本格再稼働の第一番目とされる川内原発について、火山との関係の議論が活発になっています。
"川内原発を飲み込むカルデラ噴火が起これば、南九州の人々は原発より前に全員死んでる。川内原発がやられて被害をうけるのは、カルデラ噴火で即死しない世界中の人々。"
このツイッター発言は、鹿児島大の井村准教授。そうなんですよね。だからこそ、地元ではなかなか現実のものとしては受け止めにくい脅威となっています。
同じ問題を述べているのが、早川由起夫氏の火山ブログより「原発再稼働で注目されているカルデラ破局噴火の本当のリスク」です。
”そもそも、入戸火砕流のようなカルデラ破局噴火は、原発再稼働や原発立地のために心配するだけで済むレベルの災害ではない。リスクはそれよりはるかに大きい。鹿児島県と宮崎県の存亡をかけた心配だ。この心配、ほんとにする勇気ありますか?”
トゥギャッターまとめ「原発とカルデラ破局噴火」 カルデラ破局噴火を直前に察知して避難できるか 2014.4.24 井村鹿児島大准教授「火山と原発を考える講演会」
火山学者が「異論」、川内原発の審査基準 http://www.dailymotion.com/video/x1xpsvf_%E7%81%AB%E5%B1%B1%E5%AD%A6%E8%80%85%E3%81%8C-%E7%95%B0%E8%AB%96-%E5%B7%9D%E5%86%85%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AE%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E5%9F%BA%E6%BA%96_news
この報道ステーション番組は、小坂正則氏の個人ブログで紹介されています。
川内原発の火山対策を火山学者が一斉に批判「報道ステーション」のすばらしい報道魂
他にも、
の小坂氏記事もご覧ください。
【伊方原発と火山】
さて、伊方原発においても、お隣、九州の火山噴火から受ける影響として関係はあります。
先日の5/14の規制庁伊方事務所への申し入れ書の中では、
特に、川内原発の審査の内外で明らかになっているように、伊方原発から160km以内にある阿蘇山でも、カルデラ破局的噴火の火砕流が海を越えて伊方までやって来るリスクを想定すべきこと、また7300 年前の鬼海カルデラ噴火によるアカホヤ火山灰の伊方原発敷地前面海域断層への堆積事例もあるのですから、南九州のどの火山噴火によっても、伊方原発へ火山灰が数十センチ以上降り積もることによる被害のリスクを想定すべきであるからです。伊方原発停止期間中においてこのような事例が起こりうるならば、川内原発の場合と同様に使用途中の燃料棒のより安全な地域への短期搬出プログラムが必要です。
と申し入れに書きました。
火砕流問題と火山灰問題の2種類の問題があります。
元々の規制委員会の火山審査ガイドラインの中でも、「160km圏内の火山を調べること」、は義務化されています。伊方から160km圏内にある九州の火山は、近い方から、別府市の鶴見岳~九重連峰を経て阿蘇山までが含まれています。
四国電力は、審査の中では、
H25年10月2日第27回原発新基準適合性審査会合に
http://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/data/0027_01.pdf
「伊方発電所 火山影響評価について」を出しています。
ということで、阿蘇カルデラの将来の破局噴火も、検討の対象になっており、四電は佐田岬半島の複数点及び敷地内においても、山口県とは違って火砕流の痕跡がない、Aso4での火砕流は四国側には到達していないとプレゼンでは調査結果をまとめています。
「○地表踏査結果によると,佐田岬半島に点在するM面(中位段丘面)の段丘堆積物を覆う風成層は阿蘇4テフラを混在するものの阿蘇4火砕流堆積物は確認されず,中位段丘に阿蘇4火砕流堆積物が保存されている山口県とは状況が異なる。 」
ということで、火砕流の問題は既往最大のAso4(ミスを失礼! 9万年前)でもなかったから問題にならない、とされています。また、個別の火山についての検討の中で、「阿蘇カルデラが近い将来に噴火する可能性は極めて低く,発電所運用期間中における噴火はないものと評価する。」と結論づけています。そしてその後は火山灰の降下問題のみをチェックしています。
この資料は、11月8日の第44回会合で、指摘を受けて、作り直した版を再提出しています。指摘とは、まさにAso4の痕跡がもっと他にないのか、という話で、発電所近傍の2箇所でのボーリング調査を追加しています。また、Aso4の火砕流の到達地点について、別府あたりの評価と整合性のとれたシミュレーションも行い、四国側までは到達していないという結論にしています。
(ここは、でも同じシミュレーションをしてみて、山口県の防府市までは火砕流が到達していることを、同じパラメーターでは再現できないのだろう、とは思います。)
その他11月7日の43回会合にも資料を出して降下灰について追加説明をしています。
- 資料2-1-1伊方発電所3号炉 降下火砕物(火山灰)による設備影響評価説明資料【PDF:664KB】
- 資料2-1-2伊方発電所3号炉 降下火砕物(火山灰)による設備影響評価 補足説明資料【PDF:2.7MB】
12月27日の第65回会合にも。
- 資料1-3-1伊方発電所3号炉 降下火砕物(火山灰)による設備影響評価 説明資料 [審査会合における指摘事項の回答]【PDF:595KB】
- 資料1-3-2伊方発電所3号炉 降下火砕物(火山灰)による設備影響評価 補足説明資料【PDF:5.8MB】
16年2月5日の第78回会合にも。
3月13日の第93回会合にも。
- 資料3-2-1伊方発電所3号炉 内部溢水の影響評価 降下火砕物(火山灰)による設備影響評価 原子炉冷却材バウンダリ弁に関する設計上の考慮 外部火災の影響評価 [審査会合における指摘事項の回答]【PDF:1.9MB】
- 資料3-2-2伊方発電所3号炉 内部溢水の影響評価 降下火砕物(火山灰)による設備影響評価 補足説明資料【PDF:2.4MB】
【考察】
降下灰については、過去のカルデラ破局噴火では西日本の広い地域にわたって数十センチの厚さの降下灰があった、という一般論とは異なる結論(最大でも5センチ)を四電は出しています。それは、対象を個別の小火山単独の噴火と想定しているからです。
結局は、川内原発で議論となっている問題、つまり南九州の5つのカルデラのうち一つが、噴火を起こす確率が十分低いと証明できるのか、また破局噴火を起こすということを「モニタリング」できるのかどうか、という争点で、規制委員会が安全性を確認できるのかという問題に帰着します。
その他:
火山と原発 ―私設原子力資料情報室
http://nucleus.asablo.jp/blog/2014/04/06/7268286
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