故事成語でわかる経済学のキーワード中央公論新社詳細 |
歴史は繰り返すといいますがいくら技術や文化が進歩しても同じようなことは繰り返していくもの。昔の出来事から教訓を学ぶことを「温故知新」といいますがまさにその言葉がぴったり来る本です。
さまざまな故事成語の由来から現在の経済学のキーワードにあてはめて事例が解説されています。
「覆水盆に返らず」― サンクコスト
「先ず隗より始めよ」―ケインズと乗数効果
「白牙絶弦」-コミットメント
「三顧の礼」-長期的関係とインセンティブ
「朝三暮四」―フレーミング効果
など…
故事成語の由来と一緒に学べてまさに一石二鳥です。
なるほどと思ったのは「画竜点睛を欠く」で紹介されていた“ホールドアップ問題” ホールドアップ問題とはすでに行ってしまった作業に対して見込みどおりの対価が取れなくなってしまうこと。特にこの本では分業という視点で解説されていた。企業では分業で物事を仕上げていくことが多いがホールドアップの危険性があると分業の担当者が察知すると先に作業をして投資しなくてはいけない方は投資を控えてしまい、結果として分業の成果が得られないという問題が生じてしまいます。
これは会社の技術の習得でも言えて自分の勤める会社でしか使えない技能は積極的に身につけようとしなくなってしまいます。昔は終身雇用で会社にホールドアップされることはなかったわけだが今はどうなるか分かりません。その状況が士気を下がり、結局は分業に参加する人間の見返り(インセンティブ)をきちんと考えないと分業制度が破綻しますということ。
会議でどのようにすればいいかという意見を求める時もホールドアップを考慮すればストレートに聞くのではなく選択肢を出してそれに対する意見を述べてもらった方が良いとのこと。ストレートに聞くと自分に仕事が振ってきてしまうという懸念から消極的になる可能性があるが選択肢を出して質問者も多少なりともコミット(実行することを約束する)ことによって意見が出やすくなる?
会社ではよくありますね。