確かに、3連休の2日目というのは感覚的に鎌倉が観光客で込み合う日だという印象が強い。
鎌倉市内の道路が至る所で大渋滞を来し、駅周辺の食べ物屋の前にどこも長蛇の列ができ、江ノ電に乗ろうとしてホームに入れない人たちが100メートル余り離れた市役所近くの交差点まで行列し、江ノ電に雇われたバイト君が「最後尾」などというプラカードを掲げるのも、決まって3連休の2日目である。
折しも鶴岡八幡宮では14日の宵祭りに続き、15、16日と3日間、秋の例大祭が開かれ、最終日の16日は境内で流鏑馬神事が行われてもいた。
JRの北鎌倉駅で降りる観光客の大半は円覚寺の総門前を通り、そのまま円覚寺に吸い込まれて行ったり通り過ぎたりしている。
最初に道を尋ねられたのは午前8時の開門に合わせて到着し、階段を上ろうとした時だった。
「地元の方ですか? 」
小学生と思しきあどけない顔をした少年を連れた若いお母さんに呼びとめられたのだ。
腕にパンフレットを沢山挟んだクリアファイルを抱えているので、てっきり新手の新商法で何かの勧誘かと思ったが「そうです」と答えると「鎌倉学園はどこでしょうか? 」と聞かれた。
ハハァ~ン、そうかパンフレットは学校案内か。それにしたって事前にどう行けばいいかくらい調べてこないのかしらんと思う。
線路沿いをそのまま進んで踏切のところで太い道路に突き当たるから、それを左にずんずん歩いていけば建長寺である。
学校はその境内にあるのだ。そう教える。
お受験の下調べ。いよいよ受験モードにして息子の尻をたたこうという親心なのか。ならばますます親の下調べは重要でしょうに…
頑張れ息子、親に頼るな。
そして2件目は坐禅を終えて総門を出て階段を降りかける途中で老婦人に呼びとめられた。
「海蔵寺に行きたいんですけど、今私がどこにいるのか分からなくって」と地図を差し出す。
白髪で品のよさそうな丸顔、小柄でリュックを背負い、赤っぽい何色かが混じった大きなチェック柄のシャツにズボン姿のハイキングの装いである。垢ぬけているのだ。
今立っているのが、ここ円覚寺で、目の前の線路が横須賀線。ここにあるのが北鎌倉駅です。で、この線路沿いの道に沿って歩いていくと太い道に…
それをたどると今度は右手に上り坂が現れます。長寿寺というお寺のところですよ。この坂を上り…云々と地図の上を指で指して説明する。
すると、この道はどれです? と質問される。説明が分かっていないらしい。
もう一度最初から繰り返しても首を傾げたままである。
これには困った。地図は何の役にも立たないではないか。
しかたなく、地図を離れて目の前の道を示し、この線路に沿った道を……それから右に折れて坂を上り、今度は坂を下りきったらまた右に……とボクにしては根気強く口で説明して念を押す。
頭のどこかに少しは残るだろう。分からなくなればまた聞けばよい。
あの老婦人、もしかしたらハイキングを兼ねて見ず知らずの人とコミュニケーションしたくてとぼけたふりをしているんじゃないだろうね。
ま、それはそれでいいんだけど、そうだとすればいろいろな休日の過ごし方ってのがあるものだ。
それにしても円覚寺の後はすぐ近くの東慶寺や浄智寺ではなく、山一つ越えた海蔵寺とは通好みというか渋好みであることよ。
どちらからいらっしゃったのだろう。
敬老の日の1日前の話である。
仏殿裏の白いマンジュシャゲ
大方丈の裏山にも
赤のマンジュシャゲは法堂跡に
妙香池のほとりではススキの穂が風に揺れ
敢えて植栽しているススキのようである
黄梅院のハギには朝方降った雨の水滴が消え残り
選仏場の脇ではシュウメイギクも咲き始め、円覚寺の境内は秋色に染まりつつある
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