8時頃になると父は迎えに来ておりました。その途中私は天空を仰いで星を見る事が無上の楽しみでした。空は清く澄み渡って、真砂のように沢山の星がキラキラと、小さな光を輝かしております。時折T字形の星座が見えると「お父さん御覧なさい、私の名が天に書いてあります」(テレジアをローマ字で書くと、初めの字はTの字)と歓び、儚きこの世の事を打ち忘れ、ただ天上ばかりを仰ぎ見つつ、父に手を引かれて家へ帰るのでした。
冬の夕べについてお話しすれば、姉達がしばらく遊んでのち、代わる代わる「聖年紀要」とか「聖人伝」等をみんなに読み聞かせた後、また面白くて為になるお話しを聞かせてくれました。その間、私は父の膝の上にいますが、講和が終ると、父は私は眠らせるためのように、美しい声でメロディー面白く歌ってくださるので、私は小さな頭を父の胸のあたりに当てて、父が私が揺すっていました。終いに、私たちは、夕べの祈りをするため、膝をゆすりゆすり2階の部屋に入れられるのですが、そこに私の席が父の側に有って、私はこの熱心な父の祈りの態度をみて、彼の聖人たちがどういう態度をして祈りをせられるかという事を知るのに充分であると思います。
あとで私の身体がポリナに運ばれて、寝台の上に置かれます。その時、私は「今日はおとなしかったか、天主さまの気に入ったでしょう。いま私の側で天使達が飛び回って、私を護ってくださるのでしょうか」と訊ね、いつも「そうです」という答えでした。もし何の返事もなかったなら、私は夜通し泣いていたでしょう。そして、この問答が終ると、姉達は私を抱いてキスをして、あとで、灯りを消して部屋を出たので、小さきテレジアは、ただ一人闇の中に取り残されたのでした。
私は、幼い時から非常に臆病者でしたので、ポリナはこの悪い癖を矯正するために、いろいろと力を尽くし、良い習慣を養うようにしてくれました。ときどきわざと何かの用事にかこつけて、私一人を離れた寂しい部屋に行きなさいと命じますので、私は嫌といっても許してくれない事を知っていますから、恐る恐る行っていましたが、こういう習慣が私のために大変有益になり、今日では私を怖じ気、恐れさせる事が難しいようになりました。これは全くの御恵みであろうと思います。あなたがどうして私を少しも甘やかさずに、こういう本当の愛や親切をもって私を育てることが出来ましたか。実際、あなたは私に対して僅かの欠点をも容赦せず、同時にまた決して理由なしに咎めたりもしません。また一度命じたことは、決して中途で変えるような事をしませんという事を、私はよく知っていました。
親愛なる姉に対して、私は何事も打ち明けて赦しを乞いていました。ある日、私は天国にいる聖人たちは、どういう訳で同じ程度の光栄を受けないのでしょうか、という事について不審に思いました。それで、もし同じ光栄を受けないのなら、みんな充分に幸福を受けておられないであろうと心配し、早速この事を姉に尋ねました。ポリナはこれを説明する為、父の大きなコップと私の小さい底のある指貫とを取り寄せて、この2つの品物を前に置いて、水を満たして「どちらが一番いっぱになっていますか」と私に訊ねました。それで私は「どちらも同じようにいっぱいになっています」と答えると、「それならこの2つの中、どちらかにもう少し水を入れる事が出来ますか」と重ねて訊ねますので「いいえ」と答えました。するとポリナは、ちょうど天国に居られる聖人たちの光栄もこれと同じようで、いずれもめいめいその器だけ充分に光栄を受けていますから、みんな満足しているのです。だから、この世の人々が思うように、最も下の聖人が最も上の聖人の幸福を羨むような事がありません……」と説いて、聞かせてくれました。
そのようにして、私の全ての疑いはもちろん、教理の玄義が神秘的な事なども、みんな私の能力で悟ることが出来るように、容易な比喩で説いて聞かせて、私の霊魂に必要な糧を多く与えてくれておりました。
読んでくださってありがとうございます。yui
冬の夕べについてお話しすれば、姉達がしばらく遊んでのち、代わる代わる「聖年紀要」とか「聖人伝」等をみんなに読み聞かせた後、また面白くて為になるお話しを聞かせてくれました。その間、私は父の膝の上にいますが、講和が終ると、父は私は眠らせるためのように、美しい声でメロディー面白く歌ってくださるので、私は小さな頭を父の胸のあたりに当てて、父が私が揺すっていました。終いに、私たちは、夕べの祈りをするため、膝をゆすりゆすり2階の部屋に入れられるのですが、そこに私の席が父の側に有って、私はこの熱心な父の祈りの態度をみて、彼の聖人たちがどういう態度をして祈りをせられるかという事を知るのに充分であると思います。
あとで私の身体がポリナに運ばれて、寝台の上に置かれます。その時、私は「今日はおとなしかったか、天主さまの気に入ったでしょう。いま私の側で天使達が飛び回って、私を護ってくださるのでしょうか」と訊ね、いつも「そうです」という答えでした。もし何の返事もなかったなら、私は夜通し泣いていたでしょう。そして、この問答が終ると、姉達は私を抱いてキスをして、あとで、灯りを消して部屋を出たので、小さきテレジアは、ただ一人闇の中に取り残されたのでした。
私は、幼い時から非常に臆病者でしたので、ポリナはこの悪い癖を矯正するために、いろいろと力を尽くし、良い習慣を養うようにしてくれました。ときどきわざと何かの用事にかこつけて、私一人を離れた寂しい部屋に行きなさいと命じますので、私は嫌といっても許してくれない事を知っていますから、恐る恐る行っていましたが、こういう習慣が私のために大変有益になり、今日では私を怖じ気、恐れさせる事が難しいようになりました。これは全くの御恵みであろうと思います。あなたがどうして私を少しも甘やかさずに、こういう本当の愛や親切をもって私を育てることが出来ましたか。実際、あなたは私に対して僅かの欠点をも容赦せず、同時にまた決して理由なしに咎めたりもしません。また一度命じたことは、決して中途で変えるような事をしませんという事を、私はよく知っていました。
親愛なる姉に対して、私は何事も打ち明けて赦しを乞いていました。ある日、私は天国にいる聖人たちは、どういう訳で同じ程度の光栄を受けないのでしょうか、という事について不審に思いました。それで、もし同じ光栄を受けないのなら、みんな充分に幸福を受けておられないであろうと心配し、早速この事を姉に尋ねました。ポリナはこれを説明する為、父の大きなコップと私の小さい底のある指貫とを取り寄せて、この2つの品物を前に置いて、水を満たして「どちらが一番いっぱになっていますか」と私に訊ねました。それで私は「どちらも同じようにいっぱいになっています」と答えると、「それならこの2つの中、どちらかにもう少し水を入れる事が出来ますか」と重ねて訊ねますので「いいえ」と答えました。するとポリナは、ちょうど天国に居られる聖人たちの光栄もこれと同じようで、いずれもめいめいその器だけ充分に光栄を受けていますから、みんな満足しているのです。だから、この世の人々が思うように、最も下の聖人が最も上の聖人の幸福を羨むような事がありません……」と説いて、聞かせてくれました。
そのようにして、私の全ての疑いはもちろん、教理の玄義が神秘的な事なども、みんな私の能力で悟ることが出来るように、容易な比喩で説いて聞かせて、私の霊魂に必要な糧を多く与えてくれておりました。
読んでくださってありがとうございます。yui