イノベーションの経済学 「繁栄のパラドクス」に学ぶ巨大市場の創り方
クレイトン・M・クリステンセン (著), 依田 光江 (翻訳)
クレイトン・M・クリステンセン (著), 依田 光江 (翻訳)
イノベーションと言えば…クリステンセン教授 ということで教授最後の先品となった繁栄のパラドクスを増補改訂して出したものです。
繁栄を得るために必要なのがイノベーション。イノベーションの中でも社会を変えていくには市場創造型のイノベーションが必要であることがメキシコと韓国、日本などの対比から指摘されています。イノベーションというとなんだか崇高なものというイメージですが特に市場創造型イノベーションを読み解くキーワードとして注目しているのが「不便」と「無消費」です。 T型フォードの例は非常にわかりやすいものですが固定電話を飛び越して携帯電話が普及したり、銀行を飛び越して電子決済が普及したアフリカなどもこの不便x無償日から生まれた市場創造型のイノベーションで本質的にはこういったところに注目すべきだということをわかりやすく解説してくれています。先進国のような成熟国であってもまだまだ不便による無償日というネタは多数ありそうなので持続的イノベーションで足元を固めながらも常にこういった市場を探る試みというんは必要なのかと思います。
あくまで経済学的な観点での発展というのを本書での成功に定義されているのですがGDPが成長しても自殺率が増えてしまった日本、韓国の例など経済的な発展だけがすべてではないというのはクリステンセン教授も認識していているようでした。ということで本書のタイトルはやはり繁栄のパラドクスというのが正しい感じもします。もちろん経済的に豊かになるのは重要ですが置いてけぼりにしない寛容さというのも社会では必要になってくるわけで「社会的な幸福感」とバランスとるのかが難しいところです。ただまず経済的に豊かにならないとそういったところにも手が回らないというのは一つ本書でも示唆されているところではありました。ということで経済書ながら新たな視座を与えてくれる本です。
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