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誰も知らない厚生年金基金-代行返上前のドキュメント →27

2010年11月23日 | 厚生年金基金

更に、投資運用技術会社2社等。

⑦Atlantic Financial社
・独立系のフィデリティの関係会社で、株、債権売買仲介、定年退職関連サービス、ベンチャー・キャピタルへの投資などを事業としています。
・アトランテック・ファインナンシャル社は、社員3人だけの企画会社(プレゼンテーションを我々にしたのは30代の社長)で、実務はクリアランスハウス(決済事務代行会社)に委託しています。アメリカにはこの手の専門のクリアランスハウスが多数あるようであります。幾つもの会社のバックオフィスを兼ねているということ。例えば、日本でも各社共通の業務(給与計算・社会保険・労災・安全衛生・納税・採用・資金決済等々)というのはたくさんあるのですから、バックオフィス専門の会社があってもいいのですが。
垂直統合的に社内に抱え込む雇用確保を目的とした会社(?)が多すぎます。
・スピーチワーク社とのパートナーシップにより音声認識テクノロジーも提供。
・定年退職に向けての社員教育や種々の資産管理・形成に関するプランへの参加を促しますようにサポートもしています。
・教育課程において、自動化された電話サービスへのアクセス、資産形成計画や運用結果のチェックなどについて学ぶことができるようになっています。
・日本の401(k)導入に際して、進出できるだけの技術を持っていると自負しています。
その技術とは、<個人ベース>の資産運用計画、資産運用教育、資産運用管理を可能とする技術(Web.音声認識等)であるといいます。
・Web.は<www.atlanticfinancial.com>です。

⑧SpeechWorks社
・1994年創業の社員130名の非公開企業で、インテル等から資金提供を受けて経営されています。
・スピーチワークスのソリューションはMITでの研究をベースに、それをライセンス供給 された形で実現。
・モルガン・スタンレー・ディーンウィッター、シンガポール証券取引所、イー・トレードなどが音声認識テクノロジーを組み込んだ電話での投資サービスを導入しています。
・スピーチワークス社のビジョンは、電話で話すようにコンピューターとしゃべること。
この技術は既に様々な場面(イートレイド、病院、航空等)で使用されているが、401(k)の教育、管理、回答等の場面でも使用されています。
・ベースとなるエンジン(技術)は、初めに女性の肉声を母音・子音のレベルにコンピューター的に分解・蓄積。応答する時に蓄積された母音・子音を会話として合成するという技術であるといいます。
・このような転換の技術の別の場面で、日本のベンチャー・キャピタル:マーケット・メーカーズの服部さんはエクセルの<セル>を使って達成するというのをこの旅行に出る前に聞いたばかりでありましので、女性の肉声を母音・子音のレベルに分解するというア  イデアは非常に面白いと思いました。
・このスピーチワークスの技術は、幅広くハードウェアに対応、数千の電話回線で使用可能、 マルチ言語対応ということで、日本企業向けに可能性が大きいです。金融機関、年金基金、公的機関、サービス業等々で使えるのではありませんか。
・401(k)のコンセプトは、<Individual>(個人)ですから、基盤の哲学は自己の十全の開花を標榜する自由主義であり、それを成就させるためにインセンティブとかテクノロジーが絡まることになるのでしょう。
・Web.は<www.speechworks.com>です。

⑨日本経済新聞社米州編集総局年金担当:越中記者による現地401(k)セミナー
・DB(確定給付型)は過去のものになりつつあるのがアメリカの現実。DBはキャッシュ・バランス・プラン(混合型)に移行しつつあり、DCが隆盛を極めています。そのDCにはストック・オプションやマッチング拠出等のインセンティブが常識になっています。
・キャッシュ・バランス・プランの利率は予定利率を使わず、市場利回りを使用。といいますことは、マーケット・プライスが年金給付を決定するということになります。このことから、高齢従業員の給付引き下げが現実のものになり、訴訟問題も発生しています。逆も当然、あるのでしょうが。
・DBは従業員が定年まで勤務することを前提に設計されているが、最近の労働市場の流動化で実態にそぐわなきているのも、ポータビリティのある混合型が増えている一因でしょうといいます。
・主催者の友人ということでこのセミナーに参加したアメリカ大和證券の大井会長は、入社以来続いている海外勤務(ヨーロッパ・アメリカ)の経験から欧米人のものの考え方が401(k)に典型的に示されているといいます。
・米国では、DB(確定給付型)は既に<死に体>となっているというのが筆者の感想。

