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虚構と現実の間

最近、文庫本一本槍で単行本を買わなくなってしまった。唯一の例外は絶対に文庫化されない、写真集などの企画ものぐらいだ。価格の問題もあるが、まちまちのサイズで出されると置き場に困る。加えてベストセラー物には手を出さない主義なので、人気が落ち着いた頃に出版される文庫本に手を出すのは当然の成り行きでもある。

かなり前の話で申し訳ないが、文庫化を待った甲斐があったのは北林一光氏のファントム・ピークス。ひたすらドキドキ、ワクワクして読んだ。《長野県安曇野。半年前に失踪した妻の頭蓋骨が見つかる。しかしあれほど用心深かった妻がなぜ山で遭難? 数日後妻と同じような若い女性の行方不明事件が起きる。それは恐るべき、惨劇の始まりだった。》(Amazonブックレビューどぇす)

どーです。解説だけでも引き込まれるでしょ?単純な奴め!と罵られるのを覚悟で言うが、終わりまで一気読みしてしまった。ところが昨年の春、秋田八幡平にあったクマ牧場での事故記事を見て驚いた。ネタバレになって申し訳ないが、この小説そのままじゃないかと思ったのだ。(端的に言うと本はあそこまで単純ではないので、興味ある方は是非お読みくだされ) 事実は小説より奇なりというが、むしろ現実がフィクションを追いかけている気がする。

これも2年前の秋休み(職場の迷惑顧みず毎年恒例で取っているが)、実家で見たTVの話題は尼崎で起こった死体遺棄事件だった。当然殺人事件になのだが、手を下したのは親族だが、やらせたのは赤の他人。この主犯と思われる女性が自殺して事件は未解決のままだ。早いものでもう1年経ってしまった。

オウム事件にも似たような所があったが、あちらは一応宗教という形をとっていた。人の心の闇に潜り込み、自分の思うように他人をコントロールして犯罪に引き擦り込む・・どこかで読んだ物語だ。まるで、浦沢直樹のMonster。こちらの主犯は美少年だが、尼崎はどっから見ても普通のおばちゃん。亡くなった方には申し訳ないが、なんでこんなオバハンにという印象だった。

まぁ、余りに奇々怪々な事件が起きるより、現実には小説を追いかけてもらう方がいいのかもしれない。こんなこと本当に起きるんだというよりは小説に驚いている方が気楽である。
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