第2章 秘術・年金履歴書
社会保険庁では、平成9年(1997)に公的年金共通の「基礎年金番号」制を採用しましたが、以後、基礎年金番号で管理されていない年金加入記録の年金手帳の記号番号を調べています。「年金手帳の記号番号調査のお願い」という文書を年齢の高い順に個々人に郵送していますが、対象者は千万人の規模ですから、いつくるか、届くだろうか、という受身の状態です。
お上からのお尋ねを当てにしていては、日が暮れてしまいます。ここは、積極的にご自分で「年金お調べ」といきましょう。
「年金お調べ」の第一歩は、「年金加入期間確認」です。これを成功させるための「請求もれ年金発見の秘術」が、次にご案内する「年金履歴書」の作成です。
(1)年金履歴書の作成
詳細にこの年金履歴書を作成して、社会保険事務所等で年金加入期間確認を行えばよろしいのです。
①氏名等
はじめに、氏名等の欄をしっかり記入しましょう。社会保険事務所等のコンピューターで検索をかけるとき、カタカナ氏名と誕生日で行います。旧姓があるとき、要注意です。とくに、男性の場合。また、名前を誤って読まれるときなどはそれを記入します。例えば、「和子」はカズコとフリガナし、誤読名にカヅコと記入しましょう。清音や濁音も明確に書きましょう。更に、誕生日が何らかの事情で幾つかある人はそのすべてを書きます。
②職歴等
職歴は古い順に、無職の期間も含めてすべて記入します。
会社名は、本社・本店所在地とか、勤務先の営業所・工場名とかも記入します。親会社名で登録されている場合もあります。同じ会社で、単身赴任とか、転勤も書き込みます。とくに、海外派遣等、落としがちです。
倒産・解散等であっても会社が保険料納付していれば、記録されています。
会社名を忘れていても、どんな仕事であったか、業種名を書いときます。自分で年金はなかったなどと勝手に決め込まないですべて書き込みます。
アルバイト・パート・フリーターでも、年金加入がある場合もあります。
国民年金加入期間については、その時期の住所をできるだけ詳しく書きます。
共済とか船員保険とか農林年金とかも記入します。ただし、共済についての年金加入期間確認は各共済組合でないとできません。共済組合の事務所に「年金加入期間確認通知書」を請求してください。
年金番号等のわかっているときは、その番号を記入します。
年金加入期間確認のための年金履歴書ですから「事実」を記入します。誰からも、どこからもとがめだてなどありません。
ともかく、無職の期間も含めて全職歴を網羅しなければ、この「年金お調べ」をする意味がなくなります。全職歴を網羅するところが秘術です。これは、あなたご自身以外、誰にもできないことなのです。つまり、あなたご自身の次のライフ・ステージに向かっての棚卸をするということになります。
職歴がいっぱいあって用紙が足りなかったら、ご自分で工夫されて継ぎ足してください。
③特記事項
特記事項も、該当がある場合はしっかり記入します。結婚もすべての結婚の記録を書きます。とくに、女性の場合等で以前の結婚の事実を確認するため、「原戸籍(げんこせき)」が必要になる場合もあります。
さあ、あなたご自身の「年金履歴書」(次のページ)を書いてみましょう。
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(2)社会保険事務所で年金加入期間確認
社会保険事務所等では、厚生年金のほかに、国民年金、船員保険、農林年金の一部、NTT・JR・JTの3共済、厚生年金基金等の年金加入記録を調べることができます。ただし、共済は、各個別共済組合の事務所になります。
実際の年金加入記録確認は、次のような要領で行われます。
①原則本人が社会保険事務所等に出向いて年金相談員に確認依頼をします。代理人は、この年金加入記録確認については、職歴等の細かいところが分からないので、適当ではありません。たとえ妻であっても。ここは、人任せにしないでご自分が出向くべき性格のものです。こういう肝心なところで、手抜きをする人が請求もれ年金につながり易いのです。
持参すべきものは、まずは基礎年金番号通知書、タンス預金している年金手帳、国民年金手帳、厚生年金保険被保険者証等、いずれか。年金の番号の記載されているすべての資料。ついで、前ページの「年金履歴書」。更に、印鑑、古い給与支給明細書・国民年金保険料の領収書等あればそれを持参。
②はじめに、年金相談員が氏名(カタカナ)と和暦誕生日を社会保険庁の端末コンピューターに入力して基礎年金番号を確認します。
③次に、氏名(カタカナ)と和暦誕生日、旧姓、別誕生日等を入力して、別番号候補を検索します。それを、年金履歴書、または口頭により確認を行います。会社名等が一致すれば本人の記録と判断されます。会社名を忘れている場合は、社名の頭文字だけ言われるので、ここが勝負どころ、なんとか思い出すことが肝心です。クイズみたいな場面になりますが、結構みなさん思い出します。
④そのうえで、年金履歴書に書いた全職歴の年金加入が確認されたかどうか、チェックします。コンピューターでは確認できない記録もありますので、その場合は、「被保険者期間・年金手帳記号番号調査申出書」という書類に未確認分を記入して調査依頼をします。1ヶ月ほどすると、その会社等を管轄する社会保険事務所から文書で回答があります。加入が確認されたら、番号の統合が必要になります。
⑤本人の加入記録と確認された番号は、その場で年金相談員が統合の手続きをします。多数の番号が明らかになる人もおります。古い記録が出てきたときには、みなさん驚きの声を出します。
⑥最後に、すべての番号の「被保険者記録照会回答票」を打ち出してもらい、年金の種類と総年金加入月数を把握しましょう。後段の「あなたの成功報酬」のために、新たに発見された月数を記録しときましょう。
(3)年金見込額の確認
現行、社会保険事務所では、55歳以降、厚生年金や国民年金の年金見込額を本人の申出により提供しています。代理人の場合は、委任状が必要になります。
60歳時、定額部分開始時、それに老齢基礎年金開始時の3回について年金見込額をコンピューター計算してくれます。年金加入期間確認が終了して、すべての年金番号が統合されて55歳になったら、計算を依頼しましょう。下の票のような、回答票を打ち出してくれます。
