今回は少し定量的な話をしてみます。
▶対向流交換系
エラの酸素の吸収、鰾(うきぶくろ)の乳酸と炭酸ガスの移動、血合い筋の熱移動、その他多くに使われている対向流交換系がどれだけ効率が良いかをみるために、前回の奇網の図をモデルにして並行流と対向流について計算してみました。
移動するガスは酸素としましょう。
モデル:並行して接している2本の管に水が流れ、水中の酸素はその壁を透過して、隣接する管にだけ移動することができる(他への漏れがないということ)。
・管壁を通して管1と管2の酸素濃度差に比例して高い方から低い方に酸素が移動する。
・単位長さ当たり、単位濃度差当たりの酸素透過係数をkとする。
・管を流れる流量Q(L/秒)の時間変化はなく、管に流入する濃度Cの時間変化はない。
・管1に流入する酸素濃度をCiとし、管2に流入する酸素濃度は0である。
以上の条件で、並行流と対向流についてみてみましょう。
図の下方のグラフを見てください。
実線が管1の酸素濃度の変化を表し、破線が管2の濃度変化です。
k/Qは酸素の移動しやすさの指標で、透過率kが高いか、流量が小さい(流れがゆっくり)ときに酸素の移動がいい。
ここでは、酸素の移行の良い条件のk/Q=5で比較します。グラフの矢印は管1と管2の流れの方向を示しています。
〇並行流(左のグラフ)では
管1の酸素は管2に移って、その濃度は初期値の1/2に低下し、管2の濃度も最大で1/2まで上昇する。管1の酸素は半分までは管2に移る。出口(x=L)ではどちらの管も管1の酸素濃度の半分になっています。
〇対向流(右のグラフ)では
管1の酸素は管2に移り、濃度は管1の出口(x=L)で0.15まで下がり、逆に流れる管2の濃度は0から0.8まで上昇して、出口(x=0)では管1の酸素の8割が管2に移っている。
この簡単なモデルでも、並行流に比べて対向流ではとても効率よく酸素を移動させることがわかります。
体温の維持でも血合い筋の中でこれと同じように、対向流が効率よく熱を移動させているのです。
哺乳類の肺でもこれと同じようなモデル計算すると、効率のいい場合に血液中の酸素濃度が肺胞内の濃度になって、実測と一致することがわかります。(哺乳類の項のときに示します)
今回は、酸素の移動を例にしましたが、濃度差に比例して酸素が浸透すること、浸透のしやすさを示す透過係数kは組織により異なることは、今後の話題でも時々使います。
参考文献
魚類生理学の基礎 恒星社厚生閣 2013年
キャンベル生物学 原書11版 2018
ガイトン生理学 原書11版 2010
道具としての微分方程式 BLUE BACKS 1998 講談社
化学実験法 II - Kyoto U
(URL:kuchem.kyoto-u.ac.jp/ubung/yyosuke/chemmeth/chemmeth05.pdf)
▶対向流交換系
エラの酸素の吸収、鰾(うきぶくろ)の乳酸と炭酸ガスの移動、血合い筋の熱移動、その他多くに使われている対向流交換系がどれだけ効率が良いかをみるために、前回の奇網の図をモデルにして並行流と対向流について計算してみました。
移動するガスは酸素としましょう。
モデル:並行して接している2本の管に水が流れ、水中の酸素はその壁を透過して、隣接する管にだけ移動することができる(他への漏れがないということ)。
・管壁を通して管1と管2の酸素濃度差に比例して高い方から低い方に酸素が移動する。
・単位長さ当たり、単位濃度差当たりの酸素透過係数をkとする。
・管を流れる流量Q(L/秒)の時間変化はなく、管に流入する濃度Cの時間変化はない。
・管1に流入する酸素濃度をCiとし、管2に流入する酸素濃度は0である。
以上の条件で、並行流と対向流についてみてみましょう。
図の下方のグラフを見てください。
実線が管1の酸素濃度の変化を表し、破線が管2の濃度変化です。
k/Qは酸素の移動しやすさの指標で、透過率kが高いか、流量が小さい(流れがゆっくり)ときに酸素の移動がいい。
ここでは、酸素の移行の良い条件のk/Q=5で比較します。グラフの矢印は管1と管2の流れの方向を示しています。
〇並行流(左のグラフ)では
管1の酸素は管2に移って、その濃度は初期値の1/2に低下し、管2の濃度も最大で1/2まで上昇する。管1の酸素は半分までは管2に移る。出口(x=L)ではどちらの管も管1の酸素濃度の半分になっています。
〇対向流(右のグラフ)では
管1の酸素は管2に移り、濃度は管1の出口(x=L)で0.15まで下がり、逆に流れる管2の濃度は0から0.8まで上昇して、出口(x=0)では管1の酸素の8割が管2に移っている。
この簡単なモデルでも、並行流に比べて対向流ではとても効率よく酸素を移動させることがわかります。
体温の維持でも血合い筋の中でこれと同じように、対向流が効率よく熱を移動させているのです。
哺乳類の肺でもこれと同じようなモデル計算すると、効率のいい場合に血液中の酸素濃度が肺胞内の濃度になって、実測と一致することがわかります。(哺乳類の項のときに示します)
今回は、酸素の移動を例にしましたが、濃度差に比例して酸素が浸透すること、浸透のしやすさを示す透過係数kは組織により異なることは、今後の話題でも時々使います。
参考文献
魚類生理学の基礎 恒星社厚生閣 2013年
キャンベル生物学 原書11版 2018
ガイトン生理学 原書11版 2010
道具としての微分方程式 BLUE BACKS 1998 講談社
化学実験法 II - Kyoto U
(URL:kuchem.kyoto-u.ac.jp/ubung/yyosuke/chemmeth/chemmeth05.pdf)
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