gooブログはじめました!

友人Kの話

大型2輪の教習だが、1段階では落ちまくり、腕が鈍ったことを嘆いていたが、なぜか2段階になったとたんスムーズに進むようになった。4回とも無事クリアー、チョーシいいぞと喜んで教習所を後にした。こういう時はえてして良くない事が起きる。いつもに増して慎重な運転で帰宅した。

ン!留守録ありだ。再生すると同僚のAからだった。なんと共通の友人であるKの訃報を告げる電話であった。Kは同期入社の友人で研究所に配属されてから親しく付き合うようになった男だ。冬のスキーに夏のウィンドサーフィン、合間にキャンプと飲み会。金も無いのに遊びまくった。遊ぶために働くと言われていた裏の社是を、当時もっとも守っていたのは我々だったと思う。

Kの偉かったのはちゃんと生活設計を描き、酒をすすってない時は息を吐いていると言われた我々アホ仲間とどっぷり付き合いながらも、学生時代からの恋人と晴れて結婚。まっとうな人生を歩んでいたことだ。料理上手なカミサンのいるKの家は我々にとっては都合のいい集会場であり、何かというと酒をぶら下げて通ったものだった。

今でも覚えているが、仲間の一人、Sに大量のマツタケが親戚から送られてきたことがあった。独身男であるSのアパートには酒しか置かれていない。口に入れられるものは歯磨き粉ぐらいという有様で、事実ぼーずはここの台所で餓死直前のゴキブリを見たことがある。こんなとこで天下のマツタケを食うわけにはいかない。当然のように我々は酒をたずさえKのマンションへ昼間から集まったのだ。

大ぶりのマツタケを丸ごと網に載せて弱火で焼く。そいつを、水につけては冷ました指で裂いてゆく。これがもっとも量を食べられる調理法だとSは言った。こんもりと皿に盛られたマツタケに、最後に裂かれた一筋がのった瞬間、四方から箸が出る。そして、山は一瞬にして消えた。これを何回繰り返しては酒をあおっただろうか。最後は土鍋で松茸飯を炊いた。土鍋いっぱいの飯はあっという間に無くなった。もう一回炊いてもらったが、飯を胃の腑に収めるスピードは一向に鈍らない。

さらにもう一回炊き、またもう一回という所で米が無くなった。土鍋で3回も炊けば買い置きの米も無くなろうというもんだ。くちくなった腹をさすりながら、I男がKのカミサンに言った『ちいちゃん。悪いけど風呂に焚いてくれん?俺、夕べ遅くまで残業で入ってないんよ』かくも凄まじい同期の攻撃にさらされながらもニコニコと笑っていた鷹揚なKだった。そうこうするうちに遊び仲間の独身男どもも家庭を持ち、そうは出歩けなくなった。で、Kの家が平穏になったかといえばそうではなかった。今度は部下たちが押し寄せたからだ。みんなが行きたくなる所だったのだ、Kの家は。

訃報を聞いた翌日、教習を終えてからすぐにKの家へ向かった。暫くぶりの訪問であったため、閑静な住宅地の一角にあるK宅がある辺りをバイクに乗って探す羽目になった。5分ほど走り回ると見覚えのある噴水に出た。そこからK宅はすぐに見つかった。ベルを押すとまだ幼さの残る青年が出てきた。聞けば甥子さんとか。少し前にKは葬儀社に向かったと言う。そうか本葬儀は一週間先だ。自宅で保管できるわけが無い。

しまった、もっと早く来れば良かった。『お前とSはいっつもギリギリまで動かんなぁ』あの世で苦笑いをしながら呟くKの姿が目に浮かんだ。

合掌
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ひげぼーずのつぶやき」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事