『人様のお金』
Other People‘s Money
厚生年金基金って、何んだ?
平成12年8月脱稿
高野 義博
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第4章 厚生年金基金経営上の諸問題
(3)代行の金縛り
⑤代行の本旨
厚生年金と退職金の調整という代行方式は、フレームワークの観点から国の社会保障制度の一環としての社会保険と位置付けるか、民間企業の従業員福祉・厚生なのか、立場により議論の分かれるところです。といいましても、代行方式であるかぎりそれら両方の性格を併せ持っているというのが現実でしょう。その現実が代行問題を複雑にしているということもまぎれもない事実です。加えて、政治と行政介入による制度維持が複雑さを増進させてしまいました。<調整年金>などという政・官・民の現実癒着的な妥協が許され、それなりに機能しました制度発足時の国民意識は30年の時の経過につれて深まり広がったのでありましょうか。その点では、代行を担保した制度ゆえに官僚の過剰なかたくなな行政介入を容易にし、逆にそれが国民の依存体質を増してしまったのではないでしょうか。危険な兆候ではありますが、官僚自身に解決すべき責任があるとさえ考える自主・自立心の欠落した国民意識を醸成してしまったのではないてしょうか。
このように、社会保障と企業福祉の性格を併せ持ってスタ-トした厚生年金基金制度は、代行部分があるために国の社会保険行政との整合性を強要されてきたという背景を持っていました。併せて、確定給付制度ゆえに民間企業の雇用・賃金・人事等からの影響を直接受ける構造にもなっていました。この二つのフレームワークの現象とは別に、積立金が積み上がる迄はとくに問題にもなっていなかったのですが、不足金が恒常的になってくるにつれて隠されていた本来のものが顕在化しつつ基金制度(代行方式)の本質が徐々に明らかになってきました。
それはつまり、厚生年金と退職金の調整という機能を負託された代行方式は当初から合成の誤謬だったのであり、その内部に組み込まれていた積立金の性格について制度発足時には官僚にも企業にも金融機関にも認識不足・ミスリ-ドがあり、断定的固定的に一律5.5%の付利を予定するだけで足りるとみなし放り置いた経緯があります。日本人一般が資本などというものはガサガサといじりまわせば湧き出て来ると考える程度の傲慢な世間知らずな認識レベルでしたのであります。積立金を資本の価値、今風に言えばROE(株主資本収益率)やEVAの視点で見るなどということが全く無かったのであり、<積立金の資本性行>についての認識が欠落していたということです。このことが代行方式の頓挫を招き、凍結などという事態に立ち至ったということです。これは、完全に計画統制経済方式の裁量行政が立ち行かなくなったということになりましょう。
世界の中で行動する日本企業が、国内での閉鎖的な場を行政の力で作ることはア
ンフェアと言われても仕方がない。すなわち、行政指導によって国内業者の協調を
維持することは、閉鎖的な構造にならざるを得なくなる。透明性と開放性が要求さ
れる中、これを実現することが喫緊の課題となる。
吉田和男『官僚集権からの脱出』
要するに、代行制度の本旨は<資産運用マタ->であるということ。社会保険でも、退職金制度でもないですということ。携わるのは行政エリ-トでも、サラリ-マン・ゼネラリストでもなく、資産運用のスペシャリストになります。<政府マタ->でも、<運営マタ->でもなく<経営マタ->であるということです。一例として、日米のROEにそのような経営姿勢・経営手法の相違による格差が典型的に顕れていると考えられます。
主要企業のROE比較
米 国 日 本
マイクロソフト 43.9 NTT 12.6
GE 24.6 トヨタ自動車 6.0
IBM 35.1 東京三菱銀行 -
エクソン 12.6 本田技研工業 19.0
ウォルマ-ト 22.3 武田薬品工業 10.9
AT&T 18.8 ソニ- 9.8
インテル 28.8 松下電器産業 0.4
シスコシステムズ 32.5 住友銀行 -
コカコ-ラ 40.6 セブンイレブン 14.7
メルク 41.9 東京電力 6.2
出所)ビジネスウィ-クより大場昭義氏作成「1997.7.12 Global 1000 特集号」
資料)1999.11.24「週間東洋経済」臨時増刊 日本版401k完全解剖
筆者)現時点では日本企業のPERは逆に米国企業より極端に高い数値になっている。
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●ここまで、お読みいただきまして、誠にありがとうございました。
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惚けた遊び!
長い間、ご愛読賜り、ありがとうございました。
269回にわたって投稿してきましたが、終わりとなりました。
今後、この投稿分を一本のPDFにしてホ-ムペ-ジ「@年金」に掲載の予定です。
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【出所】高野 義博著『情緒の力業』第7章 瞑想的感応
![chikara](http://image.space.rakuten.co.jp/lg01/35/0000098235/94/imgdbba63b3zik9zj.jpeg)
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