   ⑩「プラン・スポンサー」誌
・「プラン・スポンサー」誌は、他に「グローバル カストディアン」誌を出版しているアセットインターナショナル社の年金専門誌であり、中立的な特集記事を中心に編集している月刊誌です。
・主催者がヒルトン・ホテルの1室に用意した会場に、約束していました「プラン・スポンサー」誌のチャールズ・ラツフェル主幹(筆者は東京のセミナーで2度ほどお会いしている)はドタキャンで姿を見せず、替わりに女性編集長のメレディス・ヒューズとTSUNAMI社の松前社長が現われました。
・同誌は、東京で過去に3回、最先端のエキサィティングな年金セミナーを開催し、4回目を開催(6月16日・17日)すべく準備中であり、皆さんを招待するといいます。
・DB並びにキャッシュ・バランスは、DCだけの場合のリスクのブレに対するヘッジとして機能している面もあります。
・DCプラン誕生の事情は、1980年代に大きなDB年金債務が発生、併せてベビーブーマーの出現、労働市場の流動化、小さな政府・企業のコスト削減要請等が生じ、新しいフレーム・ワークがもとめられていました。きっかけは、保険のセールスマンがエリサ等の法規制を読んでいるときに、法規制されていない或る仕組みを発見したことに始まると聞いています。
・ エディケーション・プログラムの中立性を確保するのが大変難しく、訴訟になりやすいということです。
・「プラン・スポンサー」誌の編集方針もアドバイスではなく、中立性確保を目指しています由。この点についてはかなり神経質な対応が多いです。
・<完璧なものは世の中にはありえず、完全な答えは存在せず、常により良いものを目指している活動だけがある>と、松前氏の言。日本の官僚はこういう度量のある考え方はしません。常に決定論です。
・東京で来週開催される「年金セミナー」について松前氏からAGENDAの説明があった。
・「プラン・スポンサー」誌では、近々ウェブ(www.japanpensions.com)で日本の年金スポンサー向けの日本語の情報提供を行う由。


(3)取り敢えずの401(k)論

●401(k)エンジンの仕掛け
このたびのアメリカ旅行で奇妙な印象として残ったことに、「YesではなくOK! 」というのがあります。飛行機の中でもプレゼンテーションでも街中でも、聞こえてくるのは男女を問わず「OK! 」という短い叫びのような言葉。

考えてみるに、日本人は「Yes」とは「はい」ということですと教えられてきました。

しかし、「Yes」と言って立ち上がる人はいないが、「OK! 」は次の行動の予告といいますか、「OK! 」と言う人は、そう言うと同時にもう向こうに行ってしまっています。

スピードがまったく違います。「Yes」の場合は、直ぐに行動が伴いません、あるいは遅れて行動が出てくる、最悪の場合はただ聞き置くだけで一切行動が生まれないこともあるようです。

この違いは、何なのでしょう?

現在の日本で「OK! 」と言う人はいるのでしょうか。1億総「Yes」マンなのではないのか。日本語になっている「イエスマン」はどういう人間か別にして、行動しなくなってしまいました日本人、本来の意味の行動、自己のポリシーで動く人がいなくなってしまったのではないでしょうか。明治の人間、それに戦争直後の経済的混乱期の人間に「OK! 」と言う人がいたのではないでしょうか。

今の日本人は「Yes」と答えて、深く沈潜してしまい、マイナーなものに呪縛されて身動き出来なくなっているのだろうか。そうであっても、マイナーなものはいつの世にも何処にも必ず在るものですが、それを巻き込んでプラス思考をさらに一層拡張・拡大・展開していくのが、「OK! 」という言葉の意味なのではないでしょうか。
立ち止まることを知りません「OK! 」という文化は、マイナーなものをロスカットし置き去りにして、次から次にと切磋琢磨の試行錯誤を繰り返して新規の更に一層ベターなものを創り上げるべく動きまわることになります。これが<アメリカン・スピリッツ>の背景にある個人の十全な開花に神の意志を見る個人主義(Individualism)の神髄ではないのでしょうか。

401(k)プランはこのような土壌のうえに、米国政府の小さな政府を目指す社会保障費削減策とDBの積立不足に苦しんだ企業のリストラ策とが<フレーム・ワークキイタームにして集約されましたフレーム・ワークでしょう。そのうえ、401(k)プランは個人ベースのテクノロジー開発と政府・企業によるインセンティブ付与が相まってプラン発展のエンジンが高速回転することになったようです。

