Takekida's log

千里の道も一歩から

運も実力のうち?‐Fooled by Randomness‐

2008-11-16 23:41:23 | Books
今日も天気は残念ながらすっきりせず雨の合間を縫っての練習。平地にも紅葉が降りてきて所々で目を和ませてくれます。写真はBIKERIDE中に見つけた銀杏の木です。

まぐれ―投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか
ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社

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日常生活や金融市場で「偶然」が果たしている役割と人間の心理について明らかにした本。運も実力の内というのはよく言うことですがそれ以上に「偶然」に人間は左右されやすいものだということを教えてくれる本です。
運は作り出すものなのか?運が実力を作り出しているのか?いつの時代も尽きないネタですが多彩な事象や独自の切り口で楽しませてくれます。

院時代の研究として乱数を用いて確率事象を表現するモンテカルロシミュレーションを利用していたこともありこういう使い方もあるのだと改めて認識しました。
感情が入ってしまうとリスクを計算できても活用しきれないのが人間化と思いますがモンテカルロSim.の結果は乱数など人間の手で制御できないパラメータを動かすために逆に言えば感情的にならない非線形な現象の「正解」を出してくれるものだと思います。

確かにこの本が書いているように中々理性的には判断できないものでそのことを理解しておくことが大きな間違いを起こさないポイントなのかと考えられます。
筆者のタレブ氏はオプション取引をロングするだけという得意な投資スタイルで知られるトレーダー兼大学教授です。

◆見えないリスク
 ほかの人が不幸な目にあったからといって自分の身にはそんなことは無いと信じてしまう。(自分の問題になるとリスクを過小評価してしまう)
 人間の頭は確率論にしたがって合理的に判断できるようで出来ていない。それは生理的なもの。今住んでいるのとは違う環境に対して最適化されているために心理を理解するためには確率論を用いることが出来ず感情にしたがってしまうこと(勘)が多いということを示してます。 

 一方で重大な過失が起こったときには初めから分かっていたと事象の起きた当時の事象を過大に見積もってしまうことが多々ありうる。このことを「後知恵バイアス」という。

◆歴史を数学的に考える
 成功率は対象の期間が短くなるほど低くなる。よって短期での売買はリスクが高く振り回されるだけになりそれだけ存する確率も高い。

◆不適切者生存の法則 
人は(特にトレーダーは)たまたま当たった法則を信じやすい傾向がある。
時代や世代が変わってくるとその法則が通用するとは限らず大きな変化を見逃してしまう可能性があり、理論から外れた結果が出ても現実逃避をすることが多い。
人間は都合のいい解釈をするように出来ている。
こういったトレーダーは短期では大儲けをする可能性があるため一時的には有名になり淘汰されないということが往々にしてある。これが進化と淘汰を超えるまぐれの力。

しかしながら5年10年というスパンで考えると淘汰されることが多い。(エルゴート性)

◆確率と心理バイアス
 確率よりも議論しなくてはいけないのは期待値。確率の低い事象には大きな利益が得られることが多く結果として期待値は高くなることが多い。よって統計で言うような外れ値を逆に利用することがポイントで筆者の手法。

このような稀な事象は統計学の分野ではゴミとして扱われてしまうことが多く、そのため市場の大きな変動(サブプライムのような)を見過ごしてしまうことが多い。
歴史に学ぶことは必要だが短期でなく長期の歴史に学ばなくてはいけない。

◆生存バイアス
そもそも成功してお金持ちになった人しか表舞台には出てこないので負の面が目に付かないことが多い。研究結果でも同じ。
一部の人の実績のせいでものすごく実績が良く見えたり母集団が多かったりするとそれだけで良い実績を出す確率が高くなり期待値も増加する。いずれは平均回帰で元に戻るが外れ値の際の儲けが大きいので目立つことはない。

◆プロスペクト理論
自分がどれだけ幸せかと感じるかは大域的な状態よりも局所的な状態の影響(微分値)を大きく受ける。利益よりも損のほうが影響は受けやすい。 
投資には心理的影響が大きいということ。

どうも投資の世界は自分にはなじまないというのが印象。ウサギとカメであればカメタイプなのだと思います。 
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