平方録

旧交を温める

退職の挨拶状を見て連絡してきてくれた、かつての取材相手と横浜駅西口で一献。

行政機関の幹部だった人で、70歳になった去年まで福祉施設の理事長をしていたそうである。
今は60坪の畑を借りて野菜作りと犬の散歩と週に一回の飲み会の日々、だそうだ。
ところで退屈してない? 毎日何してんの? と心配してくれる。

あれやこれやに時間を費やし、ボーっとする時間がほしいくらいだ、というと怪訝な顔をする。
そんなはずはないだろう、とでも言いたげ。

一週間の行動日程を説明する。明確な予定は月、水、日の3日間だけだが、それ以外の日にも不定期な予定が入るものである。
何もすることがなければ、見つけ出す。考えたいことはたくさんあるし、読みたい本もたくさんある。行ってみたいところもあるし、天気が良ければ身体も動かしたい。

世の中の役に立っていない、のは仕方ない。しかし、侮るなよ、という思いはいつだってある。いいな、アベちゃん!

円覚寺での坐禅の話をしたところ、感じるところがあったようで、根掘り葉掘り質問された。
息子が建長寺が経営する鎌倉学園を卒業した縁で、最近、建長寺に墓を買ったんだそうである。
いろいろ案内状が届く中に、参禅の誘いもあるらしい。
腰骨を立てないと長い時間座れないから、必然的に背筋も伸びるよ、というと「今、犬の散歩の途中で公園の鉄棒にぶら下がって背筋を伸ばしている」という。
犬を傍らにくくりつけて、公園の鉄棒にだらーんとぶら下がっている老人の姿を想像してみる。
……。

建長寺の座禅会は確か夕方のはずだ。
檀家には専用の駐車場もあって、いろいろ特典があるんだそうだ。どうやらやる気らしい。
世間の役に立っていないことを気にしていて「どのように人生を終わらせるか考えている」という。「何も考えないのが禅」といっても理解不能の表情である。
2、3カ月後に報告を聞かせてもらうことになった。

夕方5時に入った居酒屋は白髪や薄い頭の男たちのグループばかり。若者はこういうところには近づかない。中年過ぎの働き盛りの登場には、ちと早いということか。ともあれ、元気な年寄りはご同慶の至りである。



近所の田んぼではようやく稲刈りが終わった。稲穂の束が天日に干され、たき火の煙が立ち上っている。下校途中の小学生が興味深そうにたむろして田んぼの主にあれやこれや質問している。陽はかくもでっかくなって傾き、懐かしい日本の秋の風情が漂う。
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