ボクが36年間、誇りとある種のプライドを持って勤めた会社の後輩が、それも組織のトップに上り詰めた人間が2人、あろうことか相次いで懲戒解雇された。
理由については恥ずかしくて書く気にもならないが、それでは何のことかわからないのでごく簡単に記すと、1人は駅のエスカレーターや電車内で携帯電話のカメラを使って女性のスカートの内側を撮影したというものだ。
情けないのは、この男は出来心でたまたま破廉恥行為をしたというのではなく、被害の届けを受けて尾行していた警察官に現行犯逮捕されたということである。
逮捕されて調べが進むうち、携帯電話に残されていた膨大な数の画像などから数年前から犯行を重ねていた常習犯だったことも分かった。
張り込み、尾行が付くわけだ。
この男が勤めていた会社は普通の会社ではない。
社会の不正や悪に目を凝らし、糾弾するのを一つの存在理由にしているところだから、こうした行為は普段糾弾こそすれ、自分が糾弾される側に回るということはあり得ないのだ。
極々たまに、道を外してしまう不届き者がいないわけではないが、いたとしても若くて下っ端の人間で逮捕でもされない限り、こっそりと引導を渡されて辞めていくのがオチちである。
それが、50代も半ばを過ぎて酸いも甘いも嗅ぎ分けられるはずの大ベテランと言われる人物が組織の長に就いて、しかもマークされ尾行された挙句に現行犯逮捕されたというのだから、驚きを通り越して恥ずかしくて恥ずかしくてしょうがない。
これまで積み重ねてきた信頼などというものは、この一事によって帳消しに吹き飛ばされたのも同じである。
会社には様々な部門組織があるが、この男が責任を担っていたのは、まさにその中核中の中核たる組織の長で、この組織が無ければ唯一の製品は生まれないのだ。
人はこういう破廉恥犯罪を病気であるという。
冗談じゃない、病気なんかであるわけがない。自分の仕事が理解できず、自覚も足りず、自制心のかけらも失せてしまったクズ人間のなせる業なのだ。それだけに情けなさを通り越して悲しみさえ覚える。
どんな下手くそな小説家だって、これほどまでにトンチンカンで皮肉過ぎてあり得ない状況設定で小説は書かないものだ。
もう1人も組織の長に上り詰めた男である。
会社組織の管理運営を司る、これもまた重要な役職に就いていて、部下の女性社員らにセクハラ行為とパワハラ行為を重ねていたという。
被害に遭った複数の部下が余りのひどさに耐えかねて他の部署の同僚に相談したところ、うまく役員に伝わり、極秘調査の末に容疑が固まり本人に問い詰めたところ申し開きが出来なかったということのようである。
どちらの男もボクが現役時代に使ったことがあるが、仕事は2流以下である。
はっきり言って新しい仕事は無理だし、ちょっと面倒で頭を使い、汗も流す必要のあるようなしんどい仕事は全く歯が立たず、すごすごと帰ってくるのがオチちだった。
そういう連中に限って、厳しい上司は敬遠し、付け込むすきの在りそうな上司を嗅ぎ分けてゴマを摺りつくすのである。
いわゆる「ヒラメ」ってやつで、海の底の砂地に潜って目だけをキョロキョロ動かしながら、つけ入りやすそうな上司を探しているのだ。そして調子よく取り入っていく。
深刻なのは懲戒解雇された2人が全く同じ資質なのが偶然の一致でないことである。
つまり、ゴマすりだけの、側からは白い目を向けられている2流以下の男たちの資質を見抜けず、手もみをしながら調子よく言い寄る人物を「愛いヤツ」と思い込んで組織を任せてしまう愚を重ねたことが最大の原因である。
何のことはない、会社組織は根幹からしてぽっかり穴が開いてしまっているようなもので、ちょっと風が吹けば幹の途中からぽっきり折れてしまうのである。
こういう事態になって尚、今のボードメンバーたちにはその自覚が無いようである。首を挿げ替えれば済むと思っている。
その証拠に大幹部が立て続けに2人もこの有り様なのに、本人たちにだけに責任をかぶせて首を切り、その任命権者たち、監督責任者たちに大したお咎めが及んでいないのが何よりの証拠なのだ。
何せ、ボードメンバーたちは揃いも揃って〝人柄の良さ〟だけでエラくなっていったのだ。
人柄から「柄」を取ると単に〝人が好い〟というだけのことで、そんなことでは組織は保てない。
つまり大幹部2人の懲戒解雇は自分たちの眼力のなさと指導監督の不行き届きを天下にさらしたことに他ならず、自らの不祥事ということにもなるのだが、そのことにすら気付いていないのである。
そのことが、つくづく情けなく、そして悲しい。
垂れこめる暗雲 打ち寄せる波
コメント一覧
heihoroku
高麗の犬
最新の画像もっと見る
最近の「随筆」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事