この辺の好循環を『負けない年金』(http://www.nenkin.co.jp)の「日本版401(k)プラン構築に向けて」で、村田純一氏は次のように見事にまとめています。

「トータルベネフィットの中の401(k)プラン」という企業のべ
ネフィット戦略は、課税繰り延べの支援策をうけて、従業員報酬水準
の維持=国際競争力獲得=企業業績向上=マッチングインセンティブ
強化=従業員モラル向上=生産性向上といった、楽しい循環をもたら
しているのではないか。

 おそらく、米国の企業は1980年代のDBの積立不足という苦い経験をしたうえに、資本の効率性の観点でDBのコストが「顔の見えない」コスト、金を注ぎ込む割には従業員が余り承知しない制度であることに対しても苦い経験をしたのでしょう。DBのフレーム・ワークがDCに比してハイコストであることを、ちょうど日本の代行型の年金給付が加算型のそれに比してハイコストを含有していることを経験・認識させられるように、制度そのものが持つ経済効率上の欠陥に気がつくことになったのではないでしょうか。

DBとDCで、同じ「金」の経済効果が明らかに違う場面に遭遇すれば、資本は自然に有利な方に流れていくでありましょう。DBの<顔の見えない>全体資産管理方式では資本は吸い取られるばかりで効果が余り表に出てこないのに対して、DCの<顔の見える>個人勘定というフレーム・ワークは金を入れれば入れただけの見返りがただちに表面化するのです。DCの器であれば、企業のマッチング拠出、ストック・オプション、自社株取得推奨、報酬の市場調達、株式連動報酬、寄贈基金等が、インセンティブ手段として機能することになり、DBのコントリビューション・ホリディによる余資もそれに振り向けることも出来るようになります。

要するに、401(k)プランは<Individual>をキイタームに、インセンティブ付与がダイナモとなり、個人ベースのテクノロジーとエデュケーション(教育・啓蒙の戦略)が相まって高速回転エンジンと化するのです。その結果、経済が活性化されるという循環が成立することになります。



図表41 401(k) プランのエンジン





これが現在アメリカをエキサィティングにしている401(k)プランのエンジンの仕掛けでしょう。

401(k)の金は「資本」となって米国の1万ドル株式市場に活況を提供し、上図の様な経済全般の好循環を作りだしています。

これに対して日本人風にマイナス思考を作動させて、「危惧」を考えれば、株式市場崩壊のときにしたたかさがどれほど組み込まれていますかであるが、それは一にエデュケーション次第であるといいます。

この401(k)エンジンの今一つの凄味は、この仕掛け全般が「民間活力」で行われているということです。官僚の口出しは優遇税制の一点のみであり、他は全て社会全般を巻き込んで民間の智恵・技術・インフラ・民意等によって<民-民の圏内>で達成されているということです。役人嫌いのアメリカ人のアメリカン・スピリッツが十全に開花した仕掛けとなりおおせていると言えるでしょう。

ことによると、「民間活力」という概念は抽象的な役所言葉であって、インセンティブ(誘発、刺激、動機)、誘導策、優遇策・・・・・・・という言葉のほうが的確な現実的概念であるのかも知れません。1週間のアメリカで「インセンティブ」は何10回となく聞きましたが、一度たりとも「民間活力」とは聞かなかったのは、そういうことを意味しているのでありましょう。

●終わりに
百聞は一見に如かずと言いますが、このたびの米国401(k)調査旅行は、文字通り現場の一見により多くのことが背景・事情・哲学等と共に明らかになり、国内の多くの誤報・デッチアゲ・考え違いも明らかになりました。

1週間、非常にエキサィティングに過ごし、啓発・触発されたことが無数にあります。中でもアメリカという国が人に強烈なエネルギーを与える国ですという発見は、まもなく60歳になります筆者を20歳の若者のように感激させました。それらは、未だに唸りを発していて、この旅行記に納めまとめるのに1ケ月も要してしまいました。

筆者にとって、この旅行は、1/4世紀に渡る基金業務の経験、1,000冊になる金融関係読書、年金ビジョンの論理成立等のフィナーレを飾るに相応しい、楽しくエキサィティングなイブェントとなりました。



【出所:「米国401(k)調査記録」 平成11年】




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