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私達動物の息の仕方とその歴史

両生類の呼吸ーその5

2025-03-12 16:23:30 | 日記
両生類の呼吸―その5
カエルの循環器
前回は皮膚から吸収された酸素量を推定しました。今回は特にカエルの循環系では、皮膚からの酸素と肺からの酸素がどのように全身臓器に行き渡るのかということについて考えてみました。

肺の構造は隔壁のほとんどない単純な袋状のため、換気の面積が小さくて効率が悪いので、皮膚呼吸に大きく依存しています。

カエルの血液は2心房1心室の心臓から呼吸器官(肺と皮膚)を経て全身へながれます。
肺へ流れる血液は、右心房→心室→肺皮膚動脈→肺→肺静脈→左心房→心室→全身と流れています。

肺皮膚動脈を通り皮膚で酸素化された血液は動脈に合流して臓器へ酸素を運ぶのでしょうか(図の①)、それとも左房に流入して肺からの血液と一緒に全身へ流れるのでしょうか(図の②)。

①のルートは酸素化された血液がそのまま全身臓器へと運ばれるので効率の良い循環です。②のルートは全身の皮膚から酸素化された血液を心臓へと運ぶというそのためだけに血管系が必要になります。心臓に戻す利点も考えられません。教科書や文献を調べてみても②のルートはないようでした。
おそらく①のようなルートで皮膚から直接体循環に合流すると考えられます。
すると、肺からの血液と全身から戻った静脈血とが心室で混合して大動脈に流れたあと、途中で皮膚から来る酸素化された血液と混合されることになります。

さて、カエルなどの両生類の心臓には心室が1つであるために酸素化血と静脈血が混合するので、しばしば不完全な構造の様に記載されます。というのも、この心臓では一部の血液は心室→肺→左心房→心室と循環するからです。
それを避けるには、1つには哺乳類のように2心房2心室とするか、もう1つはイカやタコのエラ心臓と体心臓のように、肺の前と後に1心房1心室の心臓を置く構造があります(水中の呼吸18参照)。
けれども循環の途中で皮膚から酸素を吸収する機能があるなら、心室が1つであることは合理的で、無駄のないシステムと思われます。前回に推定した皮膚から吸収された酸素は、肺で取り込まれた酸素とたし合わされて全身臓器に行き渡るでしょう。
爬虫類、鳥類、哺乳類が持っていない皮膚呼吸という呼吸器官があるために、2心房1心室は適切な循環構造と考えられました。

なお②の様に、皮膚から酸素化血液が心臓に戻るような循環路が示されている文献があればコメントにお知らせください。


参考文献
松井正文 両生類の進化 東京大学出版会 東京 2012
シュミットニールセン 動物生理学 東京大学出版会 東京 2007



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