一般的に、60歳時の報酬比例部分支給開始額を見て、まず? ついで定額部分支給開始の年金額を見て、一様に愕然とされます。
こんなに少ないの! というわけです。
これが、更に、厚生年金基金加入のある人の場合ですと、基金加入期間中の報酬比例部分は基金から支払われるのでもっと少額になるのですから、一瞬青ざめます。当然、基金のことを説明すると納得されますが。それにしても・・・・・・・。
65歳の老齢基礎年金開始の場面でも混乱が生じます。
実際に、国民年金加入がないサラリーマンの場合ですと、65歳前後では年金額は同一で名前が変わるだけですと説明されても納得いただけないのが普通です。制度分立の複雑さでしょう。
ともあれ、これで厚生年金は3回も年金額が変わることが確認できました。一方、厚生年金基金は、当該基金か、厚生年金基金連合会かの別がありますが、年金額が変更になることは原則ありません。
最後に、夫婦単位の年金見込額を次ページの表に取りまとめ、「家計の年金推移」を記入すると、あなたご自身の次のライフ・ステージの経済的基盤が確認できます。
夫の年金 氏名( ) 誕生日( 昭和 年 月 日) |
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夫 |
年金区分 |
60歳 |
定額分開始( )歳 |
65歳 |
厚生年金・ 報酬比例部分 |
円/年 |
円/年 |
円/年 |
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厚生年金・ 定額部分 |
― |
― |
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厚生年金・加給年金 |
― |
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基金・基本年金 |
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基金・加算年金 |
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連合会・代行年金 |
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確定拠出年金 |
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国民年金 (老齢基礎年金) |
― |
― |
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計 |
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妻の年金 氏名( ) 誕生日( 昭和 年 月 日) |
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妻 |
年金区分 |
60歳 |
定額分開始( )歳 |
65歳 |
厚生年金・ 報酬比例部分 |
円/年 |
円/年 |
円/年 |
|
厚生年金・ 定額分 |
― |
― |
||
厚生年金・加給年金 |
― |
|
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|
基金・基本年金 |
|
|
|
|
基金・加算年金 |
|
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|
|
連合会・代行年金 |
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|
確定拠出年金 |
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国民年金 (老齢基礎年金) |
― |
― |
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計 |
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家計の年金推移 夫・誕生日( 昭和 年 月 日) 妻・誕生日( 昭和 年 月 日) |
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夫 |
妻 |
夫の年金 |
妻の年金 |
合計 |
60歳 |
歳 |
円/年 |
円/年 |
円/年 |
61歳 |
歳 |
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62歳 |
歳 |
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63歳 |
歳 |
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64歳 |
歳 |
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65歳 |
歳 |
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↓ |
歳 |
同上 |
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歳 |
同上 |
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歳 |
同上 |
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歳 |
同上 |
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歳 |
同上 |
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*厚生年金加入であった夫死亡の場合、妻に遺族厚生年金(報酬比例部分の75%)が支給されます。
(続く)
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