サッカー日本代表でイタリアとイギリスのトップリーグでも活躍して2006年のW杯ドイツ大会後に引退した中田英寿選手。
通称ヒデさんが久しぶりに新聞に登場していた。
今度はサッカー選手としてではなく「伝統産業の改革者」として、これまで人がやってこなかった新しいことに目を付けて事業化に成功し、さらに拡大を図ろうとしているんだとか。
そのトップランナーとしてスポットライトを浴びていた。
具体的には「Japan Craft Sake Company」を設立し、代表取締役CEOに就いた。
日本酒の普及イベントを企画したりする一方、スマホ用アプリ「Sakenomy」(サケノミー)を開発して販路を広げる手伝いをしているんだとか。
このネット通販には超人気の山形・十四代や和歌山の紀土など、名だたる蔵元からまだ名も知られていない蔵までが馳せ参じている。
こうした取り組みを始めたきっかけは、サッカー引退後に思い立って世界と日本を巡る旅を続ける中で、良いものを作っても情報発信や流通網が弱いために、廃れゆく伝統産業の現状を目の当たりにしたことだった。
自分も何か役に立ちたい…そう思ったんだそうだ。
自分の足で世界中を巡り、自分の目で確かめたことに関心を注いでいく。
言うのはたやすいが、なかなかできることではない。
その意味でかつてのヒデファンとして、なるほど目の付け所が違うな、さすがだなと感心する。
どうしてそこまで頑張るのかという問いに、「地方の蔵元が頑張れば結果が出る環境を作るのが、ボクたちのできることだからです。何より伝統産業の人は本当に良い人が多く、そんな人たちが喜んでいる姿を見るのが幸せです」という答えが良かった。
しかし、最も深く心にしみたのはヒデの基本的なものの考え方。
10年後20年後何をしていますかと問われて、こう言い切った。
「先のことは考えません。その通りになることは何もないから。サッカーだって優勝は通過点で、それで人生が終わるわけではない。重要なのは、いまを全力で生きること。将来どうなりたいかではなく、いま何をするか。文化と同じで人生も毎日の積み重ねが最終的に人が生きた集大成として『人生』と呼ばれるようになるなると信じています」
この、「先のことを考えるのではなく、いま何をするか。いまを全力で生きること」という考え方こそ、まさに禅の教えなのだ。
ヒデは現役時代から他の選手とは違って、どこか求道者的なところがあったが、なるほどなと合点がいく思いだ。
大したものだ。見直した。
こういう種類の人物がアベなんちゃらやガースたちに取って代わるようになれば日本も安心なんだろうが…
(見出し写真はわが家のパンジー・モルフォ)