平方録

横須賀線が止まってしまった朝

先週の日曜日は新幹線で雨の中を山形に向かっていたので、止むを得ず休んでしまったから2週間ぶりの円覚寺である。

ボクはだいたい30分前に着くようにしているので、この日は8時半ころに会場の大方丈に入って行くとがらんとしていて、20人に満たない人しか集まっていない。
横須賀線が人身事故の影響で上下線ともストップしてしまっているせいである。

円覚寺の日曜日は奇数日曜日が横田南嶺管長の提唱と坐禅、偶数日曜日は説教と坐禅の2本立てである。
偶数日曜日の日曜説教坐禅会は第4日曜日が円覚寺派の布教師の坊さんらの持ち回りによる説教の日で、1時間の説教が終わると坐禅の時間となる。遠くからやってくる人にも都合の良いように午前9時スタートである。
これに対して午前8時の開門と同時にスタートする奇数日曜日のほうは日曜坐禅会という呼び方で、原則として2時間座りっぱなしで横田南嶺管長の提唱を聞き、提唱が終わるとまた坐禅を組むので、「その気」の人以外には厳しいと見えて毎回の参加者は100人をやや下回る程度である。

偶数日曜日のお説教を聞く場合はリラックスして聞いても良いことになっているから、老若男女が大勢詰めかけて、特に第2日曜日の横田管長の日には500人近い人々で立錐の余地がないくらいに混みあう。
持ち回りの和尚さんたちが話す第4日曜日は半分近くに減ってしまうから、管長の人気の高さがうかがえるのだが、今の日本の仏教界で注目されているお坊さんの一人なのだそうだからそれもムベなるかなで、話の中身にはいつも迫力があって会場を埋め尽くした人たちは、まんじりともしないで聞き入る姿はなかなか見ものであるとボクはいつも思っているのだ。

ああいう光景を見ていると、宗教家というのはなかなか厄介な存在でもあるのだなぁと思ってしまうのだが、それも己の宗派の教義の枠内にとどまっているのであればそんな心配は無用だろうと思う。
念頭にあるのはエセ宗教家のことで、金を稼ごうとか人心を収攬させてやろうとか、ろくなことを考えない輩がこれまでにもいたし、それでもまぁ信者から小金を巻き上げるくらいなら、巻きあげられる人もそれなりに信じ込んで幸せなんだろうからその程度にとどまっているうちは見逃してもいいが、サリンなんてものをまき散らすようでは「駆除」もやむを得ない。

ややっ、あらぬ方へ話が転びかけたゾ。もとへ戻さねば。
この日の説教は円覚寺の教学部長サンにして浄智寺住職の朝比奈恵温和尚である。
開始時間になっても普段の半分ほどしか埋まっていない会場を見渡して開口一番、「数百人の人が足止めを食っちゃってるんでしょうね」というぼやき節が漏れた。

2、3年前の日曜説教坐禅会で横田南嶺管長から聞かされた話を思い出した。
後に高僧となる禅宗の坊さんの布教師時代の話で、師の名代として壇上に上がった法話の会場の客席に台風のせいもあって1人しか聴衆がいなかったのだが、表情を変えずいつもの通りの力強さを持って話をし終えたそうである。
その話を聞いた師は「そんな程度で満足していては駄目だ。まったく人がいないところでもいつもと変わらずに説教ができるように精進せよ」と言ったという話である。

恵温和尚は本山の教学部長という要職を務める傍ら東日本大震災をきっかけに犠牲者の鎮魂と供養のために鎌倉の仏教界、キリスト教界、神道界のそれぞれが一緒になって行動を起こすという全国でもまれな活動を続ける鎌倉宗教者会議の事務総長を務めたり、映画監督の小津安二郎の映画鑑賞会を自分の寺で開催したり、寺でカレーパーティーを開いたり八面六臂の人なのである。
お爺さんは昭和を代表する宗教家の1人として名高い朝比奈宗源元円覚寺管長だし、父親はTBSで「兼高かおる世界の旅」のプロヂューサーを務めた後、50代半ばで円覚寺に入って雲水修行から初めて浄智寺の和尚となった人だそうだ。

脱線は元に戻らず脈絡のないことをグダグダと書き連ねてしまった。グダグダ書こうと思えばまだまだいくらでもグダグダ書けるのだが、いい加減にしておきたい。
別に酒を飲み過ぎて〝アル中ハイマー〟になったわけではない…と思う。
毎日こうなったらちょっと大変だけれど。こういう日もあるってことで…



開始30分前はご覧の通りガラガラの大方丈。電車でやって来る人が大半だってことのようである


茶の花が咲いていた。うなだれチャってるけど…


円覚寺にヒガンバナは少ないのだ


黄梅院で見かけたこちらの花の名前は分からない


お彼岸なので境内にある小津安二郎の墓に詣でてきた。「無」の一文字が刻まれた墓には酒瓶が
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