「お前は日本一しつっこい子供だ。」としょっちゅう文句を言われた。自分では約束をたてに騒いだ覚えはないのだが・・・。今ごろ言われても時効である。私が親ならそんな子には「晴天で、おてんと様が3つも出ていたら連れて行ってやる。」くらいのことは言っていたと思う。工夫のない親はこれだから困るのだ。
長ずるに及び、いろんな約束をしては破ってきた。でも、どんな約束と聞かれてすぐには答えられない。恐らくそのうちの大半は大したことのないものだったのだろう。たとえ破っても、ごめんなさいビール1杯でチャラになるような約束ばかりだったのではないか。
但し、一つだけ忘れられないものがある。大学時代にこっぴどい失恋をしたことがあった。どれ位ひどかったかと言うと、付き合っていた子とこれから付き合おうとした子、同時に振られたのだ。ダブルのショックに加え、英語とドイツ語の単位を落とし大学5年生がめでたく確定した。
私の通っていた大学は、2年から3年になる時に語学の単位を一定以上取ってないとゼミを取らせてくれなかった。専門で忙しくなるから、語学をちゃんと取っておけと言う、親切心から来たルールだそうだ。3年で無事単位を修得し、それから専門に入るわけだが、ゼミは2年かかるので必然的に卒業は5年目になってしまう。余計な世話を焼かず放っておいて欲しいものだ。
そんな時期でもあり、苦手な語学と言うことで予習の必要がある外書講読の出席率は惨憺たる有様だった。教育的配慮から救いの手として差し伸べてくれたレポートも出す気にならず『来年再履修します』と提出チェック表に書いて、放っておいた。
後日その教授から呼び出しを受けた。さすがにレポートが面倒とは言い出せず、出席もせずレポートで情けにすがるのは申し訳ない、構わず落としてくれとカッコを付けて言ったところ『レポートの提出は単位の取得に関わらず、君と僕との約束である。君は男の約束をそんなに軽く考えているのか。今からでもいい。ちゃんと提出しなさい』と、穏やかな口調ではあったが、強烈な叱責を受けた。
その2日後、徹夜でなんとかレポートを書き上げ提出した。が、締め切りに遅れること1ヶ月、予定通りの再履修を覚悟していた。しばらくして教務課の前を通ると、その科目の成績表が貼り出されているのに気付いた。期待せずに見た自分の採点欄に80という数字が書き込まれているのを信じられない思いで眺めた。
何をすればいいのかが判らず、愚行を繰り返していた私だったが、この時にほんのちょっとだけ、大人になったような気がするのだ。
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