伊方原発の廃炉のために

2006年から「伊方原発のプルサーマル問題」として続けてきましたが、伊方原発の廃炉のために、に15年に改名しました。

(転載)原発再稼働の最大の問題は避難計画が作れないことにある

2014-04-27 19:57:49 | 原子力防災と住民の対応

原発再稼働の最大の問題は避難計画が作れないことにある
小坂正則

4月23日の泉田新潟県知事の朝日新聞のインタビュー記事にあるように「安倍首相のいう、日本の原発は世界最高水準の安全規制などではなく、世界標準にも達していない」「ウソをついてはいけない」と安倍首相や政府を批判する泉田知事の憤りの発言に端的に表されています。(詳しくは昨日の私のブログを読んでください

規制庁の規制基準は安全基準ではないと規制委員会の田中委員長自らが言明している

4月8日の東京新聞に「『合格=安全』広がる誇張」という記事がありました。以下引用します。
原発の新しい規制基準は、重大事故が起きる危険性と被害を減らそうという必要最低限のものだ。だが、再稼働を急ぐ政府、自民党から、原子力規制委員会の適合審査に合格しさえすれば「安全」になるかのような発言が相次いでいる。「安全基準に基づいて徹底的な安全審査を行い、これに合格した原発について再稼働を判断していく」1月29日の参院本会議で安倍信三首相はこう答弁したが、日本には「安全基準」も「安全審査」も存在しない。規制委は新基準の名称を「安全基準」にしかけたが、基準を満たせば安全というわけではないため、「規制基準」に改めた経過がある。審査の正式名も「規制基準への適合性審査」であって「安全審査」ではない。だが、政府、自民党の「基準クリアー=安全」発言はエスカレートする一方だ。3月14日には記者会見で茂木経産大臣が「規制基準により安全性が確認された段階に、(再稼働に向けて地元に)国も説明する」と発言。(略)適合審査に合格するとはどういう意味なのか、26日の会見で規制委の田中委員長に改めて問うと、「絶対安全とか言われるなら否定している」と明言。単に基準を満たしているということを認定するに過ぎないと述べた。

規制庁は原子炉の機器の適合審査を行うだけで、避難計画などの審査はおこなわない

これまでも規制委の田中委員長は、我々は避難計画などの審査を行う部署ではない。避難計画の適否は政府の責任と言ってきた。ところが政府は避難計画は地元の自治体が一番詳しいのだから、彼らをサポートするが、彼らが作ったもので対応するという。そうすると、避難計画の適否を審査する米国のNRCのような組織は日本にはないのです。米国の規制委員会(NRC)は日本の規制委員会と違って、安全性の適否を避難計画など全てを審査して運転許可を与えるのです。だから、避難が出来ない場所にある原発は運転の許可は下ろさないのです。米サンオノフレ原発は三菱重工の工事ミスなどと避難計画が不十分だという理由で運転を認められなくて廃炉になったのです。
米サンオノフレ原発が廃炉へ 
浜岡原発の事故想定で86万人避難に30時間

4月24日の朝日新聞によると、中部電力浜岡原発が重大事故が起きた場合の避難シュミレーションを静岡県が行った結果、31キロ圏内の86万人が一斉にマイカーで避難したら、交通渋滞が発生して30時間45分避難に要するという結果が出たといいます。しかし、この前提は、道路の陥没や通行止めなどの障害が一切ないことを条件にして出した予測で、実際には道路の亀裂や陥没に家屋の倒壊などで至る所で道路は通行止めになっていることを想定した方がより現実的でしょう。
そして、このシミュレーションには要支援者は入っていないのです。寝たきりの老人や車椅子の障害者などはバスで迎えに行くというのですが、交通渋滞の中をバスが浜岡原発近くの病院や施設に誰が運転して行ってくれるのでしょうか。また、勇敢なバスの運転手がいて、救護に向かったとしても、大渋滞を加速させるだけで、結局は福島原発事故の時と同じように、置き去りにされるでしょう。原発から5キロの牧之原市の西原市長は「机上のプランだ。実行は難しく避難の困難性が明らかだ」と語っているそうです。
また、浜岡原発周辺の住民は地震と同時に津波が襲ってくるのですが、この避難計画には津波は想定されていないのです。道路はどこも破損はなくて、津波も来ないで、86万人の住民が原発から近い距離の住民から最初に逃げて、遠い住民が最後に逃げるという、あり得ない絵に描いた餅の避難計画でさえも、30時間以上避難に要するのです。それも健常者でマイカーのある方だけです。

実際の複合災害時のシミュレーションを行えば避難が不可能なことが分かる

災害対策や防災というのは様々な事故の複合災害を想定して、それに対する準備をすることが求められます。ところが、日本の原発は、前提として「絶対安全なので過酷事故は起きない」という「安全神話」の元で避難計画などが作られてきたのです。ですから、実体に即した避難計画を作ろうと思えば、結果は明白です。「全員を安全に避難させるなど絶対に出来ない」これが結論です。
静岡県で86万人が避難するという計画は31キロ圏内の住民が避難するという想定ですが、32キロ圏内に住む住民は「私は対象外だから避難などしなくて良かったわ」と思うでしょうか。32キロ圏内の方でも50キロ圏内の方でも、こぞって避難するでしょう。隣近所の皆さんが避難しだしたら、それこそ競って住民は我先にと避難を始めるでしょう。100キロ圏内の住民まで一斉に避難しだして、道路だけではなく、コンビニの商品はなくなり、東名高速道路は通行止めになり、物流はストップして電車も新幹線も止まって日本経済は大混乱が引き起こされてしまうのです。地震や津波だけなら、被害現場を修復すれば簡単に復旧が出来るかもしれませんが、原発事故による放射能被害は目に見えないため、高速道路や新幹線も被害がなくても立ち入り出来なくなるのです。静岡県の30キロ立ち入り禁止は図を見てもらえれば分かるように、日本列島の大動脈を寸断してしまうのです。このような状況が3年も続けば日本経済は破綻してしまうでしょう。
結局、日本中、原発事故があっても安全に避難できる場所などないのだという事実をしっかり国民が理解して、原発と一緒に自殺することを覚悟するのか、それともこのまま止めて安全な暮らしを望むのかという全国民に突きつけられている二者択一の選択が私たちに迫られているのだと私は思います。


写真は東海地震の震央に立っている浜岡原発


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