの一番花が終わりに近づき、代わってアジサイが色づき始め、ホタルブクロも負けじと存在を主張するようになる。
そうなって来ると朝な夕な、ホトトギスのけたたましい鳴き声が静寂をつんざくように聞こえてくるのだが、今年はどうしたことか、まだ初音が届かない。
唱歌「夏は来ぬ」で「卯の花の匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて…♪」と謳われた垣根の卯の花は、もうわが家周辺では散ってしまった。
ホトトギスめどこをほっつき歩いているのか…と聞き耳を立てると、駄句が脳裏に浸食してくるのであります…
フーテンめどこで道草ホトトギス 花葯
これじゃあんまりだからお口直しにムラサキシキブさんの歌をおひとつ。
ほととぎす声待つほどは片岡の 杜のしづくに立ちや濡れまし
これはシキブさんがホトトギスの鳴き声を聞こうと曙の時刻に上加茂神社を訪れた際、「隣接する片岡山の梢がいかにも面白く見えた」ことから「片岡山の森のしずくに立ち濡れていようかしら」と若々しい気分で詠んだものだそうな。
そこにはホトトギスにかこつけて暁の露に濡れて立つ恋人たちという伝統的な恋のイメージも連想されて、そこがミソだというんですな♪
ボクの「恋の季節」は終わてしまったようだが、こういう歌を目にし、解説を読むと、昔を思い出してトキメクものがあるのであります。
それにしても鳴かないねぇ…
目に青葉山ほととぎす初鰹 山口素堂
青葉も盛り、カツオもとっくに「初」は出回ったんだけどねぇ。オイッ、ホトトギスッ!
背景のピンクはつるバラの「伽羅奢」と一重のドクダミ
クロタネソウってのは実に妙ちきりんなデザインを採用したもんですなぁ♪