平方録

明日は我が身か…

6月23日に行われたイギリスの国民投票で欧州連合(EU)からの離脱が決まった。
如何にグローバル社会といえども、イギリスの国民投票にさして関心があったわけではない。
意見が割れてバタバタしたって、どうせ最後の結論は現状維持だろうぐらいに思っていたのだ。

国民投票に至る細かなプロセスを知らないから、国民の間にどのような思惑が交錯していたのか、今回の結果がどういう素地のもとで導き出されたのか、というような事について理解できる立場ではないが、結果だけを見れば「えっ! 」ってな感じである。
なぜ「えっ! 」なのかと言えば、世界の一大潮流になりつつあるグローバル化に背を向けた、内向きの理屈が勝ったという点に尽きる。
これがイギリスだけなら、さして驚かないかもしれないが、アメリカの大統領選挙の候補者を絞る予備選で勝ち残った共和党のトランプ候補が「アメリカファースト」と自己中心的なことを主張し、いくらなんでも…と思っていたら、あれよあれよと共和党の候補に決まるのが確定的になった矢先だったから、なおさらなのである。

世界の潮流は、そうしたグローバル化から一転してまた自国中心主義的な、それぞれの国々がさや当てを繰り返すような一昔もふた昔も前の世界に逆戻りするのかよ、という思いなのである。
それって、結局右傾化なんだろう? と危惧するところ大なのである。
そういう内向きの理屈が先に立つような事が世界中に広がった時どうなるか?
内向き同士の理屈がぶつかり合ってうまく解決できなければ、腕力を限りの殴り合いになるというのが歴史の示してきたところである。
“戦争の世紀”と言われた20世紀に逆戻りしてしまいかねない、という危機感を抱かざるを得ないのだ。

日本にだって、その右傾化の兆しが芽生えてきているところが恐ろしいと言えば恐ろしい。

アベなんちゃらが進めている政策は教育政策しかり、社会保障政策しかり、安全保障政策しかり、バックボーンには「国民の権利を制限したい」「為政者の思う通りにやれる社会体制・政治体制の構築」という、とどのつまりは独裁体制の確立を目指すという考え方が如実に現れているからだ。
情けないことに、言論の自由だって建て前だけは保障されているかのように思えるが、実際のところは電波媒体は恫喝され、傍で恫喝される姿を見聞きしている活字媒体は委縮してしまっている。
アベなんちゃらの思うつぼでことが進められてしまっているんである。

そういうものが見えているのに、マスコミはへっぴり腰で何も出来ず、言いなりになってしまっている。ジャーナリズムの看板が聞いてあきれるばかりだ。
だから、選挙になればアベなんちゃらの与党は痛いところを突かれるわけでもなく、悠々と勝利してきているんである。
今回の参院選でもまた、マスコミのいくつかの世論調査は、最大焦点のひとつである憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を獲得できるかどうかに関して、自民と公明の与党のほか、改正に賛同している他の政党とで「3分の2に達しそうだ」との予測を掲げた。

与党自民党が示している憲法草案は、現行憲法が掲げる「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」の三大原理を、あれは第二次大戦で勝った連合国側に押しつけられた、日本人の心が入っていない恥ずべき憲法なのだ、と頭から否定してかかって発想したものである。
だから近代の立憲主義が政府の権限を憲法のもとにおいてのみ可能とする、権力を縛るものとしての憲法から、国民の権利を制限し、それだけでは足らないと思ったか、ご丁寧に国民の義務を書き連ね、あたかも国民を縛るような、国民主権を否定するかのような草案を作っているんである。
戦前の大日本帝国憲法の復刻版のような、いわば時代錯誤の憲法観に立ったシロモノなのである。
そんなものが国民投票にかけられてしまったら…

そんな時代錯誤の憲法が日の目を見ちゃうのかい、というような事が頭にちらつくイギリスからのニュースなのである。



わが庭に咲くゲラニウム・ロザンネイ
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