
朝夕は幾分か過ごしやすい週末です。
自分の関わるメモリ半導体の世界でも高層建築が主流となってきました。(本格化する3D NANDフラッシュの量産競争)
だからというわけではありませんが建築技術のわかりやすい進化の一つである高層建築に視点を当てた本を読んでみました。新書ながら430ページぐらいあり図鑑のような迫力の本です。ただ高層建築を取り上げるというよりは歴史的になぜ高層建築を取り入れてきたのか?地域や時代ごとの背景と動機を明らかにしています。高層建築、主に100m以上となる建築物にスポットを当てた本です。
古代で言えばやはりピラミッドでしょう。今の技術でもあれだけの建造物を作るのは想像を絶する世界。日本でも前方後円墳といった巨大建造物が作られていたのはご存じの通り。これらの建造物は王様の威厳をアピールして国の統治のシンボル的な存在という役割を担っていたものと思われます。それからは一気に塔の時代に入ります。特に石造建築になりキリスト教の大聖堂というのはきれいに天国への入り口という意味合いでなるべく高いものが崇高であるという思想でした。イスラム教でもミナレット(光塔)という塔が作られ、礼拝を呼びかけるために使われています。今でもそれは変わってません。仏教でも五重塔に代表されるような権力の象徴であるような塔が創られるようになりました。
15世紀硫黄では都市での高層建築が発展しますが都市の中では高さに対する秩序、位置づけというのが求められるようになりました。ローマにおけるサンピエトロ大聖堂、ロンドン大火災後のセントポール大聖堂、パリの凱旋門、ワシントンの記念塔など都市のシンボルとしての建築が進みました。日本でもお城の天守閣は先頭のためとは言いながら都市を象徴する存在としての役割が大きかったように思います。
19世紀からはエレベータの技術も登場し、いよいよ居住空間として高層建築の時代が始まります。その先駆けとなったのはパリのエッフェル塔。技術的な進歩を示した明らかな例でした。もともとは取り壊される予定だったようですが電波塔としての役割を見いだされ現在に至ります。アメリカでもシカゴ、マンハッタンで本格的な高層建築の時代に入ります。そこで問題になってきたのは高層建築による日照権に問題。高さ制限が必要とされたのですが1916年にゾーン法という高さに対して壁面をセットバックさせることを義務付けた法律が成立します。そのころからエンパイアステートビルなど細長いビルが建築されるようになって来ました。日本はどうだったかというとせいぜい30m程度の建築が都心で建築されたぐらいで戦前で最も高い建物は国会議事堂の66mでした。
その後、高層建築は1961年に前述のゾーン法を改正して容積率制限という視点が入ってくることで大きく変化してきます。容積率一定の考え方では高い建物を建てるためには敷地に対して床面積を小さくする必要があるため高い建物ほど空地を大きく確保しなくてはいけなくなります。高い建物には十分な空き地を確保することが求められるようになり、空間環境としては大きく改善されるようになりました。日本は長らく高さ31m制限があったのですが1963年に建築基準法改正と容積率制限の導入、64年に東京一部に限定して高さ制限が撤廃されました。全国での撤廃は70年ということなので意外にも最近のことです。日本でも新宿を中心に200m超えの高層建築の建設が進み都庁243mその後の横浜ランドマークタワーが296mで最近、あべのハルカスが300mの大台に乗せました。ただ世界を見ると日本の高層ビルはすでにTop100にも入っておらず(電波塔の除くビルで)中東と中国での高層建築の建設が進んでいます、特にドバイと深センでは300m越えの建築だけで27棟、10棟もあります。まあ日本では航空法の制限で都市部では300m以上の建築が難しいというのもあります。ただ今後は人口減少を考えると指して高層建築が必要というわけではなくなってくるでしょう。 一方サウジアラビアでは1007mのキングダムタワーの建設も進んでいます(2019年)ここまで来ると雲を突き抜ける高さになりそうで、世界では確実に高層建築の競争が進んでいます。
タワーという面で言えば634mのスカイツリーは電波塔としてはトップです。ただ高層建築物という観点では完成しているドバイのブルジュ・ハリファ828mよりは低いものとなります。
写真は名古屋のスカイビューです。ミッドランドスクエアとJRセントラルタワーは日本では247mと245mで7,8位に入ります。
今後は新名古屋駅ビル(220m)、JPタワー(195m)、大日本名古屋ビルヂング(174m)の建設が進んでおり、今年と来年にかけて完成ラッシュを迎えます。なお名鉄百貨店の方も建て替えの予定があるとか。名鉄名古屋駅ビル(名鉄百貨店)再開発計画 いつまで続くかわかりませんがリニアの開業もあるので名古屋はまだ景気の良い方なのでしょう。
筆者も最後にフランスの作家ユゴーの言葉「1つの建物には2つの要件がある。建物の効用と美しさである。効用は所有者に帰属するものであるが美しさはすべての人に帰属する」を引用していますが全くその通りだと思います。都市景観はいまや高層建築に左右されるもので商業施設ではありながら都市の雰囲気というものを形作ってしまうものです。容積効果の提供という実用的な側面からこれからは公共性という観点がより問われることでしょう。
![]() | 高層建築物の世界史 (講談社現代新書) |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
自分の関わるメモリ半導体の世界でも高層建築が主流となってきました。(本格化する3D NANDフラッシュの量産競争)
だからというわけではありませんが建築技術のわかりやすい進化の一つである高層建築に視点を当てた本を読んでみました。新書ながら430ページぐらいあり図鑑のような迫力の本です。ただ高層建築を取り上げるというよりは歴史的になぜ高層建築を取り入れてきたのか?地域や時代ごとの背景と動機を明らかにしています。高層建築、主に100m以上となる建築物にスポットを当てた本です。
古代で言えばやはりピラミッドでしょう。今の技術でもあれだけの建造物を作るのは想像を絶する世界。日本でも前方後円墳といった巨大建造物が作られていたのはご存じの通り。これらの建造物は王様の威厳をアピールして国の統治のシンボル的な存在という役割を担っていたものと思われます。それからは一気に塔の時代に入ります。特に石造建築になりキリスト教の大聖堂というのはきれいに天国への入り口という意味合いでなるべく高いものが崇高であるという思想でした。イスラム教でもミナレット(光塔)という塔が作られ、礼拝を呼びかけるために使われています。今でもそれは変わってません。仏教でも五重塔に代表されるような権力の象徴であるような塔が創られるようになりました。
15世紀硫黄では都市での高層建築が発展しますが都市の中では高さに対する秩序、位置づけというのが求められるようになりました。ローマにおけるサンピエトロ大聖堂、ロンドン大火災後のセントポール大聖堂、パリの凱旋門、ワシントンの記念塔など都市のシンボルとしての建築が進みました。日本でもお城の天守閣は先頭のためとは言いながら都市を象徴する存在としての役割が大きかったように思います。
19世紀からはエレベータの技術も登場し、いよいよ居住空間として高層建築の時代が始まります。その先駆けとなったのはパリのエッフェル塔。技術的な進歩を示した明らかな例でした。もともとは取り壊される予定だったようですが電波塔としての役割を見いだされ現在に至ります。アメリカでもシカゴ、マンハッタンで本格的な高層建築の時代に入ります。そこで問題になってきたのは高層建築による日照権に問題。高さ制限が必要とされたのですが1916年にゾーン法という高さに対して壁面をセットバックさせることを義務付けた法律が成立します。そのころからエンパイアステートビルなど細長いビルが建築されるようになって来ました。日本はどうだったかというとせいぜい30m程度の建築が都心で建築されたぐらいで戦前で最も高い建物は国会議事堂の66mでした。
その後、高層建築は1961年に前述のゾーン法を改正して容積率制限という視点が入ってくることで大きく変化してきます。容積率一定の考え方では高い建物を建てるためには敷地に対して床面積を小さくする必要があるため高い建物ほど空地を大きく確保しなくてはいけなくなります。高い建物には十分な空き地を確保することが求められるようになり、空間環境としては大きく改善されるようになりました。日本は長らく高さ31m制限があったのですが1963年に建築基準法改正と容積率制限の導入、64年に東京一部に限定して高さ制限が撤廃されました。全国での撤廃は70年ということなので意外にも最近のことです。日本でも新宿を中心に200m超えの高層建築の建設が進み都庁243mその後の横浜ランドマークタワーが296mで最近、あべのハルカスが300mの大台に乗せました。ただ世界を見ると日本の高層ビルはすでにTop100にも入っておらず(電波塔の除くビルで)中東と中国での高層建築の建設が進んでいます、特にドバイと深センでは300m越えの建築だけで27棟、10棟もあります。まあ日本では航空法の制限で都市部では300m以上の建築が難しいというのもあります。ただ今後は人口減少を考えると指して高層建築が必要というわけではなくなってくるでしょう。 一方サウジアラビアでは1007mのキングダムタワーの建設も進んでいます(2019年)ここまで来ると雲を突き抜ける高さになりそうで、世界では確実に高層建築の競争が進んでいます。
タワーという面で言えば634mのスカイツリーは電波塔としてはトップです。ただ高層建築物という観点では完成しているドバイのブルジュ・ハリファ828mよりは低いものとなります。
写真は名古屋のスカイビューです。ミッドランドスクエアとJRセントラルタワーは日本では247mと245mで7,8位に入ります。
今後は新名古屋駅ビル(220m)、JPタワー(195m)、大日本名古屋ビルヂング(174m)の建設が進んでおり、今年と来年にかけて完成ラッシュを迎えます。なお名鉄百貨店の方も建て替えの予定があるとか。名鉄名古屋駅ビル(名鉄百貨店)再開発計画 いつまで続くかわかりませんがリニアの開業もあるので名古屋はまだ景気の良い方なのでしょう。
筆者も最後にフランスの作家ユゴーの言葉「1つの建物には2つの要件がある。建物の効用と美しさである。効用は所有者に帰属するものであるが美しさはすべての人に帰属する」を引用していますが全くその通りだと思います。都市景観はいまや高層建築に左右されるもので商業施設ではありながら都市の雰囲気というものを形作ってしまうものです。容積効果の提供という実用的な側面からこれからは公共性という観点がより問われることでしょう。
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