平方録

小天狗の舞

小1の姫に生後2か月の妹君、生後10か月の若君が待ちかまえるところに小5、小3、幼稚園年長組のダンゴ3兄弟がやってきた。
カウボーイハットを目深にかぶり、くわえたばこで馬にまたがって辺りを睥睨しながら、ゆっくり静かに近づいてきたんである。んな分けないか。
モノレールに乗って、リュックを担いでやってきたんである。

3兄弟を部屋の中にじっとさせておくことは不可能で、おやつと水分の補給をさせた後、ポカポカ陽気の中、近所の公園にサッカーボールを持って出掛ける。

さすがに男の子の動きはダイナミックというか、公園に着くなりボールを蹴飛ばして砂埃を巻きあげながら、疾走する。
あんな動きはちょっと無理だなと思いつつ、最初はキーパーなんぞを務めていたが、何せ昔取った杵柄がうずき出し、少しは片りんをのぞかせて溜飲を下げるようなまねをして、大人げないことであった。
最初のうちこそもじもじして縄跳びをしていた姫も、学校ではリレー選手に選ばれるほどの脚力の持ち主で、「どろけい」ならやってもいいという言葉に3兄弟も同意し、たかが鬼ごっこではないかと、これにジイジも加わったのである。

しかし、有利なのは歩幅の広さだけ。直線ならある程度太刀打ちできても木の枝の下をくぐり、うねうねと広がる根っこの上を巧みに伝い、柵を飛び越えて逃げ回るちびっこギャングどもを捕まえるのは至難の業と、すぐに知らされた。
彼らの若くて柔軟な筋肉と関節の動きに、68年目になる筋肉は柔軟さを欠いて硬く、伸び縮みも容易ではない。おまけに関節がぎこちなくなっているのだから、ダッシュも小回りも利かないのである。

木々の根っこの密集したところに逃げ込まれたら、躓いて転ばないように走るのが精いっぱいで、追跡どころではない。
その間に低いながらも柵などあって、軽々と飛び越えていくギャングたちをしり目に、これを激走中に飛び越えるのも一苦労である。走るのと跳ぶのでは筋肉の使い方、動かし方が違うのである。瞬時の切り替えがスムーズにはいかないのだ。
まったく小天狗と言ってよいくらい、小憎らしいほど身軽に飛び回られ、おのれの肉体の衰えを嘆く余裕もあらばこそ、息も絶え絶えとなり、このまま昇天してしまうのではないかと思えるほどの苦しさである。
その気になって追いかける時間はたかだか3分にも満たないんだろうが、これを何回か繰り返し、肉離れもアキレスけんの断裂も起こさず無事だったのは、幸運だったというほかない。
I
感心だったのは姫で、さすがに小5のパワーにはかなわなかったが、お兄ちゃんの小3と幼稚園児は持ち前のスピードで何度も捕まえて鼻高々であった。御転婆なのである。



年末に山形の友人が送ってくれた「啓翁桜」が満開を迎え、春を告げてくれている。
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