妻が、まだ随分と若い頃の話で、隣の畑から、間にある塀を超えてイチジクが枝を伸ばしていた。
妻は洗濯などでよく使う場所であったが、イチジクの枝に沢山の毛虫が、それこそ鈴なりのようにたかっていた。
妻は知らないうちに毛虫から刺されて、手や顔が腫れてしまった。
それを見て父はすぐに隣の家に行き、状況を説明した。
後日隣は菓子箱を持ってきて、伸びていた木を切ってくれた。
親父のしたことを私が同じようにできるかと言えば、私にそれほどの核心はない。
親父はそうやって、子供の時から父を戦争で亡くし、家長として家や家族を守ってきたのだろう。
親父には私にできない家族を守る気迫を感じた。
親父の後姿を思い出す。
☆彡関係ないけど 村上春樹
➣パン屋襲撃
・窓の外では無音のうちに樹木が・・ヒマラヤ杉と栗の木だ・・まるで痒みに耐えかねる犬のようにその身をくねらせ、雲のかげから目つきの悪い密使のように大急ぎで空をかけぬけ、向かいのアパートのベランダでは何枚かのシャツが置き去りにされた孤児のようにビニールのロープにぐるぐると巻ついてしがみついていた。