データ管理は私たちを幸福にするか?~自己追跡(セルフトラッキング)の倫理学~ (光文社新書) 堀内 進之介 (著)
自身は5年ほど前からスマートウオッチにて睡眠やトレーニングのアンリを続けてきた結果、ひとまず現状は把握できているのとトレーニングしすぎを防ぐという意味では効果が出せているのを実感しています。そんなセルフトラッキングはあくまで一見すると個人主義的ないし利己的な行為ですが他者、そして社会にも裨益する関係主義的で利他的なものにはなりうるのではというのが本書の提案。「巧く生きる」だけではなく、「善く生きる」ための方法の一つとしての自己追跡のススメです。
本書では人間の弱みである自制心の無さ=アクラシアと都合のよう情報のみを流す自己欺瞞に対して情報技術を用いたセルフトラッキング:定量化される自己=QSが自己のみならず他者との関係性を改善する模索が始まっていることが記されています。今まで自己利益のためだったものが拡張されることで社会全体の利害をよくする可能性がでてきているということです。ただデータ活用には根強い懸念があり、①新自由主義化、②測定‐管理化、③交換‐互酬化、④市場‐商品化、➄依存‐能力低下などが挙げられています。ただそもそも人間自体が完全に自立、自律しているわけではなく周りとの関係性の中で自己が定義されるということを踏まえれば関係的自律性を促すようなづ特性を補完するテクノロジーの活用が取り上げられています。例えばアドバイザーとしてのソクラテスAIなど。ただどうやって技術の中立性を担保するか?公平さを保証できるかというのはやはり難しいところになろうかと思います。技術とどのように付き合っていくか考えさせられた本でした。
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