組織サバイバルの教科書 韓非子 | |
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日本経済新聞出版社 |
論語で有名な孔子や兵法の孫子、人生論としての老子などと並んで韓非子も漢文の授業ではよく出てくるネタなのですが習っていた高校の当時は日本人に対して大きく影響を及ぼした「論語」意外は全くその位置づけや背景なんかはわかっていませんでした。改めてこの本を読むと先日の老子や孫子と並んで韓非子という本のStatusが明らかになって非常に面白い内容で当時もこんな解説があったもっとやる気が出たのかもと思ってしまいますが…
韓非子はまさに組織をどのように強くするかというのがテーマでもちろん国という組織に対して書かれた内容ですが今でいえば会社という組織に十分当てはまる内容なのかと思います。時代背景としては「論語」をベースにした信頼関係、精神論での組織運営というのがうまくいかないというのがあり、これをまっこうから否定して組織運営の理想形を議論したのが「韓非子」の内容になります。論語の考え方の弱さは①徳と信頼でした上下が結びついていないので現場の暴走を止めるすべがない、②自分を育ててくれた上司や先輩の悪や問題点を咎めたり是正することが困難になる というところにありそうです。これに対しての対抗策として会社で言えば成果主義を提言したような内容になっていて日本企業の流れ(家族的経営の停滞からの米国からの成果主義の導入)と似ているのかもしれません。まさに歴史は繰り返すということなのでしょう。論語で話されているような徳のある人間というのはそうそういないし続くものではない、そもそものスタンスが「君主も民も弱いヒト」なのだというところに立っており、その弱さを補完するのが組織制度なのだという考えです。
韓非子が組織を筋肉質に変えるために提言したのが「法」「勢」「術」の3つ。法というのは賞罰制度の整備と形名参同というような目標管理主義のような制度の導入の話。そもそもきちんと定義してい置けば判断に迷わないというのと飴とムチを使い分けるということになります。勢というのは権力のこと。二本の操縦桿という表現で表していますが刑と徳というものをうまく使い分けるということになっておりこれは法の活用を権力を以て浸透させるということになります。今の組織で言えば財力と人事権の2つに言い換えられるのでしょう。問題点は君主でなく家臣がこの制度を利用するようになってしまうと骨抜きにされてしまうという点。 術の方はこういった付け入りを防ぐための術であり、理想形としては何を考えているのかわからないのだけど権力は握っており、部下はその下で戦々恐々としているということが書かれています。7術として以下のようなものが挙げられています。
①臣下の行いと発言を付き合わせて、言行不一致の臣下を見つけ出す。
②罪を犯した者は、必ず罰して、君主の威厳を示すこと。
③功績をあげた者は、必ず賞して、臣下の才能を十二分に発揮させるようにすること。
④情報は、全て自分の耳で、直接聞き取り、臣下の主観を排除すること。
⑤紛らわしい言葉や、ややこしい命令を出して、臣下の能力を試すこと。
⑥知っているのに知らぬフリをして、臣下に確認し、臣下の知識を試すこと。
⑦反対のことを言ったり、やったりして、臣下の忠誠度を試すこと。
また注意すべき六微とは
①君主の権限を部下に貸し与える。
②部下が外部の力を借りようとすること。
③部下が似たことで騙そうとすること。
④部下が利害の対決に付け込むこと。
⑤内部で勢力争いをすること。
⑥敵国に干渉されること。
ということになり、権力は絶対性を維持せよということがポイントになりそうです。
法と術はセットにならないとうまく回らないものなのでしょう。結局こういった成果主義に近いやり方は日本の「論語」をベースとした風土ではいまいちうまく言った結果は出ていないというのがありますが論語をベースにした「徳治」と韓非子をベースとした「法治」はそれぞれとも良いとこどりすることにより多少はましにはなるのではと思いますがやはり絶対ではないというのが人の作る組織のはかなさというか不完全さを示しているように思います。理想形としては賞は「やりがい」というところに帰結できれば限られたパイを奪い合うのでなくうまく回せるようになるのでしょうが